見知らぬ世界
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「凄いのぉ!」
カクがキラキラとした目で見てくる。
『あ、あはは…』
読み違えたか?先程みた冷徹さが、綺麗に消えた。いや、それともそれをわざと先程は自分に勘繰らせたのか?
読めない、でももしかしたらルッチ以外は簡単に落とせるのかもしれない。
そう判断し、チラリとルッチへ視線を逸らす。
やはり、俄然ルッチには睨み続けられている。その視線が刺さる。体が冷える、逃げろと警告を発する。
が、忍の覚悟に反して、ルッチはため息をつき踵をかえした。
「俺は長官へ報告してくる。」
拍子抜けなその行動に、ふっと忍の肩の力がぬけた。
これで、命の危機はおそらく脱しただろう。ひとまず、首の皮は繋がった。
それに、なんだか……漫画の印象とは違い、彼の広く大きな背中は優しく見えた。
「おい。」
『!!はい、何でしょう!』
そんなルッチの意外な印象を考えていると、ジャブラの声がした。
慌てて振り返り、返事をする。
「まず、お前の名前と性別を教えろ。」
むしろ今更ようやく聞いたか、というような当然の内容を問われる。こいつらもやはり動揺していたのかもしれない。
「何言うとるんじゃ、ジャブラ。女の子に決まっておろう。」
「でも俺って言ったチャパー。」
そんなもの、俺の答えを待てば分かるだろう。と思いつつ、二人を遮り彼女は名を名乗った。
『え、とですね。名前は龍越忍。一応女っす。』
自分の考えが当たっていたのが嬉しいのか、カクが少年の様に目を輝かせジャブラを仰ぎ見た。
「ほらのぅ!ワシの言う通りじゃ!」
「カク、五月蝿い。とりあえず、本当にこいつが怪しくねぇか話聞こうぜ。」
子供らしいカクを適当にいなし、ジャブラは忍の正体を見極めるべく、質問を重ねた。
変な髭の男だが、問うべきことは問うてくる。
「まず、お前俺達の何を知ってる?それと、その俺達が出てるって言う漫画のことを話せ。」
問われたことは、想定範囲内の質問であった。
問題は、その問にどう答えるか。
答えによって、答え方によって、今後の自分の運命は決まる。
『俺が読んだ漫画は、麦わらの一味が仲間を増やしつつ海賊王を目指すっつー漫画です。』
とりあえずそもそもにどんな漫画か、そしてあわよくばその質問への反応で、作品内のいつ頃の話なのか把握したく、彼女はこう答えた。
ぴくり、とカクとジャブラが反応する。と、いうことは…だ。
『も、もしかして…ルフィと戦いました?』
漫画の話の後の展開なのかもしれない。
彼女の読みはぴたりと当たっていた。
ジャブラは眉間に皺を寄せ、不本意そうだが頷いたのだ。
「俺は麦わらじゃねぇやつに負けたがな。」
じゃあここは、漫画の話に直接関係してしまう心配はない。
自分が何かを言っても、あんまり支障はない。
だが、もう既に、CP9がエニエスロビーに帰ってきている時点で自分が知っている話とはずれている。
自分がここにきたことで、話が変わってしまったのだろうか。
だがしかし深く考えたとて、それは分からない。
分からないことで悩むのは馬鹿らしいし時間の無駄だ。
一瞬、なにを続けるか迷った忍は、あることを思いついた。
誰も知らない筈の情報を知っていれば、信じてもらえるかもしれない。
至極単純な答えではあるが、やってみる価値はあるだろう。
『ルッチさん、カクさんはW7で船大工。カリファさんは秘書。ブルーノさんは…えっと、酒場の…とにかくその任務に五年間行ってた…とか?なら知ってます…』
漫画を読んでいれば、覚えているかはともかくとして、知っている内容。
しかしこれは、極秘任務だったはず。
この世界の一般人が知っている情報ではない。
案の定、思惑通りに二人は目を丸くさせて、お互いの顔を見た。
「驚いたのぅ…」
「誰も知らねぇ任務の筈だ。つまり…」
忍の顔に、あの長い鼻を突きつけるようにカクはずいと迫った。
「お主、本当にワシらを漫画でみたんじゃな?主は、違う世界から来たと言うことじゃな?」
『その通りです!』
強く頷く。やっと認めてくれた。
「チャパー。とりあえず、長官の所へ連れてくチャパー。」
「それがええのぅ。」
「だな。」
忍が言った驚きであろう任務内容に(現にカクとジャブラは目を丸くさせていた)、全く動じなかったフクロウに逆に驚きながら、彼女は漫画のシーンを思い返していた。
今から向かうのは長官……スパンダムの元。
あの、嫌な印象しか残らぬツギハギ男。
(まあ、あいつ弱いしなぁ……)
何かされたとしても、どうにかできるだろう。
早く来い、とドアを出て手招きするジャブラの元へ少し急ぎ足に忍は向かった。