ゆめ微睡みのアリア
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シリウルはそうして夕方までボロミアと共に居てくれると、夕食を作ると一言断って去っていった。
その間にボロミアは最初に手に取った本をすっかり読み終わり、新たな物に手をつけていた。
今度の内容は馬や人の武具の作成の流れが綴られており、軍人の彼にとってとても興味をそそられる内容だった。
序章まで読み終わる頃に、彼女が帰ってきたまた違うものを用意してくれていた。
今度は薄焼きパンよりもっと柔らかいパンに、肉が前よりうんと多く挟まれており、今までより時間がかかった様に思えたのはこういうことであったのかと納得した。
他には葡萄がひと房と、小さなワインの瓶を持ってきてくれていた。
銘柄は見かけないものだが、小さくも明らかに上等なものだと分かった。
少量の飲酒は身体に良いとよく聞く、だからこの様な物を持ってきてくれたのだろう。
またまたボロミアは全て平らげると、シリウルは面白くなったのか、食べ終わったのを見せびらかすようにした彼の姿を見て軽く笑った。
彼女は皿を纏めると、ワインを彼のコップに程よく注いでくれた。
「あなたは飲まれないのですか?」
と彼女が一つだけに注いだので、ボロミアが問うとシリウルはそっとはにかんで首を振った。
「看病する者が飲む訳にはいきません。それにあまり好きではないのです」
納得した表情を浮かべ、ボロミアは空中に乾杯をしていつもとは違いゆっくり、舐めるように飲んだ。
やはりこのワインは大層美味で、甘味と酒特有の若干の苦味が良い味わいを形作っていた。
少しずつ飲んだにしても早く飲み終わると、シリウルに向かってこう言った。
「今度はあなたも飲めるものを持っていらして、是非一緒に飲みましょう。私は誰かと共に飲むのが好きなのです」
その言葉にシリウルは彼がさっき空中に乾杯をした様子を思い浮かべると、声に出してそっと笑った。
夜の闇が深くなる前に、シリウルは彼女の住居に帰っていった。暫く夜空を眺めていると、ふと彼の頭にあらゆる心配事が駆け巡った。
連れ去られたホビットたちの事、自分の国の事、はたまたいつ帰れるか等など、一つだけで頭を抱えたくなるようなことが重なっていた。
そうしてボロミアは彼自身が犯してしまった過ちを思い出してしまって、傷つけてしまった仲間の為にできることはないか、いつになったらここを出られるのか、と突然どっと悲しくなった。
自分がのどかに過ごしている間に彼らが苦しんでいるのではないかと、思えば思うほど辛くなる。
そして償いとなるような事はしたとはいえ、彼はできることなら面と向かって謝罪をしたい、そして力になりたい、そう思った。
それならば彼はまずシリウルに言われたように、傷ついた身体を癒し、また戦場で奮い立てるように今は休もうとそっと目を閉じ、今までの眠りの中で一番と言えるほど深く、安らかな眠りを得た。
ボロミアはこの様な一日を三日過ごして、やっと起きれる様になると軽く周りを散歩し始めた。
彼女が言った通り、森は入っても新たな所に出ることは無く、元の場所に戻ることしか出来ない。
シリウルは存外心配性で彼が無理をすると直ぐに察知して彼を母親のように叱りつけるので、あまり遠くまでは行こうとせずに戻った。
ここは綺麗な所であったが、華美な程ではなかったので慣れたらかなり落ち着ける様になり、度々穏やかな昼寝をする程だった。
ただこれほどに過ごしやすい環境でも、彼の頭にはやはり心配事が常にあった。時にこれらは彼を苛む様な響きを持ち、彼は魘された。
ただ彼が苦しい程に魘されるまでになると、決まって月光の様に冷たい手が彼の額に走り、そっと撫でて落ち着けた。
彼が苛まれ、暗い闇が押し寄せると、またまじないが唱えられ闇は速やかに退けられた。
そうして眠りを得たあとは決まって、その事を忘れてしまうのだった。
