第1章 流れゆく時間はゆるやかに

《おはようございます。本日は1月10日水曜日。銀河暦6000年の記念日です。時刻は午前7時を回っております。本日は9時にニュースをお届けします。それでは、次の午後12時にまたアナウンスさせていただきます》
 キャラメル色の七三分けのベリーショートカットの16歳の少年・サムは、艦内アナウンスを聴きながら目を覚ました。体や家具、家電製品やパソコン、携帯は人工重力のため浮かずに定位置に置かれたままだ。
 朝は一杯のコーヒーを飲み、シャワーを浴びてネクタイをしめるまでのルーティーンを済ませて、サムはガレージからカートを取り出して農場へと出発。
 特殊技術で育った採れたてのニンジンやら玉ねぎやらの野菜を運び、マーケットやレストランまで届けたら、その日のサムの仕事は終わる。その代わりに週末は薬局のお薬を運ぶ仕事があるが。
 野菜を運び終えると、夕方のアナウンスとともに自宅に帰り、部屋着に着替えてテレビをつける。
 サムの住む第一艦隊は間もなく金星に到着するらしい。
 金星へ降り立つにはそれなりの服を着なければならないが、サムはそんな服は持っていないので、いつもどおり自宅でテレビ中継で金星を見る。
 生で金星を見てみたくなったサム。その時、タイムリーにも父親から金星用の衣服が届いた。服の下には厚底のショートブーツが1つの段ボールに入っていた。
 サムは急いで着替えて厚底ブーツを履いて金星へ向かう。
 父親から送られてきた荷物の中に添えられていた手紙には、[たまには旅行も楽しんで]とあった。
 サムは金星に繋がるゲートを潜り、係員にパスポートを見せた。
 刹那、重力でサムは金星へと降り立つ。
 テラフォーミングが進んだエリアで金星バーガーを食べるが、周囲には大勢の第一艦隊の住民が食事を楽しんでいた。
 サムは金星バーガーをゆっくり味わうと、小舟に乗って金星を一周する。
 サムはこれまでに何度か金星に来ていたことがあるが、いつもどおり、見飽きた景色が広がるだけだった。
 そして乗ってきた第一艦隊の中央居住区に帰った。
 
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