こんにちはブラック本丸。私はただの迷子です。
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薬研は少女の後ろを付いて回っていた。意外にも、彼女は周りを警戒している様で、その足取りはゆっくりとしていたが、着実に前に進んでいた。
久しぶりに出た外は様変わりしていた。季節の香りはせず、埃の臭いがする。そして、濃い血の臭い。彼女は血の臭いが充満していた大広間にいたせいか、この異変に気付いていない様だ。
殆どは刀剣男子たちの流血による臭いだと思われるが、違う臭いも混ざっている。人間の血の臭いだ。
刀剣男子と人間の血の臭いは実は違う。人間にとったら同じ臭いかもしれないが、俺たちに取っちゃあ全然違う。人間の血は鉄分が多く含まれているせいか、鉄の臭いに近くて生臭い。けれど、俺たちの血は神仏に近いせいか鉄の臭いというよりも、花の様な匂いに近い。だから、大広間は俺たちに取っちゃあ、まだ外よりもマシだったんだが…。
思っていたよりも臭いが強過ぎる。
恐らく俺が眠っていた間に人間が紛れ込んだのかもしれない。そして、運悪く審神者と出逢ってしまったのだろう。可哀想に…。
今の審神者はもう人では無い。人としての理性は失われてしまっている。出会って仕舞えば喰われるか、運良く逃げ切れるかどうかだ。だとすれば、彼女は随分と運が良い。今の所、まだ審神者に見つかっておらず、五体満足、傷一つ無い。慎重に進んでいるからであろうか。
だが油断してはいけない。あれは今何処にいるのか分からない為、警戒していて損は無い。
油断大敵、そうだよな乱。
中門、舞台、楽屋を調べ終わり縁側を歩く。このまま進んでいけば執務室に行くな…。少女は角から顔を出して覗き込んでいる。誰もいなかったのか肩が少し下がっている。すると地面へと降り立ち、もう一度周りを見渡したかと思えば茶室の方へと向かって行った。茶室に行くのか?
茶室は池の近くにある。それ故か、彼女は池を覗き込んでいた。水が干上がってしまっていて生き物たちは全て死んでしまっている。桟橋も塗装が剥がれてしまっていた。眠る前はまだ水があったんだがなぁ…。そう思っていると彼女が茶室を調べ始めていた。
茶室か…。茶室といえば歌仙や鶯丸がよく茶を点てていたな。昔の記憶を脳から引き摺り出してくると、懐かしい幸せだった頃の思い出が蘇って来る。あの頃は、まだ審神者は正常だった。
フッと溜息をつく。どれだけ過去に想いを馳せても、あの頃はもう戻って来ないのだ。
彼女が茶室の縁側から中を覗いている。薬研も続いて覗き込む。茶釜も茶器も全て片付けられている室内は、何処か殺風景に感じる。だが、一つだけポツンと不自然にある物があった。
ありゃあ鶯丸じゃねぇか。
古備前の鶯丸。古備前派の刀である。名前と同じ鶯色の髪を持つ青年の付喪神で、無類の茶好き。よく大包平、大包平と言っていたが同郷の刀なのだろうか。時々、そこに大包平がいる様な錯覚を起こしてしまう。
しかしながら、見た目に反し現存している年月が俺よりも長く、確認されている刀剣男士たちの中でも年長組だろう。ある所によると自称じじいの三日月宗近よりも古いらしい。
彼女も鶯丸に気付いたのか近付いて持ち上げている。その側に薄らと見える誰かの影。黒のスラックスに白いベルト、鶯色の長手甲、右目を隠す鶯色の髪。
鶯丸だ。
「鶯丸?!」
久しぶりに見た仲間の姿にうっかり叫んでしまう薬研。その声に気付いたのか、鶯丸はゆっくりと彼女から此方に視線を寄越す。
「嗚呼、薬研か。久しぶりだな。」
相変わらずのんびりとした口調で返す鶯丸に、薬研はガックリと肩を落として溜息をつく。そうだ、こういう奴だった。
薬研は鶯丸に近付いた。鶯丸は薬研よりも負傷していない様で軽傷といったところだ。薬研は中傷の軽傷よりだが、まだ動ける。出来れば手入れを受けた方が良いのだが、この調子だと手入れ部屋までは、まだまだ先だろう。たとえ手入れ部屋まで行けたとしても、彼女が手入れ出来るかどうかは分からないが。
一応彼女には霊力がある。本人は気付いてない様だが、この本丸は瘴気に包まれている。ある程度の霊力が無ければ、数分で瘴気に体を蝕まれ、人ならざるものへと変貌していただろう。しかし、彼女は大広間での作業を行っていたことも考えると数十分は本丸に居る。何の変化も見られないので、どうやら彼女は相応の霊力を所持している様だ。何処となく瘴気も薄まっている様な気もする。
「薬研、この子は一体…?」
鶯丸がそう尋ねてくるが、俺もよく分からない。気付いたら玄関から入ってきて拾われた。何者なのか分からない。だが、悪い子ではなさそうだ。鶯丸もその事に気付いているのか、己の本体を自由に触らしている。
少女が鶯丸を少し脱刀した。俺の時と同様、綺麗…と呟きが聞こえる。
ひらりと誉桜が散る。
鶯丸もその呟きが聞こえていたのか口元が緩んでいる。どうやら嬉しかった様だ。
彼女は刀の状態を見たかったらしく、確認した後、直ぐに刀を納めた。両手で鶯丸を抱えている様子から、如何やら連れて行く様だ。鶯丸もその事に気付いているのか立ち上がった。
「如何やら俺も一緒の様だな。」
「そうみてぇだな。よろしく頼むぜ鶯丸。」
「嗚呼、よろしく頼む。」
動き出した少女の後ろを薬研と鶯丸は追う。
少女が気付かないまま、鶯丸が仲間になった。
久しぶりに出た外は様変わりしていた。季節の香りはせず、埃の臭いがする。そして、濃い血の臭い。彼女は血の臭いが充満していた大広間にいたせいか、この異変に気付いていない様だ。
殆どは刀剣男子たちの流血による臭いだと思われるが、違う臭いも混ざっている。人間の血の臭いだ。
刀剣男子と人間の血の臭いは実は違う。人間にとったら同じ臭いかもしれないが、俺たちに取っちゃあ全然違う。人間の血は鉄分が多く含まれているせいか、鉄の臭いに近くて生臭い。けれど、俺たちの血は神仏に近いせいか鉄の臭いというよりも、花の様な匂いに近い。だから、大広間は俺たちに取っちゃあ、まだ外よりもマシだったんだが…。
思っていたよりも臭いが強過ぎる。
恐らく俺が眠っていた間に人間が紛れ込んだのかもしれない。そして、運悪く審神者と出逢ってしまったのだろう。可哀想に…。
今の審神者はもう人では無い。人としての理性は失われてしまっている。出会って仕舞えば喰われるか、運良く逃げ切れるかどうかだ。だとすれば、彼女は随分と運が良い。今の所、まだ審神者に見つかっておらず、五体満足、傷一つ無い。慎重に進んでいるからであろうか。
だが油断してはいけない。あれは今何処にいるのか分からない為、警戒していて損は無い。
油断大敵、そうだよな乱。
中門、舞台、楽屋を調べ終わり縁側を歩く。このまま進んでいけば執務室に行くな…。少女は角から顔を出して覗き込んでいる。誰もいなかったのか肩が少し下がっている。すると地面へと降り立ち、もう一度周りを見渡したかと思えば茶室の方へと向かって行った。茶室に行くのか?
茶室は池の近くにある。それ故か、彼女は池を覗き込んでいた。水が干上がってしまっていて生き物たちは全て死んでしまっている。桟橋も塗装が剥がれてしまっていた。眠る前はまだ水があったんだがなぁ…。そう思っていると彼女が茶室を調べ始めていた。
茶室か…。茶室といえば歌仙や鶯丸がよく茶を点てていたな。昔の記憶を脳から引き摺り出してくると、懐かしい幸せだった頃の思い出が蘇って来る。あの頃は、まだ審神者は正常だった。
フッと溜息をつく。どれだけ過去に想いを馳せても、あの頃はもう戻って来ないのだ。
彼女が茶室の縁側から中を覗いている。薬研も続いて覗き込む。茶釜も茶器も全て片付けられている室内は、何処か殺風景に感じる。だが、一つだけポツンと不自然にある物があった。
ありゃあ鶯丸じゃねぇか。
古備前の鶯丸。古備前派の刀である。名前と同じ鶯色の髪を持つ青年の付喪神で、無類の茶好き。よく大包平、大包平と言っていたが同郷の刀なのだろうか。時々、そこに大包平がいる様な錯覚を起こしてしまう。
しかしながら、見た目に反し現存している年月が俺よりも長く、確認されている刀剣男士たちの中でも年長組だろう。ある所によると自称じじいの三日月宗近よりも古いらしい。
彼女も鶯丸に気付いたのか近付いて持ち上げている。その側に薄らと見える誰かの影。黒のスラックスに白いベルト、鶯色の長手甲、右目を隠す鶯色の髪。
鶯丸だ。
「鶯丸?!」
久しぶりに見た仲間の姿にうっかり叫んでしまう薬研。その声に気付いたのか、鶯丸はゆっくりと彼女から此方に視線を寄越す。
「嗚呼、薬研か。久しぶりだな。」
相変わらずのんびりとした口調で返す鶯丸に、薬研はガックリと肩を落として溜息をつく。そうだ、こういう奴だった。
薬研は鶯丸に近付いた。鶯丸は薬研よりも負傷していない様で軽傷といったところだ。薬研は中傷の軽傷よりだが、まだ動ける。出来れば手入れを受けた方が良いのだが、この調子だと手入れ部屋までは、まだまだ先だろう。たとえ手入れ部屋まで行けたとしても、彼女が手入れ出来るかどうかは分からないが。
一応彼女には霊力がある。本人は気付いてない様だが、この本丸は瘴気に包まれている。ある程度の霊力が無ければ、数分で瘴気に体を蝕まれ、人ならざるものへと変貌していただろう。しかし、彼女は大広間での作業を行っていたことも考えると数十分は本丸に居る。何の変化も見られないので、どうやら彼女は相応の霊力を所持している様だ。何処となく瘴気も薄まっている様な気もする。
「薬研、この子は一体…?」
鶯丸がそう尋ねてくるが、俺もよく分からない。気付いたら玄関から入ってきて拾われた。何者なのか分からない。だが、悪い子ではなさそうだ。鶯丸もその事に気付いているのか、己の本体を自由に触らしている。
少女が鶯丸を少し脱刀した。俺の時と同様、綺麗…と呟きが聞こえる。
ひらりと誉桜が散る。
鶯丸もその呟きが聞こえていたのか口元が緩んでいる。どうやら嬉しかった様だ。
彼女は刀の状態を見たかったらしく、確認した後、直ぐに刀を納めた。両手で鶯丸を抱えている様子から、如何やら連れて行く様だ。鶯丸もその事に気付いているのか立ち上がった。
「如何やら俺も一緒の様だな。」
「そうみてぇだな。よろしく頼むぜ鶯丸。」
「嗚呼、よろしく頼む。」
動き出した少女の後ろを薬研と鶯丸は追う。
少女が気付かないまま、鶯丸が仲間になった。