見知らぬ世界
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「いきなり呼びやがって、なんだ化け猫!!」
「静かにせんか!!ジャブラ!!起きてしまうじゃろうが!」
早朝から、なにやら自分の家には似つかわしくない騒がしい声が聞こえてきた。
聞いたことのあるような、知らない声。
その声に徐々に意識が覚醒していく。
『う…ん…』
「しもうた!起こしてしもうた!」
「チャパー、カクが一番うるさいチャパー。」
『!』
微睡みの中、ハッと急に意識を覚醒させる。
俺は家に一人だった。
もし仮にこいつらが暗殺者なら…!
普段なら、こんな微睡みに身は任せない。そもそもに、自分がこれほど深い眠りに落ちたこともいつぶりだろうか。
いつ殺されるか分からない立場柄、こんな…油断は見せない。
それほど自分は疲れていたのだろうか。
相手の目を欺くように、派手に布団を跳ね除け臨戦態勢になる。
そこで、はたと気づく。
この人達は――――――
『え…なん…』
「…お前ら五月蝿い。少し黙れ。」
『CP9!?』
目の前にいたのは、明らかに忍が大好きで読んでいたジャンプの某人気漫画の、キャラクター。
「…何故俺達を知っている。」
思わず口走った彼等の組織名。
敏感に髭の男が反応し、その変な形の眉をしかめる。
だが、忍はそれどころではなかった。
大概の状況には、動揺せず冷静に対処できる。
だがこればかりは、想定などしたこともない。
なぜ俺はここにいる。
昨夜普通に寝たはずだ。
なぜ……
「…おい、おい!」
『どわぁ!な、何でしょうか…?』
自問自答する忍を睨み、声をかけてきたのは歴代CP9最強と謳われるルッチだった。
「お前、何故俺達を知っている。」
当然の問を投げかけられる。
正直に応えたところで、信用される気など全くしないが…それでも話さないよりマシであろう。
『………ま、漫画で……読んだ…みたいな?』
曖昧に答えると、至極当然だが睨まれた。
まあ、これを易々と信じてくれないであろうことなどこちらも予想済みだ。さて、次はどうでようか。
「ほぉ…漫画でワシらを?」
「チャパー凄い嘘臭いチャパー。」
(バカっぽそうな)カクとフクロウにすら怪しげな目で見られる。
誰か一人を味方につけなければ、ここで自分が生き残る可能性は低い。
猫をかぶれ、敵を作るな。まずは、相手につけこめ。
幼い頃叩き込まれた暗殺の基礎。
心の中で反芻する。
『え、や、待ってください。別に俺、スパイとかじゃないんで…』
わざとらしく、動揺しどもった様子を見せる。一般人らしく。一般人らしくなれ。
「何故俺の部屋にいた。」
『わかんないっす。』
すっとぼけて答えつつ、ここが髭の男……ルッチの部屋だと、まず把握する。
少しずつ、少しずつ情報を集めろ。焦るな。
「殺される前に答えろ。」
ビリビリと空気が震えるような脅しに、ゴクリと生唾を飲んだ。
(……流石、だな)
ゾクゾクと肌に鳥肌がたつ。
背筋に悪寒がはしる。
どれも、なかなか体験したことはない。
確かこの男は、歴代CP9最強…だったか。それも肯ける。
(試しに…)
勝負に出るか、と忍は口を開いた。
『待ってください、“ロブルッチ”さん!』
焦ったように、彼の名を呼んでみる。いかにも、殺されたくないとでも言うように。なるべく震え声で。
ピクリ…ルッチの片眉が動いた。
自分のこの演技が、バレただろうか。彼も殺し屋。
同族ならば気づくかもしれない。
つー…と冷や汗が背中を流れる。
「ほぉ…名前も分かるんか!!ワシの名は分かるかのぅ?」
しかし、忍が極限の勝負をルッチに仕掛けると、まんまとカクがかかった。
だが、彼も油断ならないのだろう。あのぱっちりとした目、特徴的な、けれどとっつきやすい口調と声。
相手を信頼させることに関して、彼は尤も優秀であろう。それにのみこまれてはいけない。
くりくりとした目の奥にある、情に流されない冷たさを忍は感じ取っていた。
『カクさん。』
それでも忍は答えた。
罠にかかったのなら、なんでも釣る。まずは外堀から埋めていくのは鉄則だ。
「お、俺は俺は?」
『ジャブラさん。』
「チャパー。」
『フクロウ。』