第1章

 結はスロットを2に合わせた。時刻は午前零時れいじ。この時から結は誰かにわれている感覚があった。
 追いかけてくる人物の不意ふいをついて背後を振り向くと、結の同級生のダートンが居た。
「あら、ダートン君?」
「見つかっちまったか」
 キャラメル色のテンパーにライトブラウンのひとみの青年兼結の同級生は後頭部こうとうぶいた。
気配けはいでわかるわよ。私に何の用があるの?」
「ジャスミンがお前に片思かたおもいしているらしくて、よく恋愛相談れんあいそうだんを受けるんだよ。でも、おれが片思いしているのはジャスミンなんだ」
「だから貴方あなた人生じんせいわたしは要らないってこと? それならこっちから貴方を消すわ、ダートンくん
 結は懐中時計のレーザーでダートンのはらねらったが。
「待ってくれ。俺はお前の味方みかただ。らないなんて思ってない」
 結はレーザーを消した。
「じゃあもう私について来ないでね、ダートン君。楽しかったよ、貴方との学生時代は。じゃあね」
 結はスロットを3に戻す。
 もう周囲にダートンは居ない。結は四條院家よじょういんけの懐中時計で瞬間移動をしたのだ。勿論、結が持っているのは結専用ゆいせんようの懐中時計であり、四條院家では一族全員一人ひとりにつき1個支給されることになっているのだ。
「このレーザーは効果が弱いな。修理してもらわなきゃ」
 スロット7の場所は、四條院家しか知らない夜市よいちの街だ。時刻は午後11時。
 結は自分の懐中時計をチェックする。どうも、スロット変更による瞬間移動にも時間がかかるようになってきてしまっているようだ。
 結はいつもの信頼している懐中時計を専門の修理しゅうり屋に自分のを出した。
 修理はものの5秒で終了したらしい。
「結ちゃん、久しぶり! 今日も肌ツヤがきれいだし、着ているお洋服もおしゃれだからまけてあげる。
2,000ロウェルを今回も特別価格で200ロウェルにしてあげる」
「いいわよ、2,000ロウェルのままで。……ていうか、さっきスロットを7に合わせたから、お金の単位も変わるのね」
「スロットボケかしら? まいどあり~♪」
 結はスロットを1に戻してロレーヌ夫人に会いに行く。
 ワッフルガールはリードを揺らして結に歩く速度を合わせてくれる。
「いらっしゃい。結にワッフルガール。待ってたわよ」
 この時にはもう背後に誰の気配けはいもしなかった。


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