さまーでいず
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されるがままの状態でいたところ、私の手を引く女子は体育倉庫の前で足を止めた。彼女らは倉庫の中に私を放り込み、そのまま自分らも中に入って鍵を閉める。いきなりの事に戸惑っていると、胸倉を掴まれて扉に押し付けられ、衝撃でバン!と扉が揺れた。
「……昨日さぁ、聞いたんだよね」
いつもの猫なで声が嘘の様な、ドスの効いた声でそう言う。何を、と思った時、同じ声で彼女は続けた。
「体育祭のお知らせ見た十文字くんがね、諷枉さんは来るのかって」
え、と間抜けな声を漏らす。それはいったい、どういう事なのだろうか。何も喋れずにいると、別の女子が口を開く。
「あんな事があったのに、十文字くんも優しいよねえ。こんな泥棒でもわざわざ気にかけてくれるんだから」
「泥棒の癖に、ちょっと優しくして貰えたからっていい気になっちゃってさ」
言われるがままになっている中、頭の中で考える。どうして十文字はそんな事を聞いたのだろうか。もう碌に連絡すら取っていないし、そうでなくとも私に関する事は聞いていたはずだ。でも、何故?
「な、なんの事だか……」
「しらばくっれるつもり?」
しらばっくれるも何も、そもそも最近十文字とは会うことはおろかメールも電話もしていない。とすると単なる自惚れにはなるが私と会って話したい事があるからであろうか。だとしても、今更何を話そうと言うのか。
「……次調子に乗ったらタダじゃ置かないから」
そう吐き捨てる様に言って私を床に投げ出すと、ご丁寧に一人一発踏み付けやら蹴りやらをお見舞して彼女らは去って行った。ふらふらと身体を起こして、先程の言葉を反芻する。『体育祭に私が来るか』など今の十文字が気にする事でも無いだろう。
「……帰るか」
今考えた所で仕方が無い。どうせ出席したとて見ない振りをして避けてしまえばいいのだし。そう思い直して鞄を持って立ち上がる。蹴られた腹がズキズキと痛い。ついでに踏まれた背中も。よろよろしながら外に出ると、とうに陽が沈みかけていた。橙の西日が目に眩しい。と、同時に、何故だか目頭が熱くなって来た。とめどなく溢れる水滴は、何度拭っても収まる事を知らない。
一体いつまで、こんな仕打ちを受けなければならない?
一体いつまで、こんな気持ちを抱かなければならない?
ふと頭に浮かんだ考えを振り捨てる様に首を横に振る。
「……帰ろ」
ぐしぐしと多少乱雑に涙を拭う。決して肌触りのいいとは言えない化学繊維製のワイシャツの袖が、擦れて少し痛い。足取りは引き摺るように持った鞄みたいに、今の私の心みたいに重かった。
「……昨日さぁ、聞いたんだよね」
いつもの猫なで声が嘘の様な、ドスの効いた声でそう言う。何を、と思った時、同じ声で彼女は続けた。
「体育祭のお知らせ見た十文字くんがね、諷枉さんは来るのかって」
え、と間抜けな声を漏らす。それはいったい、どういう事なのだろうか。何も喋れずにいると、別の女子が口を開く。
「あんな事があったのに、十文字くんも優しいよねえ。こんな泥棒でもわざわざ気にかけてくれるんだから」
「泥棒の癖に、ちょっと優しくして貰えたからっていい気になっちゃってさ」
言われるがままになっている中、頭の中で考える。どうして十文字はそんな事を聞いたのだろうか。もう碌に連絡すら取っていないし、そうでなくとも私に関する事は聞いていたはずだ。でも、何故?
「な、なんの事だか……」
「しらばくっれるつもり?」
しらばっくれるも何も、そもそも最近十文字とは会うことはおろかメールも電話もしていない。とすると単なる自惚れにはなるが私と会って話したい事があるからであろうか。だとしても、今更何を話そうと言うのか。
「……次調子に乗ったらタダじゃ置かないから」
そう吐き捨てる様に言って私を床に投げ出すと、ご丁寧に一人一発踏み付けやら蹴りやらをお見舞して彼女らは去って行った。ふらふらと身体を起こして、先程の言葉を反芻する。『体育祭に私が来るか』など今の十文字が気にする事でも無いだろう。
「……帰るか」
今考えた所で仕方が無い。どうせ出席したとて見ない振りをして避けてしまえばいいのだし。そう思い直して鞄を持って立ち上がる。蹴られた腹がズキズキと痛い。ついでに踏まれた背中も。よろよろしながら外に出ると、とうに陽が沈みかけていた。橙の西日が目に眩しい。と、同時に、何故だか目頭が熱くなって来た。とめどなく溢れる水滴は、何度拭っても収まる事を知らない。
一体いつまで、こんな仕打ちを受けなければならない?
一体いつまで、こんな気持ちを抱かなければならない?
ふと頭に浮かんだ考えを振り捨てる様に首を横に振る。
「……帰ろ」
ぐしぐしと多少乱雑に涙を拭う。決して肌触りのいいとは言えない化学繊維製のワイシャツの袖が、擦れて少し痛い。足取りは引き摺るように持った鞄みたいに、今の私の心みたいに重かった。