5章
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この小説の夢小説設定物語の都合上、略した名前・略さない名前が2つずつあります。
ご自身の名前を使う際、ストーリー後半からになりますが
「主人公 名前」「主人公 名前略称」に登録すると読みやすいかと思います。
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「ほら、見上げてみろよ!綺麗だろ!」
『……わ…』
エディシアが絨毯で飛ぶという初めての感覚に絨毯と操縦するカリムの手元を凝視していると、カリムが上を見ろと言う。
言われた通り顔を上げてみると、視界を満点の星空がこれでもかというほど覆った。
「さっきの防寒魔法さ、エドがきっかけで身に着けたんだ」
『…僕が?』
「ホリデーのあの時…お前寒そうにしてたろ?それに苦しそうに震えてたのも見て。オレのユニーク魔法のせいだからなぁ…オアシスなのにな…ごめんな」
カリムが当時のことを思い返している様子で申し訳なさそうに謝罪した。
あの時はあれしか手段がなかった。それに彼のユニーク魔法のおかげで短時間で移動ができたのだ。謝る要素が一つもないのにとエディシアは苦い顔を見せた。
『ああ…あれは僕のメンタルが弱かったせいだよ。悪いと思うなら忘れてくれた方が嬉しいね』
「エドが息を整えてる間に聞いたけど水中が苦手らしいな。せっかくあの時勇気を出してくれたんだ、ジャミルのことのお礼も含めて協力しようと思ってさ!」
『協力?』
「よく見てみろ、なんだか海の中みたいじゃないか?」
カリムがそう言うので改めて星空を見上げる。煌めく星々が、明かりに照らされた魚たちの鱗や水面に見え…るのだろうか。条件の合う場所なら同じような景色が海底からも見えるのかもしれない。
『…すごく想像力がいるけど、そう見えなくもないのかも…?』
「だろ?また防寒魔法かけてやるからさ、部活の後にでもたまに飛んで慣らしてこうぜ!なんなら操作方法も教えてやるよ」
『カリム先輩ってほんとお人好しだよね、こんなお宝まで使って…操作方法を知った僕がこの絨毯取り上げて逃げるかもって思わないの?』
「だってエドはそんなことするようなヤツじゃないって知ってるからさ。そうだろ?」
カリムは曇りない瞳を真っすぐエディシアに向ける。『ジャミル先輩を追い詰めてたようなこと僕にも言ってるよ』と注意されると「え!?あっすまん!本当に思ってたからつい」とまた謝罪した。
この人は本当に純粋で真っすぐで、NRC生とは思えないほど底抜けに良い人間だ。
『……ハァ…ほんと、あなたは太陽みたいな人だな』
「なはは!ありがとうな!でも今回は他にも目的があるんだ。お前、何か悩んでるんじゃないか?課題とかそんなんじゃなくてさ」
『…悩み…』
「オレが悩んだり落ち込んだりしたときは美味いもん食べて、いっぱい笑って、そしてこの絨毯で綺麗な星を見ながら空を飛んで絨毯に話を聞いてもらってるんだ。今ここにはオレとその絨毯しかいないからさ、お前が良ければ飛んでる間に吐き出しちまえよ」
なんでも、宴の最中も楽し気だったが何か考えごとをしているかのような、そんな表情や雰囲気にカリムは違和感を覚えたらしい。
〖VDC〗の曲作りが、今後の在学できるかの有無にも関わったことで重圧となっており、気分転換になるかもしれないと思っていた宴の最中でも作曲への焦りがエディシアの頭を支配していた。
よく顔を合わせるユウたちやクラスメイトは気づいてない様子だったが、さすがは大商家の息子だ。観察眼に優れている。
「…………〖VDC〗で優勝できるような曲かぁ…それってお前1人だけが背負わなきゃいけないのか?誰かと協力すればプレッシャーも減るんじゃないかな」
『ヴィルさんに確認とりながら進めてるから完全に1人ではないよ。それにこっちの問題だから人を増やしても変わらないかな』
「お前の問題って、〖VDC〗への熱量とかか?」
『危機感を感じているくらいには』
「そうか、エドは責任感が強いんだな。うーん…あ!」
エディシアの話を聞いたカリムはうんうん唸った後、閃いたとでも言うような顔をした。
誰かのために一生懸命考えてあげられるこの人物はNRCでなくても珍しい方の部類ではないだろうか。
「代わりにもう1つオレ流悩み事の和らげ方を思い出したから教えてやるよ!」
『対価はもう十分なんだけど…まぁでも教えてくれるなら聞かせてよ』
「へへ、もう1つは…よく寝ること!」
満面の笑みでそう言ったカリムは[エディシアの頭をわしゃっと撫でた。
その後は2人揃ってジャミルに叱られ、帰りにカリムは「よく眠れるから」と安眠効果のあるらしいお香をエディシアに持たせた。
その夜はお香の効果か普段より早く寝つき、目覚めも気持ちすっきりと起きられた気がする。
昨日は美味しいものを食べ、笑い、星を眺め、質の良い睡眠をとった。カリム流のリフレッシュはなかなか効果があったようで、エディシアの寝不足と緊張感から固まっていた頭や肩がいくらか軽くなり作曲も進んだ。