ほぼネームレス小説ですが、たまに名前を呼んでもらえます
短編夢
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深夜徘徊する子どもは不良だなんて誰が言ったんだろう。嫌なことがあるなら相談しなさいとか、早く寝なさいとかほんと無神経。話すだけで苦痛なことがある。寝られないくらい不安な夜がある。夜の町は危険だなんていうけれど、家で一人死にそうになるより遥かに安全だと思う。
片側一車線の寂れた町道を歩き、錆びた橋を渡り、雑草が茂った公園に入る。空を仰ぎ息をつく。夏の夜は暖かくて過ごしやすいが、今日のような気分だと、冬のツンとくる寒さが恋しくなる。
なんてことない喧嘩だった。友達はある男の子が好き。男の子はどうやら私のことが好き(らしい)。心当たりは全くない。きっと友達の勘違いだけど、彼女の中ではすっかり私が悪者になっている。全部友達の一人相撲で、私にできることは何もない。ただ、謂れのない悪意を受け続けるのは、叫びたくなるほど苦しい。
本当に叫んでしまおうか。息を吸おうとして、背後から口を塞がれる。急なことに喉が引きつり息ができない。私の胴体に腕が回り、拘束され、つま先が地面から浮く。
頭が真っ白になる。何これ。考える前に、体が地面に投げ出され、頬と腕を砂利に擦る。
慌てて振り返ると、すぐ背後に男が蹲っておりゾッとする。また、もう一人、公園の入り口に誰かが立っている。
ピンと伸びた背筋と、制服と、握られたテニスラケット。その立ち姿には覚えがある。
「てめっ、何をした」
「暗くてよく見えませんでしたが、打った手ごたえからして石でしょうね。お怪我をしていたらすみません」
制服の男――クラスメイトの柳生くんが、良く通る声で不審者を煽る。不審者はよろけながら、手近な枝を柳生くんに投げつける。あっと思ったが、柳生くんは涼しい顔で枝を弾く。不審者はそのすきに立ち上がり、林の中へと逃げて行く。
座り込んだままの私に、柳生くんが近付いてくる。私はその場から動けず、じっと柳生くんを見る。
私が悩んでいる原因。友達の思い人にして、その子いわく、私を好きらしい人。実際には話したこともない人。
「何で……いるの」
確か、彼は市外から通学していたはず。深夜をまわった時刻、学校からも自宅からも離れた公園に、制服姿でラケットバッグを担いで現れた彼は明らかに異常だ。
柳生くんは私とたっぷり見つめ合って、くすぐったそうにはにかむ。
「やっと振り向いてくれましたね」
片側一車線の寂れた町道を歩き、錆びた橋を渡り、雑草が茂った公園に入る。空を仰ぎ息をつく。夏の夜は暖かくて過ごしやすいが、今日のような気分だと、冬のツンとくる寒さが恋しくなる。
なんてことない喧嘩だった。友達はある男の子が好き。男の子はどうやら私のことが好き(らしい)。心当たりは全くない。きっと友達の勘違いだけど、彼女の中ではすっかり私が悪者になっている。全部友達の一人相撲で、私にできることは何もない。ただ、謂れのない悪意を受け続けるのは、叫びたくなるほど苦しい。
本当に叫んでしまおうか。息を吸おうとして、背後から口を塞がれる。急なことに喉が引きつり息ができない。私の胴体に腕が回り、拘束され、つま先が地面から浮く。
頭が真っ白になる。何これ。考える前に、体が地面に投げ出され、頬と腕を砂利に擦る。
慌てて振り返ると、すぐ背後に男が蹲っておりゾッとする。また、もう一人、公園の入り口に誰かが立っている。
ピンと伸びた背筋と、制服と、握られたテニスラケット。その立ち姿には覚えがある。
「てめっ、何をした」
「暗くてよく見えませんでしたが、打った手ごたえからして石でしょうね。お怪我をしていたらすみません」
制服の男――クラスメイトの柳生くんが、良く通る声で不審者を煽る。不審者はよろけながら、手近な枝を柳生くんに投げつける。あっと思ったが、柳生くんは涼しい顔で枝を弾く。不審者はそのすきに立ち上がり、林の中へと逃げて行く。
座り込んだままの私に、柳生くんが近付いてくる。私はその場から動けず、じっと柳生くんを見る。
私が悩んでいる原因。友達の思い人にして、その子いわく、私を好きらしい人。実際には話したこともない人。
「何で……いるの」
確か、彼は市外から通学していたはず。深夜をまわった時刻、学校からも自宅からも離れた公園に、制服姿でラケットバッグを担いで現れた彼は明らかに異常だ。
柳生くんは私とたっぷり見つめ合って、くすぐったそうにはにかむ。
「やっと振り向いてくれましたね」