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幼馴染の話

神洲河白駅前、アオバ。
一通りの施設が揃う、この町で──いや、この地域一帯でも、一番賑わうところ。

「買い物につきあわせて悪かったね。ほら、何でも好きなモノ頼んでいいから」
小ぶりな袋を下げ、星崎稔は後輩に向かって話す。
「いつでもつきあいますよ、このぐらい。じゃあ、僕レモンシュガーティーラテで」
中身の詰まった学生鞄を下げ、少年は応える。
「分かった。注文してくるね、席取ってて」
そして、少年──呉島佳奈多が人混みをかき分け、店内へ消えていくと。

「ねえボク。少し時間、いいかしら」
妖艶な女が、そこに立っていた。

どこからどう見ても完璧と言わざるを得ない肢体、かつ非常に際どい衣装。
声に甘やかさを乗せた女。
一人合致する者を知っているが、しかし──。

「あ、ちょっ」
女は返答を聞くまでもなく、腕を乱暴に掴んで引っ張っていく。
かつかつとハイヒールの音を鳴らし、エレベーターホールへ連れていき。
周りの客を人睨みで散らしたか思えば、早々にエレベーターへ乗る。

電動の揺り籠は最上階へ。何の偶然か、途中で止まることもなく上がっていく。
そして。
「マスター。探すのに骨が折れたわよ、こちとらとっくに準備し終わってるんだから」
妖艶な女は向き直り、耳慣れた単語を言う。その事実に安堵し、そして。

「屋上階です」
チン、と機械的な音声が鳴り、扉が開く。
風が強く、体が冷える。流石に制服一枚では限界があるが、それでもすぐによくなる。

「さて、いきましょうかマスター。ついでに、今のうちに冥福を。覚悟はいいわね?」
そう彼女が言い、ぶつぶつと少しの詠唱を唱えたかと思うと。

魔の三角領域バミューダ・トライアングル

その呟きとともに、魔力を吸われる。
それこそ本来の魔術行使では使われないような量を、際限なく一息で。

見える限りの世界は暗闇に染まり、人は掻き消え。
そこに見えるのは、建物と機械のみ。
車は止まり、人のざわめきはもう聞こえない。

かくして。
ここに、地獄が顕現した──
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