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幼馴染の話

何もない。
誰もいない。
風すらも吹かない、ただの暗闇がここにある。

そこに立つ二人組。
一人は男で一人は女。
町を見下ろし、沈黙するのみ。

「……ランサー。これは?」
変わり果てた町を見て、男は問いかける。ただの一秒で、町を殺した女に向かって。
「あなた風に言うなら魂喰いよ。まあ、宝具使ってる分効率は段違いだけどね」
女は悪びれもせずに言う。食事を終えて気分がいい、とでもいわんばかりに。

「……さっきまでいた人は?」
もう一度、問いかける。そこに最後の希望を賭けて。
「死んだけど、今更聞く?」
まあ元ネタ的には沈んだ、のほうが正しいんだけど──などと、教師のように訂正などを交え、残酷な真実を伝える。

すう、はあ、と深呼吸する女。
「さて、マスター。ショッピングとでも洒落込まないかしら?たまには日常を楽しむのもいいもの、だと思うけど」
お金なら店にいっぱいあるから法律にはそむかないわよ、なんて。嗚呼、冒涜的にもほどがあろう。
「……わかった。どこへなりともついて行くよ」

人として、この状況から早く逃げなければならない。
どうせ一人しかいないから、見栄を張る必要もない。

──だが。魔術師としては、別だ。
魔力供給源、兼自らの陣地を作成できる英霊、というだけで強力。さらには、魂喰いに多少肯定的。人としてどうかと思うタガの外れ方こそしているが、内面はおそらく普通の女性。

──兵器として、非常に使いやすいのもまた事実。立ち回りにさえ気を配れば、聖杯戦争を勝ち進むことだって夢ではないのだ。
さらには──いや、やめておこう。調子に乗る、その行為で幾度痛い目を見たか。
本来の日常ですらそれなのだ、戦争でそれはいくらでも命取りになりうる。

そうして、計略を巡らせながらも。
また、建物の中へと戻っていったのであった──。
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