ほぼネームレス小説ですが、たまに名前を呼んでもらえます
短編夢
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青学テニス部マネージャーは多忙である。青学は選手層が厚い強豪校として知られるが、お世話する選手が多ければマネのお仕事も多くなるのだ。無情。
今日も早い時間からコートの準備だ。倉庫からネットとボール籠を出す。倉庫のほこりっぽさにはなかなか慣れなかったが、3年も使っていると愛着が沸くから不思議だ。備品を運搬用カートに乗せ、乗り切らなかったネットを小脇にかかえて歩いていると、小柄な影が走ってくる。
「駒井先輩、おつかれっす!」
高い声で舌足らずな挨拶をくれるのは、今春に入部した一年生だ。
「堀尾くん、今日も早いね」
「いやー、駒井先輩より早く来たかったんすけど、今日も負けちゃいました。準備手伝います」
言いながら、私の手からネットを奪う。私は片手で持てるけど、小柄な堀尾くんは両腕で抱える格好になる。
堀尾くんは基礎トレと球拾いしかさせてくれない部活に文句を言いつつ、なんだかんだ楽しそうに活動している。毎日、部活の準備をすすんで手伝うくらいには。
「こんなに重いのに、先輩一人に任せられませんよ」
にこ、と、歯をむき出しの笑顔は多分精一杯のかっこつけなんだろう。かわいい。
二人で並んでコートに向かう間、堀尾くんは嬉しそうに自慢話をする。
「毎晩、部活のあとも筋トレしてるんすよ。腕立ては100回。パワーついてきたっす」
「すごーい」
「レギュラーも夢じゃないかも!」
「良いねえ」
備品をコートに広げていると、一年トリオの勝郎くんとカツオくんが駆けてくる。堀尾くん!先行かないでよ!落ちてた靴下片づけといたよ!わり、急いでてさあ!もう荒井先輩ににらまれるの嫌だからね!私は一瞬で蚊帳の外だ。一年生同士の遠慮のないやりとりは、ピーチクパーチクと小鳥のようで微笑ましい。幼いこの子たちも、いつの日かレギュラーになるんだろうし、近いうちに練習試合くらいは出るかもしれない。すごい。
「堀尾くんがレギュラーになったら、もう部活の準備なんて手伝ってくれないかもね」
「え?」
「ん、どうしたの?」
軽口をやめた堀尾くんが私に向き直る。声変わりしていない声をうわずらせて。
「あの、駒井先輩は、俺がレギュラー獲れるって思いますか」
「獲るんでしょ。応援してるよ」
堀尾くんは私の返事に「わあ……」と感嘆の声を漏らした。お手本のように素直な反応。堀尾くんの目はキラキラ輝いていて、……ふと普段の彼の扱いを思い出す。先輩にはいびられ同級生にはスルーされるお調子者の彼。現に、勝郎くんとカツオくんは堀尾くんに白い目を向けている。あまり気にしていないように見えるが、自信家の堀尾くんにとって普段の境遇は不満だったのかもしれない。
私の何気ない応援をこんなに喜んでくれるなんて。ちょっと、いや、かなりまんざらでもないかも。
「え……へへ。駒井先輩のためにがんばるっす!」
「私が引退する前によろしくね」
「余裕っすよお!」
「「また堀尾くん……」」
自信家で、お調子者で、ちょっと不憫な堀尾くん。私くらいは彼の味方でいてあげようかな。
今日も早い時間からコートの準備だ。倉庫からネットとボール籠を出す。倉庫のほこりっぽさにはなかなか慣れなかったが、3年も使っていると愛着が沸くから不思議だ。備品を運搬用カートに乗せ、乗り切らなかったネットを小脇にかかえて歩いていると、小柄な影が走ってくる。
「駒井先輩、おつかれっす!」
高い声で舌足らずな挨拶をくれるのは、今春に入部した一年生だ。
「堀尾くん、今日も早いね」
「いやー、駒井先輩より早く来たかったんすけど、今日も負けちゃいました。準備手伝います」
言いながら、私の手からネットを奪う。私は片手で持てるけど、小柄な堀尾くんは両腕で抱える格好になる。
堀尾くんは基礎トレと球拾いしかさせてくれない部活に文句を言いつつ、なんだかんだ楽しそうに活動している。毎日、部活の準備をすすんで手伝うくらいには。
「こんなに重いのに、先輩一人に任せられませんよ」
にこ、と、歯をむき出しの笑顔は多分精一杯のかっこつけなんだろう。かわいい。
二人で並んでコートに向かう間、堀尾くんは嬉しそうに自慢話をする。
「毎晩、部活のあとも筋トレしてるんすよ。腕立ては100回。パワーついてきたっす」
「すごーい」
「レギュラーも夢じゃないかも!」
「良いねえ」
備品をコートに広げていると、一年トリオの勝郎くんとカツオくんが駆けてくる。堀尾くん!先行かないでよ!落ちてた靴下片づけといたよ!わり、急いでてさあ!もう荒井先輩ににらまれるの嫌だからね!私は一瞬で蚊帳の外だ。一年生同士の遠慮のないやりとりは、ピーチクパーチクと小鳥のようで微笑ましい。幼いこの子たちも、いつの日かレギュラーになるんだろうし、近いうちに練習試合くらいは出るかもしれない。すごい。
「堀尾くんがレギュラーになったら、もう部活の準備なんて手伝ってくれないかもね」
「え?」
「ん、どうしたの?」
軽口をやめた堀尾くんが私に向き直る。声変わりしていない声をうわずらせて。
「あの、駒井先輩は、俺がレギュラー獲れるって思いますか」
「獲るんでしょ。応援してるよ」
堀尾くんは私の返事に「わあ……」と感嘆の声を漏らした。お手本のように素直な反応。堀尾くんの目はキラキラ輝いていて、……ふと普段の彼の扱いを思い出す。先輩にはいびられ同級生にはスルーされるお調子者の彼。現に、勝郎くんとカツオくんは堀尾くんに白い目を向けている。あまり気にしていないように見えるが、自信家の堀尾くんにとって普段の境遇は不満だったのかもしれない。
私の何気ない応援をこんなに喜んでくれるなんて。ちょっと、いや、かなりまんざらでもないかも。
「え……へへ。駒井先輩のためにがんばるっす!」
「私が引退する前によろしくね」
「余裕っすよお!」
「「また堀尾くん……」」
自信家で、お調子者で、ちょっと不憫な堀尾くん。私くらいは彼の味方でいてあげようかな。
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