ゆめ微睡みのアリア
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シリウルはミナス・ティリスの中に入ると、さぞ驚いた。何故ならボロミアが語っていた通り、またはそれ以上に美しかったから。
シリウルが恍惚とした表情で見渡していると、嬉しそうにボロミアは笑った。
町の者の多くは戦に出ているのでしょうか、彼が居た時よりもだいぶ少なくなっていた。
彼はゴンドールの者にとっては見慣れない服を来ていたので、多くの民は気づかなかったが、一部の者がボロミアの名前を叫んだ事で皆が視線を彼に向けた。
彼は得意気に手を振ると馬を厩舎の者に任せて、誰か戦の次第を語れて、事情をすぐ理解してくれそうな人を探した。
するとベレゴンド卿の息子ベアギルが駆け寄ってくるのが見えた。
「ボロミア様!ぼくは夢を見てるんでしょうか!本当に帰って来たんですね」
「ああ、そうだ!心配なら触ってみて幽霊ではないことを確認するといい。我が弟ファラミアはいったいどこにいるのだ?」
「ファラミア様は療病院にいます。とにかく行けば所在がわかるかと」
「では行こう。ベレゴンドは戦に行ったのか?」
「はい、西軍は今黒門に居るって聞いてます。それにしても前は凄かったんですよ、いっせいにみんな歌いだして」
「ああ、少し聞こえた。長き戦いもここにて終結しよう。まだまだ仕事はあるがな」
その言葉に少年はにかかっと笑うと、ちょうど療院の前に着いた。周りの者たちは家族だろyか、ボロミアの姿を見て皆一様に同じような顔をして驚いた。特に気にもとめずぐんぐんと進んでいくと、侍従の者に声をかけた。
「都の今の執政ファラミアはどこか?」
「ファラミア様はちょうど先程、散歩に出て帰っていらした所なのです。入れば直ぐ会えましょう」
「それは良かった!」
そう言ってその必要もないのにシリウルの手を引いて、程よい速度で走ると扉をばっと勢いよく開けて中を見渡した。
多くの患者が中に居て、大きく音を立てた彼を訝しげに見ては何か信じられないものを見たような顔をして、彼の挙動を伺がった。
その中からボロミア程ではないにしろ立派な男性が闇を背負ってゆっくり近づいてきて、光が当たるところに来るとその顔がボロミアによく似ている事にシリウルは気づいた。
この男こそが、彼の弟ファラミアなのだった。
ファラミアはしかと兄の顔を見つめると、雄叫びをあげて彼に強く抱きつき、帰還を祝った。
「私はあなたの遺品を船から回収したのです!まさかこんな時に戻ってこられるとは願っても見なかった!」
一度離れてそう叫ぶとまだ信じられないというように、また彼の肩を強く抱いた。ボロミアはその時に傷に当たってしまったのか、少し唸りつつも直ぐに彼を抱き締め返した。
「私を助けてくださった彼女が、船だけはそのまま川に返したのだ!お前は恐らくそこから拾ったのだろう」
「成程そうでありましたか、私はあなたの身体だけは川に流されてしまったものと思っていました」
「私のような図体の者が、そう簡単に流される訳がなかろう。だがかくして、私は舞い戻りお前の前に立っている」
「ああ、何よりそれが喜ばしいことだ!王もお戻りになられればあなたの帰還をお喜びになられることでしょう」
「王とは?セオデン王のことか」
ボロミアが聞くと、悲しげな顔をした後に直ぐ彼の質問に答えた。
「いいえ、我らの王です!あなたが一緒に旅をしていらした野伏、アラゴルンですよ!彼は私とその他闇の息吹に毒された者たちを癒して、今は戦いに出ていたところなのです」
「そうか!では私の申し出通りアラゴルンは来てくれたのだな、そうして王となるというわけか!戻ってきたのならお前の事も含めて、たっぷりお礼しなければなるまいな」
と言ったところでシリウルが彼の肩を叩いて、注意を引きつけた。彼らが話している間に彼女は何やら院の者と話し込んでいた。
「ボロミア、再会の話を邪魔して悪いのですがここであなたも見て頂ける話がつきました。直ぐ見てもらいに行ってください」
シリウルの傍らには老齢の身にも関わらず壮健さが伺える、この療院の院長が佇んでいた。
彼はボロミアに手招きして、大人しく彼が着いてくると空いているベットの方に座らせ、控えていた者に必要な物を持ってこさせた。
彼もまた手当ての御業が素晴らしく、速やかに傷の様子を把握しては適切な処理を施しました。
幸い少し傷が開いてしまった程度でそれ以上は酷くなっていないようだった。
彼らは健常の者と同じくらい、偶にそれ以上の早さで馬を進めたので、それにしては軽いほどだった。
「まったく、あなたが伴っておられた方は素晴らしい腕をお持ちのようだ。対処が全て完璧に成されている」
彼は関心しながら、使った物のあと片付けを始めた。それを手伝いながらボロミアは彼の話を聞いた。
「私が見る前に、傷がどんな具合になっているか、どんな手当てと施されたかまでも仰って下さったのです。あなたの傷は命も危うい程でしたのに……私ではこれほどの傷をここまで治すにはひと月はかかるでしょう」
「彼女はエルフの血を引いている者なのだ、やることなすことの殆どが彼らの同じものを思い起こさせた。そして彼女は私に良く尽くしてくれた、何より私はそれのおかげだと思っている」
ボロミアがそう告げると、彼は同意するように微笑んで一礼して去っていった。
シリウルはファラミアと何かを話している様子で、彼が起き上がって近づくとファラミアがお礼を言っている所だった。
「兄を助けて下さってありがとうございます。服も彼が持っている剣もきっとあなたが拵えた物なのでしょう?」
「それについては私が使うことはない代物ですから良いのです。彼も療院に暫く居ることになるでしょうから、あなたが見てきた事や聞いた事色々話してやって下さい。いつもお国の事が頭から離れない様子でしたから」
「それについては心配いらないな、あなたに頼まれなくても聞き出すつもりでいた」
「ボロミア、診察は終わったのですか?」
「ああ、直ぐに。彼女から紹介は受けたか?」
「いえ、今聞こうとしたところでした」
「なら私から言おう、こちらはシリウル殿、見ての通り私の命の恩人だ。長い間私の面倒を見てくれて、国に帰る旅にも付き添ってくれた」
「レディ、改めてお礼を」
畳み掛けられたシリウルは戸惑いながらも頷いて、彼にこう答えた。
「散々彼にからお礼はして頂きましたから。あなたまでそうされることはないのですよ」
「私の気が済まないだけなのです、どうかお気になさらず」
「あなた方ご兄弟は揃って頑固者ですね、ボロミアもそう言って止まなかったのです」
シリウルがそう言ってボロミアの方を見やると、二人は顔を見合せて声に出して大笑いした。
