第2章 記憶屋の西野莉世子
毎夜、莉世子は問屋から人々の記憶を買い付けに行く。その帰り道、地下街のバーで紅高 の生徒に出会った。
「君は、桜原清君?」
「そうですが。西野さんは、問屋帰りですか?」
「まぁ、そんなとこよ」
地下街は璃亜のクラスメイトがよく現れる場所だ。知らないのは璃亜だけだ。
「今回は惜しかったね。あともうちょっとだったのに」
「残念でなりません。必ず上手くいくと思ってたのに、璃亜のやつ、へまこいて」
「彼女だって犠牲に遭ってるんだから責めないであげてよね、清君」
「そうですね。早く璃亜の記憶が戻ればいいのに」
「彼女ならうちの常連でよく記憶を買っていくわよ。少しずつ、自分の記憶を取り戻そうとしているみたいだわね」
「そうなんですね、知らなかった」
西野はマスターから新聞を買った。
「そういえば、こちらの世界で今話題になっている事件があるんだけど、知ってる?」
「あぁ、うちの高校の女子生徒が行方不明になっているという事件ですね。警察は何をしているんだか」
「事件発生からもう2週間。今のところはシナリオ通りなのかしら」
「今度の事件も紅高のやつらが関係しているみたいっすね」
西野は新聞の一面を読みながら言う。
「行方不明になっているのは、演劇部の3年生みたいね。お芝居ではいつもメインヒロインを演じてたらしいけれど」
桜原は新聞をちらりと横目に見ながらソフトドリンクを飲む。
「演劇部と文芸部って、つながりがあるらしいですね」
「へぇ。それって、清君だけが知ってる紅高の秘密?」
西野の紅茶色の瞳がきらめいた。
「演劇部の友原先輩から聞いた秘密っす。内緒ですよ」
「わかってるって」
西野は立ち上がるとお会計を桜原の分まで済ませた。
座っている時も十分細身だが、立ち上がると更にスタイルがよく見えるのが不思議である。
西野は大きく弧を描いて捲れた壁の穴から問屋の元へと戻った。
「話は聴いてる?」
「えぇ、勿論。例の記憶薬をちょうどお値打ち価格で売ろうとしていたところです」
「全部買うわ」
記憶薬が入った大きめのボストンバックと引き換えに、代金を支払うと、西野は自分の店へ戻った。
「仲君、ただいま! 店番お疲れ。今日はもう帰って良いわよ」
仲はずっとレジに立っていたらしい。
「お疲れ様です、西野さん」
「お疲れさま、仲君」
仲は薬袋の配置を手伝ってから退勤していった。
西野は窓の外で停まるネオンサインに気付く。
スーツ姿の男たちと婦警が店の中に入ってきた。
「記憶屋の店長の西野莉世子さんで間違いありませんね?」
西野は表情を引きつらせて頷いた。
「えぇ。そうです。私が何か?」
「署まで詳しい話をお聞かせ願えますか?」
「はい」
「君は、桜原清君?」
「そうですが。西野さんは、問屋帰りですか?」
「まぁ、そんなとこよ」
地下街は璃亜のクラスメイトがよく現れる場所だ。知らないのは璃亜だけだ。
「今回は惜しかったね。あともうちょっとだったのに」
「残念でなりません。必ず上手くいくと思ってたのに、璃亜のやつ、へまこいて」
「彼女だって犠牲に遭ってるんだから責めないであげてよね、清君」
「そうですね。早く璃亜の記憶が戻ればいいのに」
「彼女ならうちの常連でよく記憶を買っていくわよ。少しずつ、自分の記憶を取り戻そうとしているみたいだわね」
「そうなんですね、知らなかった」
西野はマスターから新聞を買った。
「そういえば、こちらの世界で今話題になっている事件があるんだけど、知ってる?」
「あぁ、うちの高校の女子生徒が行方不明になっているという事件ですね。警察は何をしているんだか」
「事件発生からもう2週間。今のところはシナリオ通りなのかしら」
「今度の事件も紅高のやつらが関係しているみたいっすね」
西野は新聞の一面を読みながら言う。
「行方不明になっているのは、演劇部の3年生みたいね。お芝居ではいつもメインヒロインを演じてたらしいけれど」
桜原は新聞をちらりと横目に見ながらソフトドリンクを飲む。
「演劇部と文芸部って、つながりがあるらしいですね」
「へぇ。それって、清君だけが知ってる紅高の秘密?」
西野の紅茶色の瞳がきらめいた。
「演劇部の友原先輩から聞いた秘密っす。内緒ですよ」
「わかってるって」
西野は立ち上がるとお会計を桜原の分まで済ませた。
座っている時も十分細身だが、立ち上がると更にスタイルがよく見えるのが不思議である。
西野は大きく弧を描いて捲れた壁の穴から問屋の元へと戻った。
「話は聴いてる?」
「えぇ、勿論。例の記憶薬をちょうどお値打ち価格で売ろうとしていたところです」
「全部買うわ」
記憶薬が入った大きめのボストンバックと引き換えに、代金を支払うと、西野は自分の店へ戻った。
「仲君、ただいま! 店番お疲れ。今日はもう帰って良いわよ」
仲はずっとレジに立っていたらしい。
「お疲れ様です、西野さん」
「お疲れさま、仲君」
仲は薬袋の配置を手伝ってから退勤していった。
西野は窓の外で停まるネオンサインに気付く。
スーツ姿の男たちと婦警が店の中に入ってきた。
「記憶屋の店長の西野莉世子さんで間違いありませんね?」
西野は表情を引きつらせて頷いた。
「えぇ。そうです。私が何か?」
「署まで詳しい話をお聞かせ願えますか?」
「はい」
