ほぼネームレス小説ですが、たまに名前を呼んでもらえます
短編夢
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「駒井、待たんか」
びりびりと空気が震えるほどの大声が背後から飛んでくる。ああ、面倒なのに見つかった。うんざりしながら振り返る。
予鈴が鳴り、多くの生徒は教室に戻った時間帯。始業に遅れまいと慌てて移動する生徒もちらほら。そんな廊下で一人教室と反対方向に歩いていた私をわざわざ追ってきた人がいる。
実直で、おせっかいで、物好きで、ちょっとうざいクラスメイト。
「真田」
「授業が始まるぞ。どこへ行こうと言うのだ」
ちょっとムスカっぽい。茶化しが通じる相手でもないので、野暮な突っ込みはそっと飲み込む。
「別に。トイレかな~」
「その先は特別教室棟だろう」
「お気にの便器でしか用を足せないの」
「くだらん。授業に遅れる。戻れと言っているんだ」
優等生様は下ネタに引いてくれるかと思ったけど、気にしていない様子だ。なんて頑固……いや、信念が強いんだろう。いよいよ面倒くさい。私は人のいない場所で優雅にお昼寝したいだけなのに。
はあ、と溜め息をつき、真田に向き直る。吊り上がった眉は威圧的。組んだ腕はムチムチと太く、長い脚はなんとも頼りがいがある。力づくで押し通せる相手じゃない。
うーん、どうしたものか。私は顎に手をあて、わざとらしく首を傾げる。
「真田くんは、どうして私に構うの? 不良クラスメイトなんて、放っておけばいいじゃない」
「時間通りに授業を受けるなど最低限のルールだろう。風紀委員として規則を破る者は見逃せん」
「ふーん、"ルール"ね」
いっそ相手の土俵に乗るのもアリかな。に、と笑い、真田に一歩近付く。急に距離を詰められた真田は驚いたようで、逃げることなく私を見下ろす。
間合いを詰めた時点で私の勝ちだ。乾燥でひび割れた真田の唇に、人差し指を押し当てる。びく、と真田が身構えるけれど、私を突き放すことはしない。
「ねえ、私たちもルール作ろっか。真田が私を連れ戻せたら、ちゅーしてあげる」
「な、」
にを、と言葉を詰まらせる真田。固まっている真田から離れて、足取り軽く階段を上る。真田は私を呼び止めようとして、逡巡して、結局その場から一歩も動かなかった。階段の踊り場でその一部始終を見てから、真田にダメ押しのウインクを投げる。真っ赤になる真田。怒鳴られる前に、さっさと階段を駆け上がる。
あーちょろいわ。後で怒られるかもだけど、このネタでしばらくは躱せるだろう。勝利のチャイムを一身に受けながら、大きく伸びをする。
びりびりと空気が震えるほどの大声が背後から飛んでくる。ああ、面倒なのに見つかった。うんざりしながら振り返る。
予鈴が鳴り、多くの生徒は教室に戻った時間帯。始業に遅れまいと慌てて移動する生徒もちらほら。そんな廊下で一人教室と反対方向に歩いていた私をわざわざ追ってきた人がいる。
実直で、おせっかいで、物好きで、ちょっとうざいクラスメイト。
「真田」
「授業が始まるぞ。どこへ行こうと言うのだ」
ちょっとムスカっぽい。茶化しが通じる相手でもないので、野暮な突っ込みはそっと飲み込む。
「別に。トイレかな~」
「その先は特別教室棟だろう」
「お気にの便器でしか用を足せないの」
「くだらん。授業に遅れる。戻れと言っているんだ」
優等生様は下ネタに引いてくれるかと思ったけど、気にしていない様子だ。なんて頑固……いや、信念が強いんだろう。いよいよ面倒くさい。私は人のいない場所で優雅にお昼寝したいだけなのに。
はあ、と溜め息をつき、真田に向き直る。吊り上がった眉は威圧的。組んだ腕はムチムチと太く、長い脚はなんとも頼りがいがある。力づくで押し通せる相手じゃない。
うーん、どうしたものか。私は顎に手をあて、わざとらしく首を傾げる。
「真田くんは、どうして私に構うの? 不良クラスメイトなんて、放っておけばいいじゃない」
「時間通りに授業を受けるなど最低限のルールだろう。風紀委員として規則を破る者は見逃せん」
「ふーん、"ルール"ね」
いっそ相手の土俵に乗るのもアリかな。に、と笑い、真田に一歩近付く。急に距離を詰められた真田は驚いたようで、逃げることなく私を見下ろす。
間合いを詰めた時点で私の勝ちだ。乾燥でひび割れた真田の唇に、人差し指を押し当てる。びく、と真田が身構えるけれど、私を突き放すことはしない。
「ねえ、私たちもルール作ろっか。真田が私を連れ戻せたら、ちゅーしてあげる」
「な、」
にを、と言葉を詰まらせる真田。固まっている真田から離れて、足取り軽く階段を上る。真田は私を呼び止めようとして、逡巡して、結局その場から一歩も動かなかった。階段の踊り場でその一部始終を見てから、真田にダメ押しのウインクを投げる。真っ赤になる真田。怒鳴られる前に、さっさと階段を駆け上がる。
あーちょろいわ。後で怒られるかもだけど、このネタでしばらくは躱せるだろう。勝利のチャイムを一身に受けながら、大きく伸びをする。