さまーでいず
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あの日、十文字達の前から逃げる様に去ってから、十文字と連絡を取り合わなくなった。
『今日はごめんね、楽しかったよ』
たったそれだけを送って通知を切って、あとはもう知らぬ振り。
それからは朝起きて、課題をして、ゲームして寝るの繰り返しで。外に出る事も減って、完全に外との関わりを断ち切っていた。町内会だかの縁日のチラシとかがポストにあったけど、どうせ行く人いないしとゴミ箱に丸めて捨てた。行ったところで楽しいわけでもないし。
そういう生活を送ってとうとう、始業式の日となった。持って帰って洗濯しても大して綺麗にならなかった上履きを履いて、欠伸を押し殺して残暑の熱が篭った体育館で校長の話を聞く。
「三年生は今年の夏は、高校受験の正念場であり、二年生は三年生に向けて基礎を固める時期でもありました。いつまでも遊びにかまけていないで……」
そんなご高尚な演説に、二年は眠たげだ。三年はともかく、二年の夏は未だ決心の覚束無い時期だろう。今からどこの高校に行きたいとかは考えられない、多分。私がそうなだけかもしれないけど。
「……高校、か」
流石に今のままではまずいという自覚はあるけど、なんか遥か先の様にも思えてしまう。このクラスの人達と同じところか、離れるか。それは自分次第だと言うのに。最悪通信制とかも視野に入れようか、なんて。
教室に戻ってからは日記や集められそうな課題を集めて、担任の話で終わり。といってもほぼ校長の話のオウム返しみたいなものだから、真面目に聞いている人は疎らだ。当然私も聞く気にはなれず、最早一つのキャンパスと化した机の上の文字をなぞった。在り来りな罵詈雑言を寄せ書きみたいに書き連ねただけのそれは、いつもとなんら変わりないものなのに、何故か胸が痛い。久々に見たせいだろうか。この夏志望校は調べたか、来年受験生となる準備はしているか、そんな話が淡々と続いた。
話が終わって解散になったとて、すぐに帰れる訳もなく。ストレスの捌け口としてサンドバッグか、グループ分の荷物持ちか、はたまた犯罪行為の強要か。そのどれかだろうなと廊下にて彼女らを待つ。しばらくして、耳が痛くなりそうな高い声で笑いながら、こちらへと歩み寄って来た。
「それじゃあ諷枉さん、今日もお願いねぇ」
その声を皮切りに、こちらへ学校指定のカバンが投げ付けられる。今日は荷物持ちの様だ。あたしも、と言わんばかりに追加された残りの二つも含めて手に持とうとしゃがんだ時、リーダー格の彼女も視線を合わせて囁く。
「十文字くんにも伝えたから。諷枉さんが何したのか」
どくん。一瞬、心臓が止まったような気がした。恐れていた事が起こってしまった。顔がさぁっと青くなる。そんな私を余所に、彼女は仲間達に可愛らしく駆け寄って「行こー」と言う。床に散乱した彼女らのカバンと自分のカバンを拾って、後を追う。
十文字は、それを聞いてどう思ったのだろうか。もう碌に連絡すら取っていないあいつの顔が、頭に浮かんだ。
『今日はごめんね、楽しかったよ』
たったそれだけを送って通知を切って、あとはもう知らぬ振り。
それからは朝起きて、課題をして、ゲームして寝るの繰り返しで。外に出る事も減って、完全に外との関わりを断ち切っていた。町内会だかの縁日のチラシとかがポストにあったけど、どうせ行く人いないしとゴミ箱に丸めて捨てた。行ったところで楽しいわけでもないし。
そういう生活を送ってとうとう、始業式の日となった。持って帰って洗濯しても大して綺麗にならなかった上履きを履いて、欠伸を押し殺して残暑の熱が篭った体育館で校長の話を聞く。
「三年生は今年の夏は、高校受験の正念場であり、二年生は三年生に向けて基礎を固める時期でもありました。いつまでも遊びにかまけていないで……」
そんなご高尚な演説に、二年は眠たげだ。三年はともかく、二年の夏は未だ決心の覚束無い時期だろう。今からどこの高校に行きたいとかは考えられない、多分。私がそうなだけかもしれないけど。
「……高校、か」
流石に今のままではまずいという自覚はあるけど、なんか遥か先の様にも思えてしまう。このクラスの人達と同じところか、離れるか。それは自分次第だと言うのに。最悪通信制とかも視野に入れようか、なんて。
教室に戻ってからは日記や集められそうな課題を集めて、担任の話で終わり。といってもほぼ校長の話のオウム返しみたいなものだから、真面目に聞いている人は疎らだ。当然私も聞く気にはなれず、最早一つのキャンパスと化した机の上の文字をなぞった。在り来りな罵詈雑言を寄せ書きみたいに書き連ねただけのそれは、いつもとなんら変わりないものなのに、何故か胸が痛い。久々に見たせいだろうか。この夏志望校は調べたか、来年受験生となる準備はしているか、そんな話が淡々と続いた。
話が終わって解散になったとて、すぐに帰れる訳もなく。ストレスの捌け口としてサンドバッグか、グループ分の荷物持ちか、はたまた犯罪行為の強要か。そのどれかだろうなと廊下にて彼女らを待つ。しばらくして、耳が痛くなりそうな高い声で笑いながら、こちらへと歩み寄って来た。
「それじゃあ諷枉さん、今日もお願いねぇ」
その声を皮切りに、こちらへ学校指定のカバンが投げ付けられる。今日は荷物持ちの様だ。あたしも、と言わんばかりに追加された残りの二つも含めて手に持とうとしゃがんだ時、リーダー格の彼女も視線を合わせて囁く。
「十文字くんにも伝えたから。諷枉さんが何したのか」
どくん。一瞬、心臓が止まったような気がした。恐れていた事が起こってしまった。顔がさぁっと青くなる。そんな私を余所に、彼女は仲間達に可愛らしく駆け寄って「行こー」と言う。床に散乱した彼女らのカバンと自分のカバンを拾って、後を追う。
十文字は、それを聞いてどう思ったのだろうか。もう碌に連絡すら取っていないあいつの顔が、頭に浮かんだ。