ナンバー、アイ
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私のことを言いふらしたであろう人物、上鳴電気をとっ捕まえて飲ませて吐かせる……予定だったんだけど、久しぶりに会ったものだから楽しくて、いつの間にか話は外れ違う話題で弾んでしまっていた。
それでも何とか軌道修正し愚痴を吐く。病院の利益にもなるし宣伝してくれるのはいいんだけど、でも彼との相性は最悪だからやっぱり言わないでほしかった。そんなことを言えば「相性良いと思うけどなぁ」なんて電気はヘラヘラしているもんだから、これはかなりムカつくわけである。
ただもういまさら逃げられないし、彼は逃す気も全くなさそうだし。だからこの際、とことん向き合おう、そう決めたのだ。苦手なものは苦手だけど、もしかしたら関わっていく内に何かが変わるかもしれない。いままでの患者だってそうだった。それに向き合うといってもそこまで踏み込む必要もない。だって彼は患者であり、私は医療従事者。私には私の役割があるのだから。
◇◇◇
「失礼します………爆豪さん?」
トントントン。病室の扉を3回ノックするが、中にいる人物からの返答はない。いや、いままで返ってきた試しはないのだけれど、それでも中で物音はしていたから、いるんだなって気配は感じとれていた。だが本日はそれがなくて少々不安になる。
ナースステーションに戻り入浴時間や検査などの確認をするが、彼の名前の記載はない。それでもトイレ、お風呂場、談話室……と病棟内をぐるりと回るが彼の姿は何処にも見当たらなかった。もしかして入れ違いだろうか。そう思いもう一度病室の方へと向かい扉を開ける。
「爆豪さん………?ッ、!!?す、すみません!!!!」
ガラリと開けたその先には、探していた人物がいた。行方が分かりホッと一安心。なんてそんな息をつく暇なんかなく、目の前に映し出される肌色の光景に思わず目を逸らし慌てて部屋から出る。
着替え中ならそうだとノックをした時点で言ってほしい。異性の上半身を見ただけで顔を赤くなるほどそこまでウブで乙女ではないけれど、仮にもここは病院であり彼の部屋。申し訳なさすぎる。
それでも目に入り、一瞬にも関わらずしっかりと焼きついた彼の身体。白い肌につけられた無数の傷は、いままで一体どれだけのヴィランと対峙しつけてきたものなのだろう。彼がいまこうして生きているのは本当に奇跡なのかもしれない。いままでの患者の中でダントツの傷跡を残す彼を見て、そう思うのだ。そして今回もまた然り。私たちが何事もなく平和に過ごしていられるのは、彼らヒーローが街の安全を守っているから。本当に本当に感謝である。
でもそれとこれとはまた別問題であり、許可もなく見てしまった罪悪感が再び押し寄せる。入ったら絶対に何か言われる。それを思うといまから怖くなるのだ。
人が通り過ぎる度に何か私に声をかけているようだが、そんなものは入ってくるわけもなく上の空である。ただ扉の前で壁時計の秒針を無心で目で追っていれば、少しして「入れ」と中から声が聞こえた。
「失礼します………あの…すみませんでした」
「あ?」
「お着替え中だとは思わなくて本当にすみません」
恐る恐る扉を開き入室後。即座に深くお辞儀をし謝罪をする。ゆっくり顔を上げれば目が合った瞬間に「変態」と言われ、オワッタとそう思った。あぁもう最悪だ。帰りたい。だが、今日一日は始まったばかりである。それでも気を取り直して本日の業務に取り掛かる。いつもの時間に始まる彼とのリハビリ。それでも今日からは少し異なった。
「爆豪さん今日からリハビリ室でやります」
彼がここに来て一週間が経つ。そして主治医の指示で安静がとれた今日。長かった居心地の悪い空間からの解放である。
「おいおいほんとにダイナマイト入院してるじゃん」
「な、言っただろ。それにしても担当みょうじか」
車椅子で通る度に注がれる視線とコソコソと聞こえる話し声。聞こえないように話しているだろうけど、しっかり私の耳には入っています。地獄耳ですみません。
それにそんなこと私だって思っているよ。だってあのダイナマイトがうちの病院にいて、そして私みたいなセラピストが何故担当なのかって。でも彼が言うんだもの。カルテに記載してあるんだもの。だからやるしかないんだよ。
リハビリ室についても尚、注がれる視線が痛い。だから出来るだけ誰も使わない端のベッドに案内をした。そして平然を装い施術を始める。
爆豪さんが何故私なんかを選んだのか。電気によると、彼は私の個性に興味を示したらしい。そう聞いた時にいち早く出たのは物珍しいという感想。大抵そういった私の個性の話になれば、そちらから聞いてきたくせに「へー」とか「ふーん」とか適当な相槌を打たれて終了する。
そりゃ手から水が出るとか、火が吹けるとか、空が飛べるとか。ベタなものか、それよりももっと凄い個性だったらそれなりに話は盛り上がり、そこから何かが発展したのかもしれない。だけどそういった理想的な展開にはいままでに一度もならなくて、小馬鹿にされてお仕舞いが当たり前になっていた。だから結局はこの世界はもう“個性”しか見てくれないんだな、とつくづくそう感じていたのだ。だって私の個性ってただ数字が視えるだけなんだもの。そりゃ笑っちゃうよね。
それでも彼は私を求めてくれた。それが知識や技術じゃなく、生まれ持ったこの変な個性だとしても。いままでは煙たがれて、バカにされて、変な目で見られて。割と嫌な思い出しかないこの個性。これがこんなにも役に立つ日が来ようとは。この職について実は初めてだった。こんな時ぐらいしか利用価値がないくせにだ。
だから私は張り切ってしまったのかもしれない。いままで患者のために作りもしなかった資料なんかを作って、それを渡して。爆豪さんが欲しいなんて一言も言っていないのに。
「おい」
「な、何ですか」
「あれもう少し細かく出来るか」
筋力強化トレーニング中。声をかけられるが、負荷を与える手は止めずに続ける。
あれとは一体何を差すのか。でもペラペラと仰ぐ手に持つそれを見て、何のことを言っているのかすぐに分かった。「専門的になりますけど出来ます」と即返答をすれば、「お前に聞きゃどうにかなんだろ」と先日渡したものを返される。一度手を止め、そして返ってきた資料を見れば、目に映し出されるのは手書きの赤い文字。そこにはメモのようなものがびっしりと書かれていた。
電気が言っていた。彼はかなりストイックで努力家であると。ただ何となくこの人は生まれた時から勝ち組で、そして天才であるとそう勝手に思っていた。時期ナンバーワンという声も噂では聞いていたから余計にだ。でも実際は天才なのかもしれないけれど、それでも決して努力を惜しまない人。電気の言っていたことは正しい。これを見ればすぐに分かった。
渡したものが、私の個性が、こんなにも誰かの役に立とうとしている。それだけですごく嬉しくて、笑われなくてよかったと、この資料も彼には渡してよかったとそう思えた。
もしかしたら私は勘違いをしているのかもしれない。確かに性格は悪いし、目つきも悪いし、口も態度も悪いけど、私が思っているより彼は良い人なのかも……、
「あとお前」
「何ですか?」
「ゴリラって呼ばれてンのか?」
「はっ!?どこでそれを??!」
「さっきモブたちが話してンのが聞こえた」
「いやそれは違います!!!違うわけじゃないけど!!」
「まぁどーでもいいわ。それに言うほどゴリラじゃねェけど」
トレーニングを再開後、スッと抵抗を加えていた対象物の力が急に抜ける。不意のことで身体はバランスを崩したが、反射で出た手によって倒れずに済んだ。
「何するんですか」と言い終わるほんの少し前。顔を上げれば、目に映るのは画面いっぱいの彼の顔。そして「ほらな」とニヤリと笑うその表情に、一瞬でカッと熱が集まるのが分かった。
慌てて目を逸らしその場から立ち去ろうとするが、残念ながら私は仕事中。更にはここはリハビリ室。逃げようたって逃げられない。あぁなんで今日に限って病室じゃないんだろう。あの重っ苦しい空間が惜しくなる日が来るとは思わなかった。
「きゅ、急に力抜かないで下さい!」
「よく倒れなかったな」
「ちょっと聞いてますか?!」
私は逃げられない。それを分かっていたかのように意地悪い顔をして、ケラケラと笑う彼。前言撤回。良い人なんかじゃない。この人は根っからのドSであり悪魔気質だ。電気が相性良いいなんてふざけたことを言っていたけど、やっぱり私はこの人のことが苦手。………でも出会った時よりほんの少しだけそれが薄らいでいる。たぶんこれは慣れだとそう思う。
時計を見れば彼との時間はもう少しで終わりに近づいていた。気を取り直して、再びトレーニングを再開する。だけど彼は私のことをジッと見て、そして一向に力を入れようとしない。
「爆豪さん時間ありませんよ」
「もっと負荷上げろ」
「……ダメです」
「あぁ?!」
「いまの爆豪さんに合わせた負荷量です。これ以上はまだ負担がかかります」
そう言えば小さく舌打ちが聞こえたが、私は気にせず続ける。彼も言うことを聞いてくれたみたいで、グッと筋が収縮するのを手で感じとれた。それに彼は負荷量を上げろとはいったが、呼吸や心拍数、筋の収縮などを視ればいまの負荷でも結構きついと思う。プライドが高そうだから根を上げることなんか絶対に言わないだろうけど。
「とりあえず……30いきましょう。はい、いーち、に、さん、」
だから私はギリギリのところを攻め続ける。普段とは異なる少しだけ歪む顔に気を抜いたら笑ってしまいそうだが、ここは我慢。だってこれはさっきの、いや、いままでの仕返しなのだから。
それでも何とか軌道修正し愚痴を吐く。病院の利益にもなるし宣伝してくれるのはいいんだけど、でも彼との相性は最悪だからやっぱり言わないでほしかった。そんなことを言えば「相性良いと思うけどなぁ」なんて電気はヘラヘラしているもんだから、これはかなりムカつくわけである。
ただもういまさら逃げられないし、彼は逃す気も全くなさそうだし。だからこの際、とことん向き合おう、そう決めたのだ。苦手なものは苦手だけど、もしかしたら関わっていく内に何かが変わるかもしれない。いままでの患者だってそうだった。それに向き合うといってもそこまで踏み込む必要もない。だって彼は患者であり、私は医療従事者。私には私の役割があるのだから。
◇◇◇
「失礼します………爆豪さん?」
トントントン。病室の扉を3回ノックするが、中にいる人物からの返答はない。いや、いままで返ってきた試しはないのだけれど、それでも中で物音はしていたから、いるんだなって気配は感じとれていた。だが本日はそれがなくて少々不安になる。
ナースステーションに戻り入浴時間や検査などの確認をするが、彼の名前の記載はない。それでもトイレ、お風呂場、談話室……と病棟内をぐるりと回るが彼の姿は何処にも見当たらなかった。もしかして入れ違いだろうか。そう思いもう一度病室の方へと向かい扉を開ける。
「爆豪さん………?ッ、!!?す、すみません!!!!」
ガラリと開けたその先には、探していた人物がいた。行方が分かりホッと一安心。なんてそんな息をつく暇なんかなく、目の前に映し出される肌色の光景に思わず目を逸らし慌てて部屋から出る。
着替え中ならそうだとノックをした時点で言ってほしい。異性の上半身を見ただけで顔を赤くなるほどそこまでウブで乙女ではないけれど、仮にもここは病院であり彼の部屋。申し訳なさすぎる。
それでも目に入り、一瞬にも関わらずしっかりと焼きついた彼の身体。白い肌につけられた無数の傷は、いままで一体どれだけのヴィランと対峙しつけてきたものなのだろう。彼がいまこうして生きているのは本当に奇跡なのかもしれない。いままでの患者の中でダントツの傷跡を残す彼を見て、そう思うのだ。そして今回もまた然り。私たちが何事もなく平和に過ごしていられるのは、彼らヒーローが街の安全を守っているから。本当に本当に感謝である。
でもそれとこれとはまた別問題であり、許可もなく見てしまった罪悪感が再び押し寄せる。入ったら絶対に何か言われる。それを思うといまから怖くなるのだ。
人が通り過ぎる度に何か私に声をかけているようだが、そんなものは入ってくるわけもなく上の空である。ただ扉の前で壁時計の秒針を無心で目で追っていれば、少しして「入れ」と中から声が聞こえた。
「失礼します………あの…すみませんでした」
「あ?」
「お着替え中だとは思わなくて本当にすみません」
恐る恐る扉を開き入室後。即座に深くお辞儀をし謝罪をする。ゆっくり顔を上げれば目が合った瞬間に「変態」と言われ、オワッタとそう思った。あぁもう最悪だ。帰りたい。だが、今日一日は始まったばかりである。それでも気を取り直して本日の業務に取り掛かる。いつもの時間に始まる彼とのリハビリ。それでも今日からは少し異なった。
「爆豪さん今日からリハビリ室でやります」
彼がここに来て一週間が経つ。そして主治医の指示で安静がとれた今日。長かった居心地の悪い空間からの解放である。
「おいおいほんとにダイナマイト入院してるじゃん」
「な、言っただろ。それにしても担当みょうじか」
車椅子で通る度に注がれる視線とコソコソと聞こえる話し声。聞こえないように話しているだろうけど、しっかり私の耳には入っています。地獄耳ですみません。
それにそんなこと私だって思っているよ。だってあのダイナマイトがうちの病院にいて、そして私みたいなセラピストが何故担当なのかって。でも彼が言うんだもの。カルテに記載してあるんだもの。だからやるしかないんだよ。
リハビリ室についても尚、注がれる視線が痛い。だから出来るだけ誰も使わない端のベッドに案内をした。そして平然を装い施術を始める。
爆豪さんが何故私なんかを選んだのか。電気によると、彼は私の個性に興味を示したらしい。そう聞いた時にいち早く出たのは物珍しいという感想。大抵そういった私の個性の話になれば、そちらから聞いてきたくせに「へー」とか「ふーん」とか適当な相槌を打たれて終了する。
そりゃ手から水が出るとか、火が吹けるとか、空が飛べるとか。ベタなものか、それよりももっと凄い個性だったらそれなりに話は盛り上がり、そこから何かが発展したのかもしれない。だけどそういった理想的な展開にはいままでに一度もならなくて、小馬鹿にされてお仕舞いが当たり前になっていた。だから結局はこの世界はもう“個性”しか見てくれないんだな、とつくづくそう感じていたのだ。だって私の個性ってただ数字が視えるだけなんだもの。そりゃ笑っちゃうよね。
それでも彼は私を求めてくれた。それが知識や技術じゃなく、生まれ持ったこの変な個性だとしても。いままでは煙たがれて、バカにされて、変な目で見られて。割と嫌な思い出しかないこの個性。これがこんなにも役に立つ日が来ようとは。この職について実は初めてだった。こんな時ぐらいしか利用価値がないくせにだ。
だから私は張り切ってしまったのかもしれない。いままで患者のために作りもしなかった資料なんかを作って、それを渡して。爆豪さんが欲しいなんて一言も言っていないのに。
「おい」
「な、何ですか」
「あれもう少し細かく出来るか」
筋力強化トレーニング中。声をかけられるが、負荷を与える手は止めずに続ける。
あれとは一体何を差すのか。でもペラペラと仰ぐ手に持つそれを見て、何のことを言っているのかすぐに分かった。「専門的になりますけど出来ます」と即返答をすれば、「お前に聞きゃどうにかなんだろ」と先日渡したものを返される。一度手を止め、そして返ってきた資料を見れば、目に映し出されるのは手書きの赤い文字。そこにはメモのようなものがびっしりと書かれていた。
電気が言っていた。彼はかなりストイックで努力家であると。ただ何となくこの人は生まれた時から勝ち組で、そして天才であるとそう勝手に思っていた。時期ナンバーワンという声も噂では聞いていたから余計にだ。でも実際は天才なのかもしれないけれど、それでも決して努力を惜しまない人。電気の言っていたことは正しい。これを見ればすぐに分かった。
渡したものが、私の個性が、こんなにも誰かの役に立とうとしている。それだけですごく嬉しくて、笑われなくてよかったと、この資料も彼には渡してよかったとそう思えた。
もしかしたら私は勘違いをしているのかもしれない。確かに性格は悪いし、目つきも悪いし、口も態度も悪いけど、私が思っているより彼は良い人なのかも……、
「あとお前」
「何ですか?」
「ゴリラって呼ばれてンのか?」
「はっ!?どこでそれを??!」
「さっきモブたちが話してンのが聞こえた」
「いやそれは違います!!!違うわけじゃないけど!!」
「まぁどーでもいいわ。それに言うほどゴリラじゃねェけど」
トレーニングを再開後、スッと抵抗を加えていた対象物の力が急に抜ける。不意のことで身体はバランスを崩したが、反射で出た手によって倒れずに済んだ。
「何するんですか」と言い終わるほんの少し前。顔を上げれば、目に映るのは画面いっぱいの彼の顔。そして「ほらな」とニヤリと笑うその表情に、一瞬でカッと熱が集まるのが分かった。
慌てて目を逸らしその場から立ち去ろうとするが、残念ながら私は仕事中。更にはここはリハビリ室。逃げようたって逃げられない。あぁなんで今日に限って病室じゃないんだろう。あの重っ苦しい空間が惜しくなる日が来るとは思わなかった。
「きゅ、急に力抜かないで下さい!」
「よく倒れなかったな」
「ちょっと聞いてますか?!」
私は逃げられない。それを分かっていたかのように意地悪い顔をして、ケラケラと笑う彼。前言撤回。良い人なんかじゃない。この人は根っからのドSであり悪魔気質だ。電気が相性良いいなんてふざけたことを言っていたけど、やっぱり私はこの人のことが苦手。………でも出会った時よりほんの少しだけそれが薄らいでいる。たぶんこれは慣れだとそう思う。
時計を見れば彼との時間はもう少しで終わりに近づいていた。気を取り直して、再びトレーニングを再開する。だけど彼は私のことをジッと見て、そして一向に力を入れようとしない。
「爆豪さん時間ありませんよ」
「もっと負荷上げろ」
「……ダメです」
「あぁ?!」
「いまの爆豪さんに合わせた負荷量です。これ以上はまだ負担がかかります」
そう言えば小さく舌打ちが聞こえたが、私は気にせず続ける。彼も言うことを聞いてくれたみたいで、グッと筋が収縮するのを手で感じとれた。それに彼は負荷量を上げろとはいったが、呼吸や心拍数、筋の収縮などを視ればいまの負荷でも結構きついと思う。プライドが高そうだから根を上げることなんか絶対に言わないだろうけど。
「とりあえず……30いきましょう。はい、いーち、に、さん、」
だから私はギリギリのところを攻め続ける。普段とは異なる少しだけ歪む顔に気を抜いたら笑ってしまいそうだが、ここは我慢。だってこれはさっきの、いや、いままでの仕返しなのだから。