見知らぬ世界
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他の部屋とは異なる、少し立派な出で立ちの部屋の前で一行は足を止めた。
カクがあの綺麗な手で、軽やかにノックする。
『あ、カリファ…さん。』
扉を開けると、綺麗な女性が振り向くのが見えた。
一瞬で誰なのか分かり、つい名を呼んでしまう。
カリファは、物珍しそうに眼鏡をクイッと上げながら、上から下まで舐めるように忍を観察した。
その目の怖いことと言ったら。
ルッチとはまた異質の怖さだ。女性特有のものだろう。
「お!お前が例の奴か。ほら、とりあえず入れ!」
その奥で、例の長官……スパンダムは座っていた。
豪華なデスクに立派な椅子。
彼の七光り度を顕著に表している。
その彼は、山積みになった書類を端に寄せ、ニヤニヤと笑みを浮かべ座っていた。
明らかに、忍に興味があって仕方がないといった様子だ。
ついてこい、とカクに顎で示され忍は机の前まで歩み寄った。
「お前、色々面白い奴だよな。よりによってルッチのベッドにいるとはな~」
本当に興味深そうに、上から下まで眺められる。それほど眺められても、自分はただの寝間着姿。
これといって変なところは無いはずだが。
「長官、どうやら忍はほんまに違う世界から来たようじゃぞ。」
忍が、冷ややかな冷たい目でスパンダムを睨む中、さっさとカクは説明を始めていた。
「一般人が知り得ない情報も知っていた。」
ジャブラも、補足するように口を挟む。
カクとジャブラがの追加報告が終わると、長官はますます目を輝かせ、「じゃあ、お前の世界のことを色々話してくれ!」と言ってきた。
ルッチとカリファからの威圧もあり、悪魔の実とかいうものはなかったり、海賊もほとんどいなかったり、私の国では戦争は放棄されていて平和…等と簡単に説明する。
「すげぇなぁ、その世界。」
「長官、セクハラです。」
「感心したから!?」
「の?の?凄いじゃろ?」
「そんな世界があるんだな…」
思ったとおり、口々に感嘆の声があがった。
只、一人を除いて。
忍はチラ…とルッチへ目線をむけた。
深く闇の広がる瞳と目があってしまう。
その瞳がありありと、(俺は信じていない)と物語っている。
「おい、忍。」
『…!は、なんでしょう?』
と、急にスパンダムから声が掛かり、その飲み込まれそうな瞳から無理矢理目を逸らした。
「お前、これからどうすんだ?CP9を知ってる以上、野放しにはしておけん。ここで暮らすか?」
問われたことは、CP9の長官としての責任のある問だった。
正直、この男がこれほどちゃんと対処してくるとは思わなかった。
「ワシとしては居てほしいのぉ。」
寂しげにカクがポツリと言う。
ここは、彼に便乗しておこう。
自分よりはるかに強い相手ばかりの、全く知らない世界で生きて行ける気はしない。
『俺は…ここに居たいです。』
なるべく弱々しく伝えると、スパンダムは頷いた。
「そうか。ならお前、何ができる?」
何ができる……か。
長官のその問いに、今までになく困った。俺がしてきたこと…
(…殺し…)
それしか思いつかない自分に嫌気がさす。
せっかく……俺のことを、俺の一族のことを知らない世界に来たのに?
やることは変わらないのか。あれほど望んだ別世界なのに。
(そんなの、嫌だ)
強く心の中で、否定の感情がうかぶ。
違う人生を歩んでみたい。
決して、今まで奪った命から逃げるわけじゃない。
ただ少しだけ……常人の生を歩みたい。それだけだ。
『家事全般…?』
その想いから、できるか分からない事が口をついて出た。
身の回りのことなど、やったことは一度たりとてないのに。なんとかなるだろうか。
「ん、じゃあ今日からそれがお前の仕事な!!分かんないことはジャンジャン聞けよ!」
しかし、スパンダムがそんな嘘に気づくはずもなく、あっさりと了承される。
多少ちゃんと出来るのか疑ってもいいと思うのだが…やはり、やや責任能力にかける長官だ。
「あと、一応警戒のためにお前はルッチの部屋で過ごしてもらう。」
しかし、彼の中でその問題は既に解決しているため彼が次に命令してきたことは、前と違う話題だった。
その命令に、思わず忍は目を見開く。
『ま、マジですか…』
ルッチに視線を寄越せば、先程より何倍も眉間のシワが濃くなっている。
嫌だとありありと態度に出ていて、そんなのこちらもだ、と言いたくなる。
「え~長官~ワシの部屋が良かったのぉ。」
ぶーぶーと、口を尖らせて言ったカクの子供らしい我儘が今は救いの手に見える。
ここでルッチも嫌がってくれれば、カクの部屋に移動になるだろう。その方が精神的に楽なので有難いのだが…と忍はルッチの顔色を伺った。
おそらく、あれ程態度に出ていたのだ。否定してくれるはず…と思ったのも束の間、驚くことにルッチはこう言い放った。
「…お前じゃ勤まらん。」
「なんじゃと!」
なんと、暗にルッチは忍を受け入れると言い放ったのだ。
これには、彼女も驚きそして落胆した。
彼の部屋で、肩身を狭くして暮らす日々がありありと頭に浮かぶ。
そんな忍を他所に、ルッチとカクは些細な言い合いを勃発させていた。
このまま続けば喧嘩になるであろう。放っておいてよいものか。
しかし、止めようとすれば自分が怪我をする。これは確実だ。
結果、誰かが止めるのを待とうという結論に勝手にいたった忍の元へ、スタスタとフクロウが歩み寄ってきた。
「チャパー。俺を殴れチャパー。」
てっきり、二人の喧嘩を止めるのかと思いきや、随分と変態のようなことを言いだしてきて、拍子抜けする。
数秒後に、漫画でやっていたことをされようとしていると気付いた。
遊戯『手合わせ』だったろうか。
「…忍、やれ。」
興味をそそられたのか、二人の口喧嘩はおさまっていた。
こうなれば、やるしかあるまい。
命令口調なルッチに言われ、渋々と、忍は腕を軽くまわしストレッチする。
『ぬぉら!!』
ドカーン!!
「チャパー。150道力チャパー。」
なかなか派手な音でフクロウが殴られたあと、彼が告げた道力は驚く数値だった。
「ひゃ、150…?一般人が…か?」
机に手をつき、身を乗り出してスパンダムが驚く。
それはそうだ。確か武器をもった海兵一人分を10道力…とした気がする。
(やりすぎたな。確実に。)
何が家事全般だ。おそらく、今のでここでの俺の立ち位置は決まった。
「ほぉ、主それなりに強いのぉ。六式をマスター出来そうじゃ。」
「やってみる価値はありそうだ。…長官。」
ほら、な。
忍は、心の中で項垂れた。
常人より、強いことがバレてしまった。これでまた……同じことをせねばならなくなる。
嗚呼、やはり罪だったのだろうか。
今まで殺めた命から逃げ、殺し屋を辞めることが。それほど罪だったのだろうか。
「ああ。忍、お前明日から手の空いてるCP9に訓練してもらえ。仕事はひとまずいいや。」
『ええ~…』
一応軽く嫌がる素振りを見せてみるものの、無駄であろう。
それでも一応、建前上やっておこうと忍は思う。
自分の過去をばらすつもりはない。全く。
何があっても隠し通したい。
だから…
「文句があるなら殺してやるが?」
『全くありません!嬉しいっす!!』
ルッチに一睨みされ、一瞬で嬉しそうな顔に変えた。
だから……
(一般人を装おう。)
聞かれたくない過去に、暴かれたくない記憶に蓋をするために。
演技力には自信があった、暗殺業の1つだから。
ヘラヘラと喋り、ヘラヘラと笑おう。きっと誤魔化せる。
「よし。じゃあお前らもう行っていいぞ。」
「忍ー!後でワシの部屋に遊びに来るんじゃ!!」
彼女がひっそりと覚悟する中、カクが脳天気に腕を上に広げ喜んでいる。
あまりにも殺し屋に不似合いなそのポーズに、不覚にも少し心が温かくなる。
(まあ、楽しい日々になりそう……かな)
すくなくとも、前の世界よりはずっと。
「私の所にもね。あなた、気に入ったわ♪」
どうやら、カリファにも好かれたようだ。
『おお、有難うございます!!』
「何じゃ、敬語は止めんか。堅苦しいのぉ。ワシのことはカクでいいわい。」
「私のこともカリファと呼んで頂戴。」
『あ、はい…じゃねぇや、うん。』
少し馴染み始めてきた感触を掴めた会話にホッとしたのも束の間、鋭い声がとぶ。
「おい、早く来い。殺すぞ。」
ドアの所でルッチが睨んでいた。
猫らしい、自由気ままな彼の行動にこの先ついていけるか不安で仕方ない。
『ごめんなさいぃ!じゃあ、カリファ、カク、後でな!』
ともかく、機嫌を損ねないよう勢い良く謝り、二人に手を振った。
「ええ。」
「楽しみにしとるからのぉ!」
カクがあの綺麗な手で、軽やかにノックする。
『あ、カリファ…さん。』
扉を開けると、綺麗な女性が振り向くのが見えた。
一瞬で誰なのか分かり、つい名を呼んでしまう。
カリファは、物珍しそうに眼鏡をクイッと上げながら、上から下まで舐めるように忍を観察した。
その目の怖いことと言ったら。
ルッチとはまた異質の怖さだ。女性特有のものだろう。
「お!お前が例の奴か。ほら、とりあえず入れ!」
その奥で、例の長官……スパンダムは座っていた。
豪華なデスクに立派な椅子。
彼の七光り度を顕著に表している。
その彼は、山積みになった書類を端に寄せ、ニヤニヤと笑みを浮かべ座っていた。
明らかに、忍に興味があって仕方がないといった様子だ。
ついてこい、とカクに顎で示され忍は机の前まで歩み寄った。
「お前、色々面白い奴だよな。よりによってルッチのベッドにいるとはな~」
本当に興味深そうに、上から下まで眺められる。それほど眺められても、自分はただの寝間着姿。
これといって変なところは無いはずだが。
「長官、どうやら忍はほんまに違う世界から来たようじゃぞ。」
忍が、冷ややかな冷たい目でスパンダムを睨む中、さっさとカクは説明を始めていた。
「一般人が知り得ない情報も知っていた。」
ジャブラも、補足するように口を挟む。
カクとジャブラがの追加報告が終わると、長官はますます目を輝かせ、「じゃあ、お前の世界のことを色々話してくれ!」と言ってきた。
ルッチとカリファからの威圧もあり、悪魔の実とかいうものはなかったり、海賊もほとんどいなかったり、私の国では戦争は放棄されていて平和…等と簡単に説明する。
「すげぇなぁ、その世界。」
「長官、セクハラです。」
「感心したから!?」
「の?の?凄いじゃろ?」
「そんな世界があるんだな…」
思ったとおり、口々に感嘆の声があがった。
只、一人を除いて。
忍はチラ…とルッチへ目線をむけた。
深く闇の広がる瞳と目があってしまう。
その瞳がありありと、(俺は信じていない)と物語っている。
「おい、忍。」
『…!は、なんでしょう?』
と、急にスパンダムから声が掛かり、その飲み込まれそうな瞳から無理矢理目を逸らした。
「お前、これからどうすんだ?CP9を知ってる以上、野放しにはしておけん。ここで暮らすか?」
問われたことは、CP9の長官としての責任のある問だった。
正直、この男がこれほどちゃんと対処してくるとは思わなかった。
「ワシとしては居てほしいのぉ。」
寂しげにカクがポツリと言う。
ここは、彼に便乗しておこう。
自分よりはるかに強い相手ばかりの、全く知らない世界で生きて行ける気はしない。
『俺は…ここに居たいです。』
なるべく弱々しく伝えると、スパンダムは頷いた。
「そうか。ならお前、何ができる?」
何ができる……か。
長官のその問いに、今までになく困った。俺がしてきたこと…
(…殺し…)
それしか思いつかない自分に嫌気がさす。
せっかく……俺のことを、俺の一族のことを知らない世界に来たのに?
やることは変わらないのか。あれほど望んだ別世界なのに。
(そんなの、嫌だ)
強く心の中で、否定の感情がうかぶ。
違う人生を歩んでみたい。
決して、今まで奪った命から逃げるわけじゃない。
ただ少しだけ……常人の生を歩みたい。それだけだ。
『家事全般…?』
その想いから、できるか分からない事が口をついて出た。
身の回りのことなど、やったことは一度たりとてないのに。なんとかなるだろうか。
「ん、じゃあ今日からそれがお前の仕事な!!分かんないことはジャンジャン聞けよ!」
しかし、スパンダムがそんな嘘に気づくはずもなく、あっさりと了承される。
多少ちゃんと出来るのか疑ってもいいと思うのだが…やはり、やや責任能力にかける長官だ。
「あと、一応警戒のためにお前はルッチの部屋で過ごしてもらう。」
しかし、彼の中でその問題は既に解決しているため彼が次に命令してきたことは、前と違う話題だった。
その命令に、思わず忍は目を見開く。
『ま、マジですか…』
ルッチに視線を寄越せば、先程より何倍も眉間のシワが濃くなっている。
嫌だとありありと態度に出ていて、そんなのこちらもだ、と言いたくなる。
「え~長官~ワシの部屋が良かったのぉ。」
ぶーぶーと、口を尖らせて言ったカクの子供らしい我儘が今は救いの手に見える。
ここでルッチも嫌がってくれれば、カクの部屋に移動になるだろう。その方が精神的に楽なので有難いのだが…と忍はルッチの顔色を伺った。
おそらく、あれ程態度に出ていたのだ。否定してくれるはず…と思ったのも束の間、驚くことにルッチはこう言い放った。
「…お前じゃ勤まらん。」
「なんじゃと!」
なんと、暗にルッチは忍を受け入れると言い放ったのだ。
これには、彼女も驚きそして落胆した。
彼の部屋で、肩身を狭くして暮らす日々がありありと頭に浮かぶ。
そんな忍を他所に、ルッチとカクは些細な言い合いを勃発させていた。
このまま続けば喧嘩になるであろう。放っておいてよいものか。
しかし、止めようとすれば自分が怪我をする。これは確実だ。
結果、誰かが止めるのを待とうという結論に勝手にいたった忍の元へ、スタスタとフクロウが歩み寄ってきた。
「チャパー。俺を殴れチャパー。」
てっきり、二人の喧嘩を止めるのかと思いきや、随分と変態のようなことを言いだしてきて、拍子抜けする。
数秒後に、漫画でやっていたことをされようとしていると気付いた。
遊戯『手合わせ』だったろうか。
「…忍、やれ。」
興味をそそられたのか、二人の口喧嘩はおさまっていた。
こうなれば、やるしかあるまい。
命令口調なルッチに言われ、渋々と、忍は腕を軽くまわしストレッチする。
『ぬぉら!!』
ドカーン!!
「チャパー。150道力チャパー。」
なかなか派手な音でフクロウが殴られたあと、彼が告げた道力は驚く数値だった。
「ひゃ、150…?一般人が…か?」
机に手をつき、身を乗り出してスパンダムが驚く。
それはそうだ。確か武器をもった海兵一人分を10道力…とした気がする。
(やりすぎたな。確実に。)
何が家事全般だ。おそらく、今のでここでの俺の立ち位置は決まった。
「ほぉ、主それなりに強いのぉ。六式をマスター出来そうじゃ。」
「やってみる価値はありそうだ。…長官。」
ほら、な。
忍は、心の中で項垂れた。
常人より、強いことがバレてしまった。これでまた……同じことをせねばならなくなる。
嗚呼、やはり罪だったのだろうか。
今まで殺めた命から逃げ、殺し屋を辞めることが。それほど罪だったのだろうか。
「ああ。忍、お前明日から手の空いてるCP9に訓練してもらえ。仕事はひとまずいいや。」
『ええ~…』
一応軽く嫌がる素振りを見せてみるものの、無駄であろう。
それでも一応、建前上やっておこうと忍は思う。
自分の過去をばらすつもりはない。全く。
何があっても隠し通したい。
だから…
「文句があるなら殺してやるが?」
『全くありません!嬉しいっす!!』
ルッチに一睨みされ、一瞬で嬉しそうな顔に変えた。
だから……
(一般人を装おう。)
聞かれたくない過去に、暴かれたくない記憶に蓋をするために。
演技力には自信があった、暗殺業の1つだから。
ヘラヘラと喋り、ヘラヘラと笑おう。きっと誤魔化せる。
「よし。じゃあお前らもう行っていいぞ。」
「忍ー!後でワシの部屋に遊びに来るんじゃ!!」
彼女がひっそりと覚悟する中、カクが脳天気に腕を上に広げ喜んでいる。
あまりにも殺し屋に不似合いなそのポーズに、不覚にも少し心が温かくなる。
(まあ、楽しい日々になりそう……かな)
すくなくとも、前の世界よりはずっと。
「私の所にもね。あなた、気に入ったわ♪」
どうやら、カリファにも好かれたようだ。
『おお、有難うございます!!』
「何じゃ、敬語は止めんか。堅苦しいのぉ。ワシのことはカクでいいわい。」
「私のこともカリファと呼んで頂戴。」
『あ、はい…じゃねぇや、うん。』
少し馴染み始めてきた感触を掴めた会話にホッとしたのも束の間、鋭い声がとぶ。
「おい、早く来い。殺すぞ。」
ドアの所でルッチが睨んでいた。
猫らしい、自由気ままな彼の行動にこの先ついていけるか不安で仕方ない。
『ごめんなさいぃ!じゃあ、カリファ、カク、後でな!』
ともかく、機嫌を損ねないよう勢い良く謝り、二人に手を振った。
「ええ。」
「楽しみにしとるからのぉ!」