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月から見る夢

とぷんと体が沈んでいく感覚だけがあった。
どこまでも青い世界。
0と1が取り巻く世界を落ちていく。
この終わりは目覚めた時から決められていた。

彼女の人生は突きつけられた死への疑問から始まった。
だけど死を迎える今は穏やかに目を閉じている。

願いを抱いた/生きることへの肯定。
その終わりに到達した/迎える死への肯定。

「君は満足かね」

傍らの従者は囁きかける。
もう少しだけ望んでもいいのではないかと。

でも、もう終わりだから。

彼女の口は小さく笑う。

「まだ消失には時間がかかりそうだな。ならば少し夢を見るのはどうかね?」

従者の提案に彼女は首を傾げる。

夢なんて、見れるはずない。

欠けた夢を繰り返し見ていた彼女は口を尖らせた。

「君が見たい夢を願えばいい」

そうすれば見ることだってできるだろうと従者は嘯いた。
できるような気がして彼女はまた笑う。

じゃあ、こういうのはどうかな?

示された夢に従者も笑う。

「ああ、いいじゃないか」

それではおやすみなさい。

「おやすみ、マスター。どうか夢の中でも私をよろしく」
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