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セイバーたちの話

始まりの海は収束する。
確かに命を亡くしたはずの少女に。

先ほどまでどくどくと流れ出ていたそれは、方向を変え戻っていく。体の熱とともに。
胸は鼓動を再開し、体には外気が循環し。色が彼女の目に宿る。
そして──

少女、浅葱千鳥は蘇生した。
彼女の母が持った令呪を、その手に宿して。

それとともに、セイバーの体が再組成される。
緩やかな消滅は止められ、代わりに鮮烈な魔が体を駆け巡る。
明らかな異常に反応し、自らの魔力を辿れば、そこには血にまみれた少女。

「……おうじさま?」
少女は問う。突然現れた青年に。
「はは、そういう君は幽霊かな」
青年は問う。いきなり生き返った少女に。
「お兄さんのいじわる。私生きてるもん」
少女は頬を膨らませ。
「そりゃそうだよな。俺だって王子様なんかじゃないさ、もうそんなことを言える柄でもないしね」
青年は同意した。
そして、言葉を紡ぐ。
「だから、俺のことはセイバーって呼んでくれないかな」
少女は同意する。満面の笑顔で。

──ここに再契約は完了した。
セイバーは新たなるマスターの剣となり、新たなマスターはセイバーの存在を認めた。

戦いは未だ始まらず、しかして運命の歯車は狂い始めた。
聖杯にとってはただの揺らぎ、されど戦に与える影響は数知れず。

そして、夜は明ける──。
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