ゆめ微睡みのアリア
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二人はドルアダンの森を通って、夥しい馬の蹄の跡を見た。それらはまだ新しくミナス・ティリスの方角を最短で、まさに彼らが通るであろう道を進んでいた。
「悪しき者たちはこれほどの馬に乗るまい。もしや友軍ではないのか」
ボロミアが言う。確かにそうかもしれないとシリウルは希望をもって残りの行程を進めた。
昼は馬を休ませた時に一緒に済ませ、三十マイルと少し進むと日没まじかになり、近くに目星を付けておいた野営地にすぐに移った。
ボロミアが水を汲んでくるとシリウル食事の用意をし始めた所だった。
ボロミアはさっと彼女の手から物を奪い、あっという間に彼がさっさと拵えてしまった。
最初は少し不満げだったものの、いざ出来上がると彼女は笑顔で感心してくれて、ボロミアは満足そうに笑った。
四日と少しかかって灰色森に着くと、目前にさしたミナス・ティリスをボロミアは緊張した様子だった。
シリウルは早めに休憩を取らせてスールロスを見回りに行かせると、彼にこう話しかけた。
「何を緊張する事があるのです?」
ボロミアは少し間を置いてこう答えた。
「あの土地で色々な事があった、それが同時に頭を駆け巡って落ち着かないのだ」
「緊張なさるなら直前に、今は休まれる時間です。さてりんごはいかがですか?」
「ああ、頂こう」
ボロミアは特に彼女の森のりんごがお気に入りの様で、毎回とても美味しそうに食べるだった。
その日は三十五マイルほど進んで、野営地で食事が終わって片付けていると、ボロミアがシリウルの傍に座って話しかけた。
「私は自分がしてきた旅の全てをあなたにすっかり話していない。この様な怪我した理由もその旅にあるのだ」
「それで構いませんが、それがどうかされましたか」
「少しだけでも聞いて欲しい」
「わかりました」
「……私は仲間を一人を少しの間でも裏切ってしまったんだ。私は強く後悔し、その罪滅ぼしで私は無謀な戦いに身を置いた。助けに来てくれた仲間が死んだように見えた私を埋葬してくれたのだ」
「そう、でしたか」
「私も死んだとばかり思って遺言まで残してしまっていたのだ。これで戻ったら笑いものだな」
「いいえ、皆さん飛ぶように喜ばれますよ」
「そうかな」
「ボロミア、」
「ん?」
「後悔している事柄で許されない罪はありません」
「ああ、そうかもしれない」
話が終わると、心が落ち着いたのか彼はため息を零した。そして小さく寝息を立てて座ったまま眠り込んでしまった。
シリウルは彼の目にかかった髪をどかしてやると、額に口付けて彼女も傍らで眠った。
その後最大限早く進んで1週間と一晩で彼らはランマス・エホールに着いた。
ランマス・エホールは酷い姿で、壁は打ち壊され、敵、味方とも判別できぬほどの多くの亡骸がそこらじゅうに横たわっていた。
環状長壁を抜けついにペレンノール野に辿り着くと、ミナス・ティリスの周りには包囲網の跡があり、屍の中から猛々しく地面に突き刺さるローハンの旗がありボロミアは驚いた。
「……古の誓いを果たしてくれたのか」
旗はおびただしい量で、沢山のマークの騎士がここで散ったのが来て取れた。
そしてどこにも憎き敵の姿がなかった!オークやムマキル、トロルたちは皆マークの騎士たちの槍や剣が突き刺さり、死していた。
彼らの戦いがどれだけ勇猛で激しいものであったのか、彼らの血潮から伝わった。
ボロミアは追悼の礼を取り、シリウルも同じようにして彼らの眠りが安らかである様に祈った。
十マイルほどの道のりを駆けてミナス・ティリスの城門の前まで来ると、包囲戦の後だからか厳重に見張られていた。
シリウルは城塞での勝手がわからず戸惑っていると、ボロミアが門番に声をかけてくれた。
「おーい!ゴンドールの者だ!ここを開けてくれ」
「ゴンドールの誰かね?今は正式な執政がまだ居ないので皆緊迫しているんだ。しかと申してくれ」
「では告げよう!私こそが、その亡くなった正式な執政の息子ボロミアである!疾くと開けよ!」
「嘘を申すな!ボロミア様は死なれた!ファラミア次期執政が、遺品である割れた角笛を持ち帰って来たのだ!」
「……どうするので?」
「いや大丈夫だ。お前は大将の顔も忘れたのか!開けられないのならば一度近くに来て見てみろ!!」
門番は仕方なく、一番低いタワーに降りてくると、ボロミアの顔をしかと確認して酷く驚いた。
「なんと、確かにボロミア様の顔だ!闇の者が化けて居るのではあるまいな?」
「闇の者ならこの様な美しい毛色の馬を連れているわけがなかろう!お前は奴らの乗り物を見ていないのか!」
「むむ、そう言われるとたしかに。ではまことに帰ってこられたのか!なんという事だ、どうやって生きてきたのかわからんが民が湧いて喜ぶだろう!どうぞお入りになられよ!」
あれだけけしかけた割にはあっさり彼に言い負かされると、ボロミアの戻りを喜んで入れてくれた。
警戒している、と言われたのに門番に立っていた者は彼一人でなぞなぞ遊びをやらされた気分だが、ともかくやっとボロミアは故郷に帰ることが出来たのだった。
