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第3話 異能力者と怪事件

 2時間目の授業を終えた時、千秋は背後に着席している藤助の悲鳴を聴いた。

 驚いて振り向くと、藤助は絶命している。

 クラス中が大騒ぎになるなか、千秋は教室の出入口の上部にある幻窓に近づき、片手をかざすことで、昨日の夜へ時間逆行の異能力を発揮した。


 昨日の夜6時頃は、千秋は食堂で夕食を食べ終えた頃だった。

 突然、自宅の電話が鳴り、杏子から電話を代わってもらう。

 藤助の父親からの電話らしい。

「報酬はきちんと払うから、どうか藤助を妖魔から守ってほしい。これは君が妖魔退治代行師だから頼んでいるんだよ。それに、息子の藤助は君の後ろの席だろ? 席を代わってくれても構わない。頼むよ」
「わかりました、引き受けます!」

 千秋は、自分が時間逆行の異能を使えることを身内以外の人間が何故知っているのか疑問に思ったが、今はそれどころではない。

 電話を切り、すぐに仕事着に着替えて、外に出る。

 幸いにも雨は降っていない。

 電話してきた男に藤助の自宅住所を教えてもらい、頭にたたきこんである千秋は、夜の牧狩ヶ丘町内を走り周り、ようやく藤助の自宅に到着した。

 事情を知った藤助が門を開けてくれた。

「父上から聴いたよ。千秋は時間逆行の能力も持っているのね、すごいな。ささ、中へ入って。千秋と一緒なら安心だ」

 千秋は藤助を護衛しながら彼の自宅へお邪魔した。
 玄関ポールを抜けて建物の中に入り、靴を脱ぐと、目の前の階段を上がり、真正面のドアの前に立つと、部屋に入るよう藤助に言われて入る。

 おそらく、藤助の部屋に入るのは今日が初めてじゃないだろうか?

 藤助の部屋は10畳ほどあり、カーテンは締切られ、出入口から見て右側の壁沿いには何もなく、部屋の左奥に勉強机と椅子が置かれている。

 部屋の中央のソファーは、ローテーブルをはさむように置かれている。

 ベッドは左側の勉強机の奥にあった。

「藤助、窓辺にベッドは置かない方が良いよ」

 藤助は小首を傾げて聞く。

「どうして?」
「大抵の妖魔は窓から入ってくるから」

 ドアをノックする音がした。

「どうぞ!」

 入ってきたのは藤助の父親だ。

「千秋さん、喉渇いたでしょう? お茶でもどうぞ。藤助も飲んで良いよ。2人分用意したから」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます、父上」

 父親が去っていく前に千秋が声で引き止めた。

「あの、すいません。これは代行師としてのアドバイスなのですが、窓辺にベッドを置くのはオススメしません。大抵の妖魔は窓から入ってくるので」

 父親は藤助のベッドの位置を見てから答えた。

「健三郎と2人であとで壁際に移動しておきます。アドバイスありがとう。すぐ来るから、2人で待っていてください」

 10分後、健三郎と名乗る青年と、藤助の父親がベッドを壁際へ移動させた。
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