修行1日目
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『っかー!!!きっつ……!』
走り終えた忍は、つい膝に手をあて、ゼェゼェと呼吸を整える。ぽたぽたと床に雫が垂れるほど汗をかいていた。
その顎を滴る汗を拭いながら顔をあげ、カクとルッチを見ると二人とも涼しい顔をしていた。
汗一つかかず、呼吸も乱さない彼らを見てなぜだが悔しくて、強くなってやろうなどと思ってしまう。
『……』
その気持ちに気がつき、慌てて頭を振りその思いを追い出した。
強く、強く。
(そんなもの、もう諦めた。)
そう、言い聞かす。
彼女のその想いになど全く気付かず、カクは平然と修行を進めようとした。
「さて、取りあえずまずは剃から極めるかのぅ?」
「ああ。そうだな。」
忍の呼吸が整うのなど、全く待ってくれないまま彼等は今後の修行内容についても議論している。
ああ、そういえばこれは軽い準備運動のようなもの。本番の修行はこれからか…と軽くため息をつく。
「うむ。忍、剃は強靭な脚の筋力が大事じゃ。勿論これは嵐脚にも言えるのだがのぅ。じゃから、まずは脚の筋力から鍛えるぞ。」
どうやら二人の間で意見が決まったらしく、くるりと振り向いたカクは急にこう言った。
『うーす。』
さらりと返事をし、膝から手をはなし彼女はぶらぶらとまだ筋肉が火照っている足を振った。。
――――半日経って(昼)
「おーい、お前ら~喜べ!この俺様が昼飯を持ってきてやったぞ。」
少しの休憩もないまま立て続けにトレーニングさせられ、忍がぐったりとしていると、籠を掲げたスパンダムがスタスタと三人の元へ歩いてきた。
「お、長官じゃ。」
「って何!?おま…忍!!どうした!」
うつ伏せで倒れている忍を見て、彼女の横にしゃがみこみスパンダムは顔をのぞき込んだ。
『ふ…どうしたも何も…』
もはや答える気力すら、彼女にはない。
「あれしきで情けない。」
呆れたようにルッチがため息をつく。
しかし忍は、声に出す元気がないので心の中で文句を垂れた。
あれは、キツイなどというレベルじゃない。
正直、常人でなくてよかったと思っている。幼い頃から訓練に慣れていないヤワな体では耐えられるものではない。
鍛えた彼女すら、今は太ももがガクガクと震えている。
『死ぬかと思った…』
「そ、そうか…なんか、お疲れ…こ、今度からなるべく俺も居てやるよ。」
とりあえずこれ食え、と籠の中からゴソゴソとサンドイッチを差し出される。
ガクガクと生まれたての小鹿のように震えながら立ち上がると、サッと脇の下に手が入り体を支えてくれる。
この継ぎ接ぎは、案外に気が利くのかもしれない。
あの、ウォーターセブンの話では、相当ひどいことをしていたので正直あまり印象は良くなかったが…少し見直した、と思う。
(しかし、ねぇ…)
助けてくれるスパンダムに、ほぼ全体重を預けながら忍はチラリとカクとルッチに視線をなげた。
二人とも、訓練時とはまた違ったピリピリとした空気を纏っている。
そんなに、彼らにとってひ弱な自分が気に入らないのか。
妙に鈍い彼女は、真相には気づかない。