1章
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この小説の夢小説設定物語の都合上、略した名前・略さない名前が2つずつあります。
ご自身の名前を使う際、ストーリー後半からになりますが
「主人公 名前」「主人公 名前略称」に登録すると読みやすいかと思います。
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『(二度と来るもんかと誓った直後に来るはめになるなんて…)』
軽音部の解散後は日が暮れ植物園が締まっていたので、翌日の朝イチに再度向かった。
鍵はまだ開いていなく中に入ることができない。
どうせあの2人に回収されているだろうが、ダメ元で管理人が来たら尋ねてみようと思い扉のあたりで待つ事にした。
聴力の高い猫の耳が、ちらほらと教室に向かう生徒たちの声を拾い始める。
もうしばらくすれば教室も賑わってくる頃だろう。
しかし管理人はなかなか来ない。今日に限って寝坊したのかとエディシアはあたりを見回す。
この時期の早朝は肌寒い。
『さっむ…』
「滑稽だな、家猫から捨て猫にでもなったか」
『は』
聞き覚えのある声に顔を上げると、昨日のライオンがいた。
まだグラウンドに出ている生徒はいないはずだし、そもそもそのライオンは運動着ではなくただの制服を着ている。
そうなるとなぜここにいるのか、エディシアが問い詰める前にライオンはポケットから鍵を取り出し扉の前に立った。
『植物園の鍵…?』
「管理を代理で任されてるだけだ」
『代理…』
「ほら、早くしろ」
ライオンは扉を抑えたままエディシアに言う。
相手が代理人であれば管理人に会うことは叶わないということを悟り、言う通りにすることにした。
園内に入ると寒さがだいぶましになった。
先ほどまで聞こえていた生徒たちのまばらな声も扉が閉まったことで無音になる。
先を歩いていたライオンは少し歩くと立ち止まり振り返った。
「…で?昨日追い出されたくせに今日朝一番に出待ちたぁ、よっぽど重要な件だとみえるが」
『わかってて聞くんですね』
「何の事だかさっぱりだな?自分の口で言ってくんねぇと」
『(飛び蹴りしてやりたい)…昨日ここにスマホを忘れてしまったみたいで。預かってないか管理人さんに聞こうと思ってたんです』
「なるほどなぁ」
ライオンの返答はいかにもわざとらしいものだった。
まるでこの状況を楽しんでいるかのような、自分が優勢だといわんばかりの態度だ。
そしてライオンはあるものをエディシアに見せた。
「それってもしかして…これの事か?」
『…そうです。預かってくれてたんですねありがとうございま』
「おっとその前にだ」
ライオンの手にはスマホが握られていた。
そのデザインは持ち主であるエディシアがすぐに自分の物だと理解し、手早く受け取ろうとすると天高くスマホを掲げられてしまう。
それを受けてエディシアは眉間にシワを寄せながらライオンを見上げた。
『…意地が悪いですね、土下座でもしろって言うんですか』
「捨て猫になって本能でも目覚めたか?お得意の愛想笑いはどこへやらだぞ」
『捨てられてないです』
「こいつを返す前に確認させてもらう」
『何を…、っ』
何をする気か、そう質問するよりも早くライオンの腕がエディシアに伸びる。
身動きを封じたライオンは、スンスンと頭から首元にかけて匂いを嗅ぎ、エディシアと同じように眉間にシワを寄せた。
『な、なんですか…離してください!』
「おら暴れるな……あの時と同じ微かに感じる魔力…常時発してるあたり認識阻害の魔法道具か……それにこの匂いは魔法薬も混じってやがる……お前、何者だ…?」
『…………』
ライオンの言葉に白猫は固まった。まさかこれを感じ取るとは。
白いまつ毛で伏せられていた深い青の瞳が大きく開かれ、眼前に据える緑の瞳を凝視した。
一瞬の静寂の後、エディシアは笑顔を浮かべながら穏やかに口を開いた。