甘々な五伊地
テーブルの上いっぱいにお菓子や飲み物を並べ、映画の始まる時間を待つ。
「こうやって映画見るのもずいぶん久しぶりだよね」
隣で小粒のあられに手を伸ばしかけていた伊地知が、ふんわりと微笑んで頷いた。
「最近忙しくてゆっくりする時間も取れませんでしたもんね」
ポリポリとあられを食べ始めた伊地知の顔を愛おしく 眺めながら、五条はビールの缶を取ってプルタブを引く。五条が下戸なのに遠慮してか、ふたりきりの時はあまり酒を飲みたがらないが、五条はほろ酔い加減の伊地知と過ごすのが好きだ。
「飲みなよ。明日は休みなんだし」
「……では、お言葉に甘えて」
はにかむように笑って、伊地知は五条が差し出した缶ビールを手に取った。
学生の頃もよくこうしてお互いの部屋にお菓子を持ち寄って映画の鑑賞会をしたものだ。
本当は映画なんてろくに見ていなくて、伊地知とふたりで過ごす口実が欲しいだけだったけれども。
あれから十年が経って、テーブルの上に並んだお菓子はスナック菓子よりも少し上等なものになり、飲み物にアルコールが入ったものも混ざるようになった。隣にいる伊地知はあの頃よりずっと近くにいる。
映画を見ている最中、ずっと伊地知の手を握りたくて 隣からじっとその手を眺めていた夜があったことを、不意に五条は思い出した。
映画が始まり、あの頃の逡巡は何だったのかと笑えるくらい無造作に、五条は伊地知の腰に腕を回す。
抱き寄せると、伊地知はくたりと五条の肩にしなだれかかってきた。
「久しぶりに飲んだら眠くなってきちゃいました」
「無理しなくていいよ、目閉じてな」
伊地知の頭部を案配よく肩に乗せると、五条はそっと彼の肌をなでる。
「ん、あ、くすぐったいです五条さん」
体をよじった伊地知が、ふっと息を吐くように笑った。
「まさか五条さんとこんな風に過ごす日が来るなんて、 あの頃は思ってもみませんでした」
「そうなの?僕はあの頃も伊地知とこうなれたらいいなって思ってたけど」
「それは私も同じですけど。だってあの頃は、五条先輩と二人きりだっていうだけでドキドキしてしまって、映画の内容なんて頭に入らないし、緊張してたことしか覚えてないです」
「今はドキドキしないの?」
恋のときめきはもう過去のものになってしまったのかと、怖々と尋ねると伊地知はうっとりと目を閉じた。
「今もドキドキはしてますけど、それ以上に五条さんのそばにいると安心します」
一緒に眠ることも珍しくはないので当然といえば当然だが、それは五条になら無防備な姿を晒しても構わないという意味に他なるまい。この十年で近づいたのは、体ばかりではないのだ。
「眠くなってしまうのが困りますけど……」
つぶやいて眠りに落ちて行こうとする伊地知を引き止めるように、五条は彼の肌を愛おしさを込めて撫でた。
「こうやって映画見るのもずいぶん久しぶりだよね」
隣で小粒のあられに手を伸ばしかけていた伊地知が、ふんわりと微笑んで頷いた。
「最近忙しくてゆっくりする時間も取れませんでしたもんね」
ポリポリとあられを食べ始めた伊地知の顔を愛おしく 眺めながら、五条はビールの缶を取ってプルタブを引く。五条が下戸なのに遠慮してか、ふたりきりの時はあまり酒を飲みたがらないが、五条はほろ酔い加減の伊地知と過ごすのが好きだ。
「飲みなよ。明日は休みなんだし」
「……では、お言葉に甘えて」
はにかむように笑って、伊地知は五条が差し出した缶ビールを手に取った。
学生の頃もよくこうしてお互いの部屋にお菓子を持ち寄って映画の鑑賞会をしたものだ。
本当は映画なんてろくに見ていなくて、伊地知とふたりで過ごす口実が欲しいだけだったけれども。
あれから十年が経って、テーブルの上に並んだお菓子はスナック菓子よりも少し上等なものになり、飲み物にアルコールが入ったものも混ざるようになった。隣にいる伊地知はあの頃よりずっと近くにいる。
映画を見ている最中、ずっと伊地知の手を握りたくて 隣からじっとその手を眺めていた夜があったことを、不意に五条は思い出した。
映画が始まり、あの頃の逡巡は何だったのかと笑えるくらい無造作に、五条は伊地知の腰に腕を回す。
抱き寄せると、伊地知はくたりと五条の肩にしなだれかかってきた。
「久しぶりに飲んだら眠くなってきちゃいました」
「無理しなくていいよ、目閉じてな」
伊地知の頭部を案配よく肩に乗せると、五条はそっと彼の肌をなでる。
「ん、あ、くすぐったいです五条さん」
体をよじった伊地知が、ふっと息を吐くように笑った。
「まさか五条さんとこんな風に過ごす日が来るなんて、 あの頃は思ってもみませんでした」
「そうなの?僕はあの頃も伊地知とこうなれたらいいなって思ってたけど」
「それは私も同じですけど。だってあの頃は、五条先輩と二人きりだっていうだけでドキドキしてしまって、映画の内容なんて頭に入らないし、緊張してたことしか覚えてないです」
「今はドキドキしないの?」
恋のときめきはもう過去のものになってしまったのかと、怖々と尋ねると伊地知はうっとりと目を閉じた。
「今もドキドキはしてますけど、それ以上に五条さんのそばにいると安心します」
一緒に眠ることも珍しくはないので当然といえば当然だが、それは五条になら無防備な姿を晒しても構わないという意味に他なるまい。この十年で近づいたのは、体ばかりではないのだ。
「眠くなってしまうのが困りますけど……」
つぶやいて眠りに落ちて行こうとする伊地知を引き止めるように、五条は彼の肌を愛おしさを込めて撫でた。
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