さまーでいず
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戻って来た十文字は、手に一般的なサイズの救急箱を抱えていた。そのまま私にベッドの淵へ腰掛けるよう言い、私もその通りに従う。十文字はその下で救急箱を開き、絆創膏やピンセットなど使う器具だけを取り出した。
「少ししみるぞー」
そう言って、擦り傷や切り傷の部分に消毒液を染み込ませた脱脂綿をぽんぽんと軽く当てる。アルコール分が傷口にしみて、忘れかけていたのにピリッとした痛みが走った。思わず顔を顰めると、わり、と一言謝られる。消毒を終えたのかピンセットと脱脂綿の入った瓶を箱にしまうと、傷口に次々と大小様々な絆創膏を貼られた。
「本当に大丈夫なんだけど……」
「でも、万が一って事もあるだろ?そのままだとバイ菌も入るし……」
ぺたぺたと足に走る傷口を覆うように貼られるそれがいやに擽ったい。逃げたいには逃げたいけど、この状況で逃げる訳にも行かないし、何より件の足は十文字が触れている。つまりは為す術もなくこの場所に留まるしか無いわけで……。私に今できる事といえば、早く終われ早く終われと願う事くらいである。恥ずかしい事に変わりは無いんだけれど。
「……ほい、出来たぞ」
「あ、りがと……」
ようやく終わった。青痣になっていた所には大きめの湿布が貼られていて、転ばされて出来た擦り傷にはこれまた大きめの絆創膏。しばらく手当てもせず放置してたから傷も多かったろうし、何だか申し訳ない。そう思うと同時に、バレたのが足だけで良かったとも思った。これで腕の部分まで見えてたら心臓が持たない。色んな意味で。
「にしたって、どうやったらこんな怪我するんだ?」
救急道具を箱に仕舞いながらそう問われる。一度しか会ってない他人も同然な私を気にかけてくれるとは、相当なお人好しだろうか。ここで本当の事を話せば、気にかけてもらえるのだろうか。けれど、それだけの関係でいじめの事を話すのも腕の怪我を見せるのも気が引けて、言葉を飲み込む。その代わりに。
「ちょっと階段で転んだだけだよ」
せっかくの機会を溝に捨てる事にした。きっとそれが正解だろうから。そんな嘘を信じて笑う彼に、罪悪感で胸が痛む。
「そっか。それじゃ、ゲームの続きやろうぜ!」
うん、とぎこちなく頷いてコントローラを手にする。胸中に渦巻いていた罪悪感は、続きをしている内に消えていた。
コーラのおかわりやお菓子の継ぎ足しをしながらというもの数時間。窓の外はとうに日が沈みかけ、オレンジの光が辺りを照らしていた。簡単なシューティングゲームというものだからか前にゲームした時より勝ち星はあったけど、それでも負けた時の方が多い。得手不得手がある、と言い訳させて貰おう。
「 音羽、今スマホとか持ってるか?」
帰りの支度をしていると、出し抜けにそう聞かれる。家にあると答えれば、十文字はペンとメモ用紙か何かを取り出して、そこに何かを書き始める。はい、と渡されたそれには電話番号と思しき数字と、某メッセージアプリのIDらしきアルファベットが書いてあった。
「俺の連絡先。前来た時に渡したかったんだけど、すぐ帰られたからさ」
連絡先、一人でいる時間が多過ぎて、しばらく聞き慣れていなかった言葉に目を白黒させる。これはあれか、次もこうする機会があるとかそういう事なのか、精神とかその他諸々もつかな、とか巡らせる思考を振り切ってありがとう、と返してからメモを折り畳んでスカートのポケットに入れる。そこから自分も、と鞄から適当な紙を取り出して、スマホの電話番号だけ書いて渡した。
「今日はありがとな」
お礼と同時に、絆創膏はきちんと貼り変えるよう釘を刺される。善処します、と苦笑いしながらエレベーターに乗り、下へ降りた。
行きこそ沈んでいた重い足取りは、何故だか少し軽くなっていた。
「少ししみるぞー」
そう言って、擦り傷や切り傷の部分に消毒液を染み込ませた脱脂綿をぽんぽんと軽く当てる。アルコール分が傷口にしみて、忘れかけていたのにピリッとした痛みが走った。思わず顔を顰めると、わり、と一言謝られる。消毒を終えたのかピンセットと脱脂綿の入った瓶を箱にしまうと、傷口に次々と大小様々な絆創膏を貼られた。
「本当に大丈夫なんだけど……」
「でも、万が一って事もあるだろ?そのままだとバイ菌も入るし……」
ぺたぺたと足に走る傷口を覆うように貼られるそれがいやに擽ったい。逃げたいには逃げたいけど、この状況で逃げる訳にも行かないし、何より件の足は十文字が触れている。つまりは為す術もなくこの場所に留まるしか無いわけで……。私に今できる事といえば、早く終われ早く終われと願う事くらいである。恥ずかしい事に変わりは無いんだけれど。
「……ほい、出来たぞ」
「あ、りがと……」
ようやく終わった。青痣になっていた所には大きめの湿布が貼られていて、転ばされて出来た擦り傷にはこれまた大きめの絆創膏。しばらく手当てもせず放置してたから傷も多かったろうし、何だか申し訳ない。そう思うと同時に、バレたのが足だけで良かったとも思った。これで腕の部分まで見えてたら心臓が持たない。色んな意味で。
「にしたって、どうやったらこんな怪我するんだ?」
救急道具を箱に仕舞いながらそう問われる。一度しか会ってない他人も同然な私を気にかけてくれるとは、相当なお人好しだろうか。ここで本当の事を話せば、気にかけてもらえるのだろうか。けれど、それだけの関係でいじめの事を話すのも腕の怪我を見せるのも気が引けて、言葉を飲み込む。その代わりに。
「ちょっと階段で転んだだけだよ」
せっかくの機会を溝に捨てる事にした。きっとそれが正解だろうから。そんな嘘を信じて笑う彼に、罪悪感で胸が痛む。
「そっか。それじゃ、ゲームの続きやろうぜ!」
うん、とぎこちなく頷いてコントローラを手にする。胸中に渦巻いていた罪悪感は、続きをしている内に消えていた。
コーラのおかわりやお菓子の継ぎ足しをしながらというもの数時間。窓の外はとうに日が沈みかけ、オレンジの光が辺りを照らしていた。簡単なシューティングゲームというものだからか前にゲームした時より勝ち星はあったけど、それでも負けた時の方が多い。得手不得手がある、と言い訳させて貰おう。
「 音羽、今スマホとか持ってるか?」
帰りの支度をしていると、出し抜けにそう聞かれる。家にあると答えれば、十文字はペンとメモ用紙か何かを取り出して、そこに何かを書き始める。はい、と渡されたそれには電話番号と思しき数字と、某メッセージアプリのIDらしきアルファベットが書いてあった。
「俺の連絡先。前来た時に渡したかったんだけど、すぐ帰られたからさ」
連絡先、一人でいる時間が多過ぎて、しばらく聞き慣れていなかった言葉に目を白黒させる。これはあれか、次もこうする機会があるとかそういう事なのか、精神とかその他諸々もつかな、とか巡らせる思考を振り切ってありがとう、と返してからメモを折り畳んでスカートのポケットに入れる。そこから自分も、と鞄から適当な紙を取り出して、スマホの電話番号だけ書いて渡した。
「今日はありがとな」
お礼と同時に、絆創膏はきちんと貼り変えるよう釘を刺される。善処します、と苦笑いしながらエレベーターに乗り、下へ降りた。
行きこそ沈んでいた重い足取りは、何故だか少し軽くなっていた。