第3章 捜査
玲子は先ず、傷害事件の被害者の意識が戻るのを待ちながら、被害者の家族や彼氏にこころあたりはないか訊いた。しかし、家族の沈黙の幕は上がらない。代わりに、彼氏の仲悠介から有力な情報を得た。それが、彼のバイト先である記憶屋という店の存在と事件との関係だ。
先に店の場所と店長の居場所まで突き止めてから、バディを組んでいる同僚から「被害者の意識が戻り、既に学校に登校している」という連絡が入った。
「わかりました。明日の下校時間に話を聞いてみます」
同僚との通話を終えると、玲子は寮に帰る。
翌日の最終下校時間に友人と下校する被害者の末永璃亜に声をかけ、末永璃亜だけを車に乗せて署まで連れて行く。外は暗くなり始めていた。璃亜は緊張しているのか、膝の上にこぶしを載せたまま、終始何も言わなかった。
署に着いて、取調室まで連れて行き、向かい合ってパイプ椅子に座ってから、漸く口を開いてくれた。
「実は目が覚めて、自分が病院に居るんだとわかってから、何も記憶がなかったんです。だから、自分が誰に刺されたのか知るために、記憶を取り戻そうと思って、断片的にではあるのですが思い出して、その思い出した記憶と、どうしても思い出せない記憶をパズルしているところなんです。
自力で思い出せない記憶は、記憶屋で買って、パズルするんです」
玲子はデスクの端と端を両手でつかんで立ち上がる。
「どこからどこまで覚えているか。それを先ず教えて!」
璃亜は自分が現在高校二年生であることから、暗い森の中でお腹を刺されたのがおよそ二週間前であることまで憶えていることを話した。
「誰に刺されたのか、どうして刺されたのかはまだ思い出せないので、そこは記憶屋でまた記憶を買わないとわからないんです」
「わかったわ。今日はもう帰って良いわ。家まで送るわ。一緒に来て」
