転生パロ小説まとめ
いつかの記憶。
美しい花畑。
花が舞い、その中に。
美しい女と凛々しい顔の少年が立つ。
「…大丈夫ですか?」
その女性の顔を見て、私は『全て』を思い出した。
『使命』を持って誕生し、傷つき倒れた命の瀬戸際に触れた『愛』。
命を授かり、歓喜し、全てを失う。
戦い抜いた果てに手に残ったものは『美しい思い出』『救った息子』『生命の逞しさ』『希望を託した勇者』。
白く霞む記憶と共に、最後に背中を預けた息子よ。
お前は今、どこかでまだ戦い続けているのだろうか。
桜が空に舞う季節。
大学のキャンバスで友人とチェスをしていた時、負けそうになった友人が駒を一つ、歩道に投げて妨害した。
笑いながら取りに向かった先、小さな白い手と同時にその駒に触れる。
顔を上げた目前にあったのは、美しく可憐で、太陽のように笑う『あの時』の貴女だった。
『記憶』が戻る瞬間の貴女の台詞はこうだった。
「…また貴方に会えるなんて、神様はきっと少し意地悪なのね」
チェスの試合を放棄し、貴女の手を引いて私は駆け出す。
人気のない場所まで移動し、足を止める。
私のスピードに必死についてきた貴女は息を切らせながらも、嫌な顔一つせず私を見上げた。
腕の中に納め、大声で叫んだ。
「ソアラ、ソアラ。ああ、これは夢じゃないのか。またこの腕にお前を抱けるなど、夢以外では在り得ないのに!」
子供の頃、剣道の大会で大負けした時以来に涙を流した。
強く強く抱きしめ、その存在を思う存分実感する。
「ねえ貴方、苦しいわ」
くすくすと笑う声に我に返り、急いで解放してやる。
「はぁ苦しかった」と小さく笑う貴女の顔は何も変わらず、ただその両頰にほんのりと太陽のような明るい色をのせる。
「まだおひげの生えていない、本当に出会った頃と同じ顔なのね。びっくりしちゃった」
優しく頬を触る手は、今の季節柄もあってか少し冷たい。
私も優しくその手を包み返し、きっとしたこともないような口元で笑う。
「お前も変わらない、何も変わってない。『あの時』から恋い焦がれ、愛し続けた顔のままだ。ソアラ、ソアラ」
今度は優しく、少し力を抜いて。
その小さな体を抱きしめた。
応えるように、貴女も俺の腰に腕を回す。
「ところでどうしてこんなところに。見たところ、だいぶ年若いようだが」
ふと体を離し、顔を覗く。
「私ね、今は16なの。まだ高校生なんだけど、今からいろんな大学を見て回っておこうかなって思って」
はにかみながら答える。
「そしたらあなたがいたのよ?興奮しちゃって、思わず近くに走って来ちゃった!タイミングよく男の人がチェスの駒をこちらに投げたから、きっかけが出来てまた貴方と話せるかも!って思って駒を拾おうとしたの!」
小さく腕を上下に振り、興奮気味に話す貴女のなんと愛おしいことか。
私は小さく笑い、その話を静かに聞いた。
「ねえ、また私をお嫁さんにしてくれるかしら?」
再会したばかりだというのに、貴女は既に先の話をする。
「まてまて、まだ再会したばかりだぞ?もう少し時間が」
「あら、『はじめまして』から『愛してる』は『とっくの昔に』済ませてるじゃない。その先も済ませてるのに、今更よ?」
にっこり笑って悪戯な子供のように。
その顔は相も変わらず、私を照らす太陽のように。
「…分かったよ、私の負けだ。ただ結婚まではまだ時間をくれ。ちゃんと、ゆっくり。『この世界』の方法で」
「だいぶ先までの楽しみが出来たわね」
「ああ、本当に」
また抱きしめ、笑い合う。
目尻に少し、くちづけを落とし、くすぐったそうに笑った貴女が脳裏に焼き付き、『悲しみ』を全て洗い流した。
これから始まる小さくも大きな幸せよ。
育て。
決して負けずにまっすぐ、『あの時愛した』子どもたちのように。
美しい花畑。
花が舞い、その中に。
美しい女と凛々しい顔の少年が立つ。
「…大丈夫ですか?」
その女性の顔を見て、私は『全て』を思い出した。
『使命』を持って誕生し、傷つき倒れた命の瀬戸際に触れた『愛』。
命を授かり、歓喜し、全てを失う。
戦い抜いた果てに手に残ったものは『美しい思い出』『救った息子』『生命の逞しさ』『希望を託した勇者』。
白く霞む記憶と共に、最後に背中を預けた息子よ。
お前は今、どこかでまだ戦い続けているのだろうか。
桜が空に舞う季節。
大学のキャンバスで友人とチェスをしていた時、負けそうになった友人が駒を一つ、歩道に投げて妨害した。
笑いながら取りに向かった先、小さな白い手と同時にその駒に触れる。
顔を上げた目前にあったのは、美しく可憐で、太陽のように笑う『あの時』の貴女だった。
『記憶』が戻る瞬間の貴女の台詞はこうだった。
「…また貴方に会えるなんて、神様はきっと少し意地悪なのね」
チェスの試合を放棄し、貴女の手を引いて私は駆け出す。
人気のない場所まで移動し、足を止める。
私のスピードに必死についてきた貴女は息を切らせながらも、嫌な顔一つせず私を見上げた。
腕の中に納め、大声で叫んだ。
「ソアラ、ソアラ。ああ、これは夢じゃないのか。またこの腕にお前を抱けるなど、夢以外では在り得ないのに!」
子供の頃、剣道の大会で大負けした時以来に涙を流した。
強く強く抱きしめ、その存在を思う存分実感する。
「ねえ貴方、苦しいわ」
くすくすと笑う声に我に返り、急いで解放してやる。
「はぁ苦しかった」と小さく笑う貴女の顔は何も変わらず、ただその両頰にほんのりと太陽のような明るい色をのせる。
「まだおひげの生えていない、本当に出会った頃と同じ顔なのね。びっくりしちゃった」
優しく頬を触る手は、今の季節柄もあってか少し冷たい。
私も優しくその手を包み返し、きっとしたこともないような口元で笑う。
「お前も変わらない、何も変わってない。『あの時』から恋い焦がれ、愛し続けた顔のままだ。ソアラ、ソアラ」
今度は優しく、少し力を抜いて。
その小さな体を抱きしめた。
応えるように、貴女も俺の腰に腕を回す。
「ところでどうしてこんなところに。見たところ、だいぶ年若いようだが」
ふと体を離し、顔を覗く。
「私ね、今は16なの。まだ高校生なんだけど、今からいろんな大学を見て回っておこうかなって思って」
はにかみながら答える。
「そしたらあなたがいたのよ?興奮しちゃって、思わず近くに走って来ちゃった!タイミングよく男の人がチェスの駒をこちらに投げたから、きっかけが出来てまた貴方と話せるかも!って思って駒を拾おうとしたの!」
小さく腕を上下に振り、興奮気味に話す貴女のなんと愛おしいことか。
私は小さく笑い、その話を静かに聞いた。
「ねえ、また私をお嫁さんにしてくれるかしら?」
再会したばかりだというのに、貴女は既に先の話をする。
「まてまて、まだ再会したばかりだぞ?もう少し時間が」
「あら、『はじめまして』から『愛してる』は『とっくの昔に』済ませてるじゃない。その先も済ませてるのに、今更よ?」
にっこり笑って悪戯な子供のように。
その顔は相も変わらず、私を照らす太陽のように。
「…分かったよ、私の負けだ。ただ結婚まではまだ時間をくれ。ちゃんと、ゆっくり。『この世界』の方法で」
「だいぶ先までの楽しみが出来たわね」
「ああ、本当に」
また抱きしめ、笑い合う。
目尻に少し、くちづけを落とし、くすぐったそうに笑った貴女が脳裏に焼き付き、『悲しみ』を全て洗い流した。
これから始まる小さくも大きな幸せよ。
育て。
決して負けずにまっすぐ、『あの時愛した』子どもたちのように。
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