memorandum

 翌日の朝午前6時30分。
 今日も外の天気は晴れていて、窓を開ければ涼しい風が少しやわらかく入ってくる。
 アンジェリカの住む自宅は晴れている日が多い土地のため、湿った空気はあまり入らない。
 アンジェリカは起きてすぐ、歯磨きをし、魔法薬学論文の続きを少しだけ書き進めてからお鉢様にスプレー容器で水を与えて、ユーキの薬局へ連れて行き出勤した。
 更に今日は営業時間前にユーキと一緒にエナジードリンクを飲んだ。

「今日も枯れたところはなさそうですね」
 薬木の様子をチェックしてからアンジェリカはそう言った。
 時間が来ると今日も開局である。
 今日は午前中まで開局し、午後はユーキのあとについて王家おうけまでお薬を届けに行かねばならない。
 2人はほうきに乗って、王族の住む城へ向かった。
 門番に事情を説明するとすぐに開けてもらえた。
 すぐ先で待っていてくれたのは案内役だ。
「お待ちしておりました。ささ、どうぞお入りください」
 歴代の王の肖像画が等間隔に壁に飾られている廊下を通り、ようやく部屋の前まで辿り着くと、案内役が大きな声で来客を知らせ、ユーキたちを王族の寝室へ入れてくれた。
 王はアンジェリカとユーキの顔を見て安心した様子。
「ちょうど今、薬を切らしていて苦しかったところだ」
「お薬の飲み方の説明は省略させていただきますね、王様。
 今日はお薬を2ヶ月分にかげつぶんお渡ししてお代をいただいて終わりです」
 王は渡された薬を管理人に渡し、管理人からお代を払わせると、すぐに管理人に水と一緒にお昼分のお薬を持ってよこすよう命じた。
 管理人が水と一緒にお昼分のお薬を王に渡すと、王はすぐに薬を飲んだ。
「ありがとう。このお薬は即効性があるようで、飲んだらすぐに楽になった」
「朝・お昼・夜、しっかり用量を守ってお飲みくださいね、王様」
 ユーキが言った。
 王は笑顔で頷く。
「係の者にそう伝えとくよ。ありがとう、2人とも」
 お城を出るとき、王女とすれ違う。
「これはこれは、王女様。お久しぶりでございます」
 王女は立ち止まり、ユーキとアンジェリカに振り向いて抱きつく。
「お父様は大丈夫かしら? 私、心配なの」
「王様の体調は少しずつ良くなってきています。お薬をちゃんと用量を守って正しく飲んでいただければすぐに元気を取り戻されることでしょう。ご心配なきよう、王女様」
「なら良いんだけど」
 王女がユーキとアンジェリカから離れると、そのまま去って行ってしまった。


 帰り道、箒に乗ったまま、アンジェリカが聞く。
「ユーキ先生には殿方とのがたはいらっしゃるのですか?」
 今までに聞いたことがない質問をしたアンジェリカ。
 ユーキは首を振った。エメラルドグリーンの長い髪が揺れる。
「いいえ。私の恋愛対象は男性より同性よ」
 この時、アンジェリカの胸の内がトクンと鳴る。
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