第5章 捜査Ⅱ

 舞台が始まる前日。末永璃亜は、ポストに入っていた招待状を付喪神玲子に渡した。
「他に演劇部から何か受け取ってない?」
「受け取ってません。ちなみに、今朝の5時頃思い出したんですけど、私、文芸部と演劇部に入っているみたいです」
「例の記憶屋で欠けた記憶を買ってパズルしたのね」
「はい。文芸部では小説を書いていて、演劇部では脚本を書いていたようです」
「この招待状、開けて中身を読んでも良いかしら?」
「どうぞ」
 招待状に書かれていた劇のタイトルは【白と黒の私】だった。
「あなたが書いた脚本のタイトルで、これと同じものはある?」
 玲子は招待状の中身を璃亜に見せて聞く。
 驚いた表情で、瞳を揺らしながら璃亜は頷く。
「えぇ。あります。過去に体育館で上演されたこともあります」
 次に玲子は一枚の中に写っているふたりの紅高の女子生徒の顔写真を見せる」
「この顔に見覚えは?」
 璃亜はじっと見つめるが、思い出せない。
「ごめんなさい。記憶のパズルをしてもまだこの二人が何者なのか思い出せなくて。紅高の制服を着てるから、紅高の生徒に間違いないと思いますが」
「そう。明日また来るわ」
 玲子は覆パトに乗って、璃亜の家の前を去って行った。

 後日、璃亜に招待状が自宅のポストに返されてきた。

 
 翌朝。誰よりも早く出勤した玲子は、傷害事件のあれこれを推理する。昨夜の新たな情報を得たところで一番怪しいのは演劇部と文芸部だ。
 舞台が上演される時間は午後4時。
 玲子は容疑者全員に見つかった凶器に付いていた指紋からDNA鑑定を受けさせ、結果が出たらすぐに上演中に容疑者に事情聴取をして、犯人が誰なのか当て、失踪事件も解決するつもりだ。

(一)
 令和6年4月上旬。末永璃亜は女子生徒と男子生徒にいじめられていた。
 何も言い返せなかった璃亜は、いきなり腹部を刺され、更には腰の高さまで土に埋められて動けない状態だった。
 運転免許を持っている男子生徒は、そのまま盗難車に女子生徒を乗せて逃げていった。
 十数分後、車で駆けつけた璃亜の彼氏の仲が死にかけの璃亜を助け出し、病院へ連れて行った。


(二)
失踪したのは三年二組の双子の妹で、璃亜の事件を忘れさせるための自作自演だった
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