第1章 (二)付喪神玲子登場
その若い女性は編集者で、勇一の祖母はその若い女性の担当作家らしい。
玲子は勇一から祖母の入院先を聞き出し、翌日の日曜午後2時に事裏巡査と一緒に祖母へ会いに行った。
「私立探偵さん、こんにちは。警視庁捜査一課の付喪神 玲子です」
「同じく警視庁捜査一課の事裏です」
既にベッドから起き上がって眼鏡をかけ、タイプライターを打つ、ミステリー界の大御所は、白髪を1つに結って仕事から目線を現実の刑事へと向けてよこす。
「あら。刑事さん、こんにちは。あたしは私立探偵でなくて、ただのミステリー作家の豊瀬 桜子 でしてよ」
「あら、失礼しました。ではミステリー作家の豊瀬さん、今度の事件の解決につながるお力を貸していただけないでしょうかしら?」
「良いわよ、全然。何かしら?」
「例の館はいつ、どこから燃え始めていたかご存知ですか?」
事裏巡査はメモ帳とペンを取り出す。
「確か、金曜の午前7時に救急車とパトカーが家の前で停まる音がして、目が覚めて、その頃には家中が燃えていたわ。私と、私の担当編集の若い子――花ちゃんは助かったけど、ほとんどの人が逃げ遅れてしまったみたいね。あなたはこれを事故だと思う? それとも、事件だと思う?」
「それはまだわかりかねますね。担当編集さんは今どちらに?」
「もうすぐ原稿を受け取りに来るわね。確か、今日の午後3時に」
「でしたら、ここで待ってますね。その担当編集さんからもお話を聞かねばならないのが刑事の仕事でして」
「聞き込み調査ってやつね。知ってるわよ」
「さすがはミステリー作家の豊瀬 桜子」
午後3時を回ろうとしていたタイミングで、病室に担当編集が現れた。
「貴女が担当編集さんですか?」
玲子が聞いた。
「そうですが、何か?」
「私、警視庁捜査一課の付喪神 玲子と申します。この度は大変でしたね」
「刑事さんが私に何の用?」
「館の火事について伺いたいことがございまして」
「仕事が一区切りついてからでも良いですか?」
「構いません」
玲子は担当編集からその場で名刺を受け取り、連絡先を交換した。
3時間後、玲子はカフェで担当編集の梅野 花美 と合流した。
「お待たせしました、梅野さん」
「私も今来たばかりで、全然待ってませんのでご安心を。それで? 私の自宅の火事のことでお話があるようですが?」
玲子は先ず、カプチーノを、事裏巡査はカフェラテを注文してから捜査を始める。
「では、火事に遭った当日、何時ごろからどこから燃えてきたかご存知ですか? どなたと、逃げ出したか覚えていらっしゃいますか? 覚えている範囲内で、ご存知のことをすべてお話ください」
玲子はメモ帳とペンを取り出した。
花美は覚えている限りのことをすべて話した。
「今日は捜査のご協力、ありがとうございました」
「それでは、失礼します」
「おやすみなさい、刑事さんたち」
花美と別れた刑事2人は署に戻って捜査を再開した。
「梅野 花美の自宅から燃えてきたわけではなかったようね。だとすれば」「隣室から燃え広がってきたと考えるのが自然でしょうね」「事裏巡査は、彼女に怪しいところはなかったと思う?」「俺は思います。付喪神警部補は?」
「私もなかったと思う。明日、梅野 花美の隣室の住人をあたってみましょう」
「そうですね。でも、氏名はご存知なんですか、付喪神警部補は?」
「ちゃんとメモしてなかったの? 梅野 花美がさっき教えてくれたでしょう。鍵平よ」
「鍵平……」
事裏巡査は素早くメモした。
後日、鍵平は事件当日の朝は外出しており、助かっていることがわかった。
「これは放火事件なのね」
「そのようですね」
「次は犯人が誰なのかを特定しなければならないのよね」
事裏巡査はメモ帳のページを捲った。
「今のところ、生存者は全員白ですね」
「外部の人間が館に侵入してライターか何かで燃やした説が有力ね」
「そうっすね」
「今日はひとまず解散して、また明日にしましょう」
「もう帰るんすか?」
「明日は午後イチで捜査会議よ。それまでに聞き込み調査で容疑者をリストアップしておかないとね」
「その聞き込み調査を明日するんですか?」
「そういうこと。お疲れ、事裏巡査」
玲子は翌朝の7時に館前で待ち合わせということを伝えると、退勤していった。
玲子は勇一から祖母の入院先を聞き出し、翌日の日曜午後2時に事裏巡査と一緒に祖母へ会いに行った。
「私立探偵さん、こんにちは。警視庁捜査一課の付喪神 玲子です」
「同じく警視庁捜査一課の事裏です」
既にベッドから起き上がって眼鏡をかけ、タイプライターを打つ、ミステリー界の大御所は、白髪を1つに結って仕事から目線を現実の刑事へと向けてよこす。
「あら。刑事さん、こんにちは。あたしは私立探偵でなくて、ただのミステリー作家の
「あら、失礼しました。ではミステリー作家の豊瀬さん、今度の事件の解決につながるお力を貸していただけないでしょうかしら?」
「良いわよ、全然。何かしら?」
「例の館はいつ、どこから燃え始めていたかご存知ですか?」
事裏巡査はメモ帳とペンを取り出す。
「確か、金曜の午前7時に救急車とパトカーが家の前で停まる音がして、目が覚めて、その頃には家中が燃えていたわ。私と、私の担当編集の若い子――花ちゃんは助かったけど、ほとんどの人が逃げ遅れてしまったみたいね。あなたはこれを事故だと思う? それとも、事件だと思う?」
「それはまだわかりかねますね。担当編集さんは今どちらに?」
「もうすぐ原稿を受け取りに来るわね。確か、今日の午後3時に」
「でしたら、ここで待ってますね。その担当編集さんからもお話を聞かねばならないのが刑事の仕事でして」
「聞き込み調査ってやつね。知ってるわよ」
「さすがはミステリー作家の豊瀬 桜子」
午後3時を回ろうとしていたタイミングで、病室に担当編集が現れた。
「貴女が担当編集さんですか?」
玲子が聞いた。
「そうですが、何か?」
「私、警視庁捜査一課の付喪神 玲子と申します。この度は大変でしたね」
「刑事さんが私に何の用?」
「館の火事について伺いたいことがございまして」
「仕事が一区切りついてからでも良いですか?」
「構いません」
玲子は担当編集からその場で名刺を受け取り、連絡先を交換した。
3時間後、玲子はカフェで担当編集の
「お待たせしました、梅野さん」
「私も今来たばかりで、全然待ってませんのでご安心を。それで? 私の自宅の火事のことでお話があるようですが?」
玲子は先ず、カプチーノを、事裏巡査はカフェラテを注文してから捜査を始める。
「では、火事に遭った当日、何時ごろからどこから燃えてきたかご存知ですか? どなたと、逃げ出したか覚えていらっしゃいますか? 覚えている範囲内で、ご存知のことをすべてお話ください」
玲子はメモ帳とペンを取り出した。
花美は覚えている限りのことをすべて話した。
「今日は捜査のご協力、ありがとうございました」
「それでは、失礼します」
「おやすみなさい、刑事さんたち」
花美と別れた刑事2人は署に戻って捜査を再開した。
「梅野 花美の自宅から燃えてきたわけではなかったようね。だとすれば」「隣室から燃え広がってきたと考えるのが自然でしょうね」「事裏巡査は、彼女に怪しいところはなかったと思う?」「俺は思います。付喪神警部補は?」
「私もなかったと思う。明日、梅野 花美の隣室の住人をあたってみましょう」
「そうですね。でも、氏名はご存知なんですか、付喪神警部補は?」
「ちゃんとメモしてなかったの? 梅野 花美がさっき教えてくれたでしょう。鍵平よ」
「鍵平……」
事裏巡査は素早くメモした。
後日、鍵平は事件当日の朝は外出しており、助かっていることがわかった。
「これは放火事件なのね」
「そのようですね」
「次は犯人が誰なのかを特定しなければならないのよね」
事裏巡査はメモ帳のページを捲った。
「今のところ、生存者は全員白ですね」
「外部の人間が館に侵入してライターか何かで燃やした説が有力ね」
「そうっすね」
「今日はひとまず解散して、また明日にしましょう」
「もう帰るんすか?」
「明日は午後イチで捜査会議よ。それまでに聞き込み調査で容疑者をリストアップしておかないとね」
「その聞き込み調査を明日するんですか?」
「そういうこと。お疲れ、事裏巡査」
玲子は翌朝の7時に館前で待ち合わせということを伝えると、退勤していった。
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