第1章

  20XX年11月2日。月曜日。東京の空は午後から大雨から曇りに変わり始めていた。
 四條院結よじょういん・ゆいという女性は、大雨の中を愛犬であり相棒のワッフルガールというメスのトイプードルと一緒に走り、取引先で雨宿りをしていた。
 結が着ているドレスの袖からは、細くてしなやかな腕がけて見える。
「お待ちのお客様は四條院結様とワッフルガール様で間違いありませんか?」
 受付係うけつけがかりの若い女性がバスタオルを2枚よこしながら聞いてくる。
 結はタオルを2枚とも受け取り、うち1枚は自分のドレスと髪を拭くのに使い、もう1枚はワッフルガールの頭や体を拭くのに使い、受付の者に返した。
「はい。間違いありません」
 結の取引先が待っているビルは新築しんちくということもありとてもキレイで、清潔感を感じさせた。
 エレベーターホールまで来ると、ワッフルガールを胸に抱き上げる。
 受付係の者と一緒にエレベーターに乗ると、気を遣ってくれたのか冷房から暖房にスイッチを切り替えてもらえた。
 24階で降りると、正面の部屋に案内された。
 室内は広く、大きな窓にめんしてローテーブルをはさむように、新品の革のソファーが2台用意されている。
「こちらのソファーでお待ちください」
 どうやら取引先とりひきさきはまだ来ていないらしい。
 結はおとなしく座った。
 間もなく、目的の人物が現れた。結は立ち上がる。
「初めまして。私の名前は四條院結。これから宜しく」
「初めまして。ジュリーよ。こちらこそ宜しく。さぁ、座りましょうか」
結はジュリーと同時に座った。
「ロレーヌ夫人から聞いているわよ。やっと雇い主が見つかって良かったわね」
「はい!」
「早速なんだけど、この品物をカエル屋に届けてほしいの。出来るわよね?」
 ローテーブルに、どこからどう見ても蛇の皮にしか見えない細長いその武器を出され、結は見つめた。
「この1件はおいくらですか?」
「ロレーヌ夫人と話し合って、5千ドルにしてもらうことにしたわ」
「わかりました。引き受けます。ちなみにこの商品の名前は?」
「ホワイトスネーク048よ」
 結はホワイトスネークを受け取ると立ち上がった。
 失敗は許されない。
 エレベーターホールで、結は懐中時計かいちゅうどけいの3時のあたりの横のスロットを3に合わせて、ワッフルガールと一緒に瞬間移動する。
 ちょうどカエル屋の前に着く。
 短めの暖簾のれんをめくって中を見て、店主を見つけてからワッフルガールを外で待たせてから中へ入る。
「おやおや、これは四條院様。どうなさったのです?」
 真っ白くて背中まで伸びた白髪をうなじのあたりで1つに結び、白髭をしっかりった店主が聞いてきた。
 結からホワイトスネーク048を手袋をはめて受け取ると、店主はにこやかな表情になる。
「遂にこやつを入荷できる日が来るとはな。ありがとうございます、四條院様」
「私は仕事をしたまでです。それでは失礼します」
 結は店の外へ出てワッフルガールを胸に抱きかかえると、懐中時計のスロットを1に戻す。
「あら、もう仕事を終えたのね?」
 目の前で札束さつたば豊満ほうまんなバストで挟むロレーヌ夫人。
「はい、終えました。たいそうカエル屋の店主に喜ばれました」
「そう。良かったわね。はい、これが報酬よ」
 ロレーヌ夫人は谷間たにまから札束を出して結にそのままよこした。
 結はそれを受け取り、しっかり札束を数えて財布に仕舞しまう。
 結はそのお金でワッフルガールのえさを2週間分買い、そのあとはペットOKの寿司すし屋で、マグロのおおトロを10貫食べ、お会計を済ませると再びワッフルガールを連れてスロットを1に戻した。

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