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日記(名前変換なし)

猫と戯れ

2020/07/27 09:33
後輩女子×蓮二
2019/10/02
追記
「む。蓮二、その首の傷はどうした」
「首?」
 放課後、部活が始まる前。部室で着替える柳の耳の下あたり、紫色の痣が見えた。ぽつぽつと、何かを刺したような小さな痣。うっすら擦過傷もあるようだ。柳は真田の視線を追い、首筋に触れ。ああ、と合点したように呟いた。
「飼い猫に引っ掻かれた。抱き上げた際、ちょっとな」
「珍しいな。あの大人しい猫ちゃんが」
「ふ、そうだな」
 柳は微笑んで着替えを再開する。本人が気にしていないなら、大した怪我ではないんだろう。着替えを終えた真田が、先に行くぞ、と声を掛けて部室から出る。
「うわっ」
 扉を開けた先でぶつかりそうになったのは、一人の女子生徒だった。真田を見上げて驚いた様子を見せつつ、立ち去ろうとはしない。
「……部員の誰かに用か」
「あ、れん、柳先輩にちょっと」
「蓮二は着替え中だ、外で待っていろ」
「あー、はい、どうも」
 気まずそうに目をそらす女子生徒。胸の前でもじもじと手を組んでいる。ふと、綺麗に伸ばされた爪のうち、人差し指の爪だけが歪に折れているのが目に入る。深爪のようで痛々しい。
「怪我をしているのか」
 真田の声量に肩を揺らした彼女が、何かを言うより早く、再び部室の扉が開く。
「××」
「あ、蓮二。絆創膏」
「ありがとう。弦一郎、彼女と少し話してから行く」
「む、」
 真田が、何かを言いたそうに眉を寄せる。しかし部活開始まではまだ時間がある。結局、咎める理由もなく、小さく頷く。
「……。遅れるなよ」
「問題ない」
 柳が、分かっている、というように微笑む。
 柳が屈み、女子生徒が柳の首筋に触れる。二人で話し始めてしまったので、用のなくなった真田は一人コートへ向かう。顔を見たことがないあの女子生徒は、恐らく下級生だ。知り合いなんだろうが、柳に何の用だったんだろう。そして、話が遮られたが、怪我は大丈夫なのだろうか。
 ふと引っ掛かりを感じる。彼女が言った、絆創膏と言う言葉。それがいるのは彼女の方ではないのか。柳の怪我は飼い猫によると言っていた、部室までわざわざ、彼女が絆創膏を持ってくるのは不自然に感じる。
(……。まあ、俺には関係がないことだ)
 詮索は良くない。真田は一人首を振り、小さな違和感を散らすように、テニスコートへ入る。

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