羅針盤
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音羽がその場を去ってから沈黙が流れて、その場には俺と俺達のクラスメイトという人達が残された。音羽があんな様子だったというのに、他の奴は「怖かったね」とか「やっぱ後ろめたいことがあったんだ」とか、好き勝手言うばかりで。
「ね、十文字くん。やっぱり酷い子でしょ?」
「その……本当なのか?アイツが泥棒だって話」
恐る恐る尋ねると、もちろん、と頷かれてアイツが今まで盗んだというものを聞かされた。給食費の封筒、クラスメイトの文房具や筆箱にキーホルダー、先生のペンに理科室の備品……他にも色々。貰ったゲームソフトはちゃんと自分で買ってたと言うと、十文字くんの前だからお金払ったんだと返される。結局その場はもう遅いからとお開きになったが、帰りの電車の中でふと考えた事がある。音羽は自分から泥棒だと認めたけど、それにしては声が震えていた。あのクラスメイトらに対しても怯えている様だったし、仮に本当に音羽が物を盗んでいたとしてもあんな反応をするのだろうか。考えた所で俺はアイツとあんまり話した事が無いし接した事もそんなに無いから深くまではわからない。
家に帰宅した時に、スマホに着信が入っていた。チャットアプリのトーク画面に表示されたのは、今頭の中で悶々と考えていたアイツからで。
『今日はごめんね、楽しかったよ』
それだけが淡々と吹き出しに書かれていた。ごめんね、というのは駅での事に対する謝罪だろうか。
『別に気にすんな、俺も楽しかったし』
そう返信した。返事はおろか既読すら付かない。いつもなら秒で付くのに。
なんとなく、アイツから貰った紙袋の中身を取り出す。ずっと見付からなくて欲しがったゲームなのに、やる気が起きない。あんな事を聞いてしまったからだろうけど、それとも違う様な。やっぱり、いつも盗んでて本人も自覚しているなら、どうして二回か三回しか遊んだことの無い俺にも盗んだものをあげるのだろう。考えれば考えるほど、わからなくなる。
「……本当に、アイツのことなんも知らねぇんだな」
ソフトを机の上に置いて、ベッドに寝転がる。一人きりの部屋にはカチカチと時計の針の音が響くだけで、スマホの通知音が鳴ることはついぞなかった。
「ね、十文字くん。やっぱり酷い子でしょ?」
「その……本当なのか?アイツが泥棒だって話」
恐る恐る尋ねると、もちろん、と頷かれてアイツが今まで盗んだというものを聞かされた。給食費の封筒、クラスメイトの文房具や筆箱にキーホルダー、先生のペンに理科室の備品……他にも色々。貰ったゲームソフトはちゃんと自分で買ってたと言うと、十文字くんの前だからお金払ったんだと返される。結局その場はもう遅いからとお開きになったが、帰りの電車の中でふと考えた事がある。音羽は自分から泥棒だと認めたけど、それにしては声が震えていた。あのクラスメイトらに対しても怯えている様だったし、仮に本当に音羽が物を盗んでいたとしてもあんな反応をするのだろうか。考えた所で俺はアイツとあんまり話した事が無いし接した事もそんなに無いから深くまではわからない。
家に帰宅した時に、スマホに着信が入っていた。チャットアプリのトーク画面に表示されたのは、今頭の中で悶々と考えていたアイツからで。
『今日はごめんね、楽しかったよ』
それだけが淡々と吹き出しに書かれていた。ごめんね、というのは駅での事に対する謝罪だろうか。
『別に気にすんな、俺も楽しかったし』
そう返信した。返事はおろか既読すら付かない。いつもなら秒で付くのに。
なんとなく、アイツから貰った紙袋の中身を取り出す。ずっと見付からなくて欲しがったゲームなのに、やる気が起きない。あんな事を聞いてしまったからだろうけど、それとも違う様な。やっぱり、いつも盗んでて本人も自覚しているなら、どうして二回か三回しか遊んだことの無い俺にも盗んだものをあげるのだろう。考えれば考えるほど、わからなくなる。
「……本当に、アイツのことなんも知らねぇんだな」
ソフトを机の上に置いて、ベッドに寝転がる。一人きりの部屋にはカチカチと時計の針の音が響くだけで、スマホの通知音が鳴ることはついぞなかった。
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