ほぼネームレス小説ですが、たまに名前を呼んでもらえます
短編夢
name change
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朝練に向かう早朝のバス。人でいっぱいになることはないけれど、念のため鞄で隣の席をキープするのは、朝が弱い後輩を座らせてやるためだ。
俺がバスに乗ってから10分ほどの住宅街で、切原赤也はいつも目をこすりながら乗ってくる。
「駒井せんぱあい。おはよーっす」
「おはよう赤也。ボタンずれてるぞ」
「いーすよお、着いたらすぐ着替えんだし」
赤也は覇気がない返事をしながら、ラケバを網棚にあげ、空けておいた俺の隣に座る。二人掛けの椅子は、男子二人が座るには若干狭いんだけれど、赤也にとっては座ってさっさと寝られることが最優先らしい。
起こしてくださいね、の一言もなく、赤也は目を閉じる。肩がぴったりとくっつく距離で、一瞬で寝息を立てる遠慮のなさに苦笑する。
こいつは最初から「こう」だった。春先にはバスで会っても挨拶すらなかったのに、他に空席がない日、急に人なつっこく「先輩!」って笑顔で隣に座ってきた。そういう日が何日か続いた頃「先輩って名前何っすか」なんてしれっと聞いてきた。今かよ。せめて初日に聞け。俺に起こしてもらえることを学んでからは隣を狙って座ってくるようになったし、慣れると後輩として媚を売ることすらしなくなってきた。
良く言えば距離を縮めるのが上手く、悪く言えば不遜な奴である。
ブレーキのたび危なっかしくガクガク揺れる赤也を支える。抱き寄せた肩は、制服で隠れているけれど筋肉質。レギュラーになれない俺なんかより、しっかりがっしりとした腕だ。
だけどすうすうと俺にかかる寝息は熱いくらいで、子供体温なんだな、って微笑ましくなる。柔らかい猫っ毛は清潔な石鹸の香り。すぐ朝練で汗臭くなるので、知っているのは俺だけだと思う。そんな風に可愛げがあるから、この不遜な後輩をなんだか憎めないのだ。
「着くぞ」
バス停前の曲がり角で声を掛ける。赤也は掠れた声であーとかうーとか言いながら起き上がる。俺の腕をどける赤也の手は熱く、寝起きの顔は茹だっている。そりゃ、こんだけくっついて寝てたら暑いよな。つい吹き出すと、赤也がキッとこちらを睨む。
「……先輩、サイテー」
「は? 起こしてやったろが」
赤也は俺を無視してさっさとバスを降りていく。耳どころか首まで赤いのが、後ろ姿でも分かる。この短時間で機嫌が悪くなるような夢でも見たんだろうか。ほんとにガキだよな。
今日の朝練は荒れるかな、なんて思いながら、可愛い後輩の後を追う。
俺がバスに乗ってから10分ほどの住宅街で、切原赤也はいつも目をこすりながら乗ってくる。
「駒井せんぱあい。おはよーっす」
「おはよう赤也。ボタンずれてるぞ」
「いーすよお、着いたらすぐ着替えんだし」
赤也は覇気がない返事をしながら、ラケバを網棚にあげ、空けておいた俺の隣に座る。二人掛けの椅子は、男子二人が座るには若干狭いんだけれど、赤也にとっては座ってさっさと寝られることが最優先らしい。
起こしてくださいね、の一言もなく、赤也は目を閉じる。肩がぴったりとくっつく距離で、一瞬で寝息を立てる遠慮のなさに苦笑する。
こいつは最初から「こう」だった。春先にはバスで会っても挨拶すらなかったのに、他に空席がない日、急に人なつっこく「先輩!」って笑顔で隣に座ってきた。そういう日が何日か続いた頃「先輩って名前何っすか」なんてしれっと聞いてきた。今かよ。せめて初日に聞け。俺に起こしてもらえることを学んでからは隣を狙って座ってくるようになったし、慣れると後輩として媚を売ることすらしなくなってきた。
良く言えば距離を縮めるのが上手く、悪く言えば不遜な奴である。
ブレーキのたび危なっかしくガクガク揺れる赤也を支える。抱き寄せた肩は、制服で隠れているけれど筋肉質。レギュラーになれない俺なんかより、しっかりがっしりとした腕だ。
だけどすうすうと俺にかかる寝息は熱いくらいで、子供体温なんだな、って微笑ましくなる。柔らかい猫っ毛は清潔な石鹸の香り。すぐ朝練で汗臭くなるので、知っているのは俺だけだと思う。そんな風に可愛げがあるから、この不遜な後輩をなんだか憎めないのだ。
「着くぞ」
バス停前の曲がり角で声を掛ける。赤也は掠れた声であーとかうーとか言いながら起き上がる。俺の腕をどける赤也の手は熱く、寝起きの顔は茹だっている。そりゃ、こんだけくっついて寝てたら暑いよな。つい吹き出すと、赤也がキッとこちらを睨む。
「……先輩、サイテー」
「は? 起こしてやったろが」
赤也は俺を無視してさっさとバスを降りていく。耳どころか首まで赤いのが、後ろ姿でも分かる。この短時間で機嫌が悪くなるような夢でも見たんだろうか。ほんとにガキだよな。
今日の朝練は荒れるかな、なんて思いながら、可愛い後輩の後を追う。