ゆめ微睡みのアリア
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
二日後、ボロミアは言いつけ通りちゃんと休んでくれて、院長が感心するほど目覚ましい回復をみせた。彼が駄々を捏ねたのをよく知っている一同は苦笑いを零したが、その中の誰もが彼の回復を喜んでいた。
療院からある程度なら動いていい許可が出され、ボロミアはシリウルにミナス・ティリスを一通り案内すると申し出た。
第六層を暫く歩き回っていると、彼女が厩舎に寄りたいと言ったので、ボロミアはその通りにした。厩舎では最初に連れてきた彼らの馬が丁重に扱われていた。
シリウルは彼女が乗っていた黒い毛並みの馬をタルウェと呼んで撫で、再会を喜んだ。
「あなたの茶色の馬は、あなたに差し上げたいと思います、私にはこの子が居るので連れて帰るには少し手間が必要ですし…何よりあなたを気に入っている」
ボロミアは驚いて彼女を見つめた。
シリウルがくれると言った茶色い馬はとても良い馬だったから。それにとても若く、まだまだ働ける。
「それはいけない、あなたは今までも散々私に与えて下さった。これ以上は私は受け取れない」
そうボロミアが言うと、シリウルは可笑しそうに笑って返した。
「だって、この子あなたの事が大好きなんですよ!私が連れ出したとして着いて来てくれるか分からないくらいに」
そう言われてそういえば、この馬はずっとボロミアの事をよく気遣ってくれていたことが思い当たった。
彼がそっと馬を撫でると、嬉しそうに鳴く姿に、ボロミアもまたその馬に愛着を覚えている事に気づいた。
「確かに、そうかもしれない。だがまたあなたから貰うと私の面目が立たない。だからどうしても、あなたがそうしたいと言うなら今度私が送るものは何があっても、拒否しないで欲しい」
そう言われたシリウルは、その語気の強さに困り顔になってしまった。
でも確かに思い起こせば馬を除いても彼に山ほど与えていて、他人の目から見れば貢がれているように思えるほどだった。
だから彼女は仕方なく頷いて、彼の贈り物がなにか、楽しみにすることにした。
長い階段を登り終えて第七層に着くと、シリウルはその壮麗さに言葉を失った。眼前に広がる地面はでっぱり一つない程綺麗に仕上げられていて、賓客用の宿舎の前には見事な噴水と庭が作られており、そこもまた彼女が見たこともないような美しさだったのだ。
ミナス・ティリスは全体が石造りなのですが、それもまた彼女には新鮮だった。
そうしてぐるぐる見回して身体を動かしているシリウルがとても愛らしく見えて、ボロミアは微笑ましく思った。
そして枯れた白の木を見たシリウルは囚われたように一心に見つめた。ボロミアは彼女が何故そんなに枯れた木に注意を注ぐのが分からず、彼女にこう聞いた。
「その木がなにか?」
ボロミアはこの木の色々を父から聞かされてはいたものの、ある程度誇りに思えど特に興味が持てなかったので、とても不思議に思った。
シリウルはどこから話せばいいか、迷うようにして口を開いたり閉じたりすると、長く息を吐いて語り始めた。
「ヌーメノールの没落の話は知っていましょう。この木の親はニムロスと言って、更にその親はガラシリオンと呼ばれていました。
そしてガラシリオンは模して作られた元の木があり、エルフ達が行く浄福の土地、アマンにあるヴァリノールの二つの木の片方テルペリオンなのです。テルペリオンは闇の手によって今や失われ、私達はこうした実生でしかその片鱗を見ることが叶いません」
ボロミアはそこまでの話は知らなかったのでとても驚いた。そして彼女に一言こう告げた。
「では大切にしなければ」
シリウルはその言葉を聞いて堪えきれないというように笑った。
特に興味がなさそうだったのを彼女も察していた。貴重さを彼女に語られたからこそ出てきた言葉なのだろう。
成年の彼の純粋な一面に、シリウルはとても心惹かれてはいたのだが、これ程のものとは思っていなかった。
ボロミアは不機嫌そうに顔を顰めており、それがまた彼女の笑いを深くしてしまうのだった。
ただひとしきり笑い終わると、更に機嫌が悪くなっていたので慌てて彼女はご機嫌取りを始めた。
