序章
「さて、行くかバーサーカー。ここじゃ狭いだろ」
少年──玉垣累の言葉に、彼女は首を傾げる。まるで理解できない、と言わんばかりに。
その意が彼に通じたのか、累は一度思考を巡らせ。少しの間を置いて、彼は口を開いた。
「近くに、家があるから。そこに行く」
そう言いながら彼は扉に手をかける。
無機質な金属音が部屋に響き渡り、月明かりがわずかに部屋を照らした。それとともに、彼女 の顔貌があらわになる。
無表情、無気力を張り付けた表情。淀んだ瞳は、ただ暗闇を見つめていて。長く伸ばされた髪は、月の明かりをうけ艶やかに煌めいていた。
シンプルなブラウスとサスペンダースカートは、彼女がいかにもな『お嬢様』であることを誇示する。誂えたかのようにしっくりくる赤い靴も、彼女の美を引き立てる要因であった。
それとともに、累はある異変に気がつく。
「……どうした。来ないのか?バーサーカー」
彼女は、少なくとも累の知る限り一度も魔方陣から動いていない。行こう、と促してからもだ。もしや、自分の書いた魔方陣が彼女を縛り付けているのか?それとも、召喚時に何か不備が?
バーサーカークラスで召喚した以上、魔方陣を再利用されることはないだろう。それを確認した上で、彼女に近づく。
魔方陣の一部を拭い、彼女に向き合う。がしかし、彼女はぴくりとも動かない。
それこそ自ら動く気は無いように、ただ濁った瞳で累を見つめていた──。
少年──玉垣累の言葉に、彼女は首を傾げる。まるで理解できない、と言わんばかりに。
その意が彼に通じたのか、累は一度思考を巡らせ。少しの間を置いて、彼は口を開いた。
「近くに、家があるから。そこに行く」
そう言いながら彼は扉に手をかける。
無機質な金属音が部屋に響き渡り、月明かりがわずかに部屋を照らした。それとともに、
無表情、無気力を張り付けた表情。淀んだ瞳は、ただ暗闇を見つめていて。長く伸ばされた髪は、月の明かりをうけ艶やかに煌めいていた。
シンプルなブラウスとサスペンダースカートは、彼女がいかにもな『お嬢様』であることを誇示する。誂えたかのようにしっくりくる赤い靴も、彼女の美を引き立てる要因であった。
それとともに、累はある異変に気がつく。
「……どうした。来ないのか?バーサーカー」
彼女は、少なくとも累の知る限り一度も魔方陣から動いていない。行こう、と促してからもだ。もしや、自分の書いた魔方陣が彼女を縛り付けているのか?それとも、召喚時に何か不備が?
バーサーカークラスで召喚した以上、魔方陣を再利用されることはないだろう。それを確認した上で、彼女に近づく。
魔方陣の一部を拭い、彼女に向き合う。がしかし、彼女はぴくりとも動かない。
それこそ自ら動く気は無いように、ただ濁った瞳で累を見つめていた──。