泣かれたその後は
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ズッズッと鼻を啜る音が隣から聞こえ、流川は小さく溜息をつく。
今日は体育館のメンテナンスがあり、部活は休み。はると流川は二人で映画を観に来ていた。
何故この二人が一緒に映画を観ることになったのかというと、話は数日前に遡り、今日の練習が休みであることを聞いたマネージャーのはるが、つい先日公開された話題の映画を、みんなで観に行こうよ!と提案したからだった。しかし、話題作というだけあり、殆どの部員は既に観ていて、宮城からは、まだ観てないのなんて、アヤちゃんとはるちゃんと流川くらいじゃねーの、と言われる始末だった。そのため、先にアヤコを誘ったが興味ないと一刀両断され、流川に白羽の矢が刺さったのだった。
正直なところ、流川も大して映画に興味はなかったのだが、断って駄々を捏ねるはるをなだめるよりも、上映中に寝る方が楽だろうと安易に考え誘いを受けてしまったのだ。
***
放課後、上映時間まで時間があるから、どうせなら大きいスクリーンがあるところで観よう、と言い出したはるにより、学校からは少し離れた場所の映画館へ行くこととなった。連日、すごい数字を叩き出している映画だけに、どちらかと言うと行きたくない流川はネガティブな意見を発する。
「席、ないかも。」
「ふっふっふ。そういうこともあろうかと、ちゃんと予約しといたんだー!!」
褒めて褒めて〜とスマホの画面を見せつけてくる用意周到なはるとは反対に、流川は肩を落とす。このテンションに上映時間を抜かしても、行き帰りの時間を考えると軽く1時間以上は付き合わなければならない。今更だが、誘いを受けたことを後悔する流川は、映画のストーリーやキャラクターについてベラベラと話すはるを殆ど無視し、自転車を押しながらスタスタと駅へと向かった。
電車に乗ると、人の多さからか若干テンションの落ち着いたはるはふと疑問に思ってることを聞いてみた。
「ねー、流川は原作読んでるの?」
「読んでない。」
「あ、アニメ派か。続きだから楽しみでしょ?」
「アニメも見てない。」
「うん?ま、まさか、アンタ!!鬼滅知らないの!?」
「流石に名前だけは知ってる。」
これだけメディアが騒いでいれば耳にしない日はない。ましてや、コンビニ、薬局、スーパー、どこへ行っても何かしらのコラボ商品がある。しかし興味のない流川にとって、それは情報の一つであり、今回のこの映画もはるに誘われなかったら恐らく観なかっただろうと思う。
「うーん、まぁ、映画からでも楽しめるかな。」
まさか、アニメも原作も知らないとは思っていなかったはるは腕を組みながら考える。道理で部員の中でも映画を観ていない訳だと妙に納得する。
「えーと、取り敢えずストーリー予習しとく?」
「寝るから大丈夫。」
だから気にするなと言わんばかりに、ちょうど目的の駅へと着いた電車の扉の前へ移動する。慌ててはるも一緒に電車を降り、目的の映画館へと歩く。
「寝るのは勿体ないよ。」
「でも、興味ない。」
「えぇぇ。じゃあ何で一緒に来たの?」
「断ったらめんどくさそうだったから。」
はるの方を指差しそう言った流川は、眠そうに欠伸をした。誘った時にきちんと確認すれば良かった、とはるは楽しみにしていただけに、自分と流川との温度差を感じ、なんとも言えない気持ちになった。
もっと色々話せるかもと思っていたのに、とはるは悲しくなったが、席に着き予告が始まるとドキドキと胸が高鳴り、スクリーンに目が釘付けとなった。
***
「ううっ。」
泣かれてしまった。正確には泣かしたのは流川ではないのだが、映画が終わって駅に向かっているというのに泣き止まないはるを見る周りの人たちは、流川に痛い視線を向けている。居心地は最高に悪い。
面倒くさいと思いながら、ふと公園が目に留まり、フラフラと歩くはるの腕を引きベンチに座らせる。
「すっごく良かった…。想像以上に。」
ふぅ、と息を吐きながら、流川から買い与えられた温かいミルクティーを一口飲み、はるは鞄から新しいマスクを取り出し、付けているすっかり濡れたマスクと取り替えた。しかし、それでもまだ涙は止まらない。温かい飲み物が余計に身に染みる。流川ははぁっと溜息をつき、はるにぽつりと呟いた。
「死んだやつは土に還るだけ。べそべそしたって戻ってこねぇ。」
「ーーー!!!その言葉!」
「イノシシが言ってた。」
少し涙が止まり、ふへへと笑いながら流川を見る。
「なんだ。ちゃんと観てたんじゃん。」
「あんなにウルセーと寝れねー。」
それもそうだね、とあんなに興味ないと言っていたからこそ観てくれたことにふわっと嬉しくなって涙を拭う。
「ただのアニメだろ。」
「そうだけどっ………。」
でもやっぱり悲しいし、感動したし、また思い出して勝手に涙は溢れてくる。うぅーっとまた泣き出したはるの頭を流川はパシッと叩いた。
「いい加減泣きやめ。」
「そんなこと言われても〜、無理ィ。」
「どうやったら泣き止む?」
「えぇぇ、なんかびっくりしないと無理かも。」
流川はハンカチを取り出し、はるの目元にグリグリと当てる。
「泣いてるアンタ、ブサイク。」
「は、ハァッ!?失礼でしょ!ってか取ってよハンカチ。」
はるは視界を遮られ、押さえつけられたハンカチに手を当てると流川の手に触れてしまった。すると何かが近づいてくるような空気を感じた。
「ちょっと黙って。」
マスクが外され、冷たい空気が頬を刺す。その直後、はるの唇に温かいものが触れた。その温かいものが離れると、押さえつけられていたハンカチを流川はそっと離した。
「止まったか?」
至近距離に流川の顔があり、今されたことを理解したはるは頬を染め、驚きのあまり、涙は引っ込んでしまった。
「止まったけど、意味分かんない。」
そう言うと、また流川の顔が近付いてきてはるは咄嗟に目を瞑る。もう一度、流川の唇がはるの唇に触れ、すぐに離れた。
「ん?えっ?だから!?意味分かんないんだけど!」
「ビックリしないと泣き止まないって言った。」
「いや、言ったけど!言いましたけども!!今のって、好き同士がする行為でしょ!?」
一瞬間があって、流川は溜息混じりに言う。
「アンタのこと好きだけど?」
流川はやっと泣き止んだはるの手を引き立ち上がらせると、そのまま公園を出て駅へと向かう。いきなりの告白についていけてないはるは、少し歩いてようやく流川の言葉を理解した。
「え?えええぇぇぇぇ!?いつから!?」
「県予選始まる前から。」
それって結構前だよね?え?分からん。分かんないよ流川!!とはるは心の中で叫びながら流川の後を着いていく。
「ついでに言うと…」
「え!?何!?」
まだ何かあるのかとはるは期待するも、その期待とは別の言葉が返ってくる。
「映画。面白かった。」
今日一番に聞きたかった言葉だったが、はるはそれ以上に流川が自分を好きだったということの方が頭を占める。だけど、やっぱり、自分の好きなものを面白かったと言われ、嬉しくなったはるはまた饒舌になる。
「でしょ?私漫画全巻持ってるから貸してあげる。」
「おー。」
「あっ、でも最終巻はまだ出てないからそれはお楽しみだよ?」
「ほぅ。」
「Huluも登録してるからアニメ一緒に見よ?」
「…寝るかもしれん。」
ちっとも相手にしてくれない流川にはるは不敵な笑みを浮かべ、流川に伝える。
「ついでに言うと。」
駅に着いた二人は電車を待ちながら話をする。話をしてるのははるの方なのだが、マスクの下で笑みをこぼしながら、必死に話すはるの言葉に相槌を打つ流川。
「私、流川目当てで入部したんだよ?」
知ってた!?と満面の笑みで言うはるに驚かされたのは流川の方だった。お互いに表面に出さないように相手に好意を持っていた。興味もない映画になんていくら部員であろうが付き合わない。一人で観れる映画をわざわざ流川を誘わない。部員を誘ったのも流川と一緒に行く口実に過ぎなかった。
お互いにお互いを思いながら帰りの電車に揺られる。
「流川、私たち付き合うってことでいいんだよね?」
言葉足らずな流川だからこそ、はるは野暮なことを聞いてしまう。
「あたりめーだ。」
興味のなかったものが二人を近付けさせてくれた。話題のものっていうのも悪くないなと流川は思いながら、隣で嬉しそうにニコニコと座るはるを見ながら、今日観た映画はずっと忘れないだろうと思うのであった。
1000万人突破おめでとう。
鬼滅の刃に敬意を込めて。
今日は体育館のメンテナンスがあり、部活は休み。はると流川は二人で映画を観に来ていた。
何故この二人が一緒に映画を観ることになったのかというと、話は数日前に遡り、今日の練習が休みであることを聞いたマネージャーのはるが、つい先日公開された話題の映画を、みんなで観に行こうよ!と提案したからだった。しかし、話題作というだけあり、殆どの部員は既に観ていて、宮城からは、まだ観てないのなんて、アヤちゃんとはるちゃんと流川くらいじゃねーの、と言われる始末だった。そのため、先にアヤコを誘ったが興味ないと一刀両断され、流川に白羽の矢が刺さったのだった。
正直なところ、流川も大して映画に興味はなかったのだが、断って駄々を捏ねるはるをなだめるよりも、上映中に寝る方が楽だろうと安易に考え誘いを受けてしまったのだ。
***
放課後、上映時間まで時間があるから、どうせなら大きいスクリーンがあるところで観よう、と言い出したはるにより、学校からは少し離れた場所の映画館へ行くこととなった。連日、すごい数字を叩き出している映画だけに、どちらかと言うと行きたくない流川はネガティブな意見を発する。
「席、ないかも。」
「ふっふっふ。そういうこともあろうかと、ちゃんと予約しといたんだー!!」
褒めて褒めて〜とスマホの画面を見せつけてくる用意周到なはるとは反対に、流川は肩を落とす。このテンションに上映時間を抜かしても、行き帰りの時間を考えると軽く1時間以上は付き合わなければならない。今更だが、誘いを受けたことを後悔する流川は、映画のストーリーやキャラクターについてベラベラと話すはるを殆ど無視し、自転車を押しながらスタスタと駅へと向かった。
電車に乗ると、人の多さからか若干テンションの落ち着いたはるはふと疑問に思ってることを聞いてみた。
「ねー、流川は原作読んでるの?」
「読んでない。」
「あ、アニメ派か。続きだから楽しみでしょ?」
「アニメも見てない。」
「うん?ま、まさか、アンタ!!鬼滅知らないの!?」
「流石に名前だけは知ってる。」
これだけメディアが騒いでいれば耳にしない日はない。ましてや、コンビニ、薬局、スーパー、どこへ行っても何かしらのコラボ商品がある。しかし興味のない流川にとって、それは情報の一つであり、今回のこの映画もはるに誘われなかったら恐らく観なかっただろうと思う。
「うーん、まぁ、映画からでも楽しめるかな。」
まさか、アニメも原作も知らないとは思っていなかったはるは腕を組みながら考える。道理で部員の中でも映画を観ていない訳だと妙に納得する。
「えーと、取り敢えずストーリー予習しとく?」
「寝るから大丈夫。」
だから気にするなと言わんばかりに、ちょうど目的の駅へと着いた電車の扉の前へ移動する。慌ててはるも一緒に電車を降り、目的の映画館へと歩く。
「寝るのは勿体ないよ。」
「でも、興味ない。」
「えぇぇ。じゃあ何で一緒に来たの?」
「断ったらめんどくさそうだったから。」
はるの方を指差しそう言った流川は、眠そうに欠伸をした。誘った時にきちんと確認すれば良かった、とはるは楽しみにしていただけに、自分と流川との温度差を感じ、なんとも言えない気持ちになった。
もっと色々話せるかもと思っていたのに、とはるは悲しくなったが、席に着き予告が始まるとドキドキと胸が高鳴り、スクリーンに目が釘付けとなった。
***
「ううっ。」
泣かれてしまった。正確には泣かしたのは流川ではないのだが、映画が終わって駅に向かっているというのに泣き止まないはるを見る周りの人たちは、流川に痛い視線を向けている。居心地は最高に悪い。
面倒くさいと思いながら、ふと公園が目に留まり、フラフラと歩くはるの腕を引きベンチに座らせる。
「すっごく良かった…。想像以上に。」
ふぅ、と息を吐きながら、流川から買い与えられた温かいミルクティーを一口飲み、はるは鞄から新しいマスクを取り出し、付けているすっかり濡れたマスクと取り替えた。しかし、それでもまだ涙は止まらない。温かい飲み物が余計に身に染みる。流川ははぁっと溜息をつき、はるにぽつりと呟いた。
「死んだやつは土に還るだけ。べそべそしたって戻ってこねぇ。」
「ーーー!!!その言葉!」
「イノシシが言ってた。」
少し涙が止まり、ふへへと笑いながら流川を見る。
「なんだ。ちゃんと観てたんじゃん。」
「あんなにウルセーと寝れねー。」
それもそうだね、とあんなに興味ないと言っていたからこそ観てくれたことにふわっと嬉しくなって涙を拭う。
「ただのアニメだろ。」
「そうだけどっ………。」
でもやっぱり悲しいし、感動したし、また思い出して勝手に涙は溢れてくる。うぅーっとまた泣き出したはるの頭を流川はパシッと叩いた。
「いい加減泣きやめ。」
「そんなこと言われても〜、無理ィ。」
「どうやったら泣き止む?」
「えぇぇ、なんかびっくりしないと無理かも。」
流川はハンカチを取り出し、はるの目元にグリグリと当てる。
「泣いてるアンタ、ブサイク。」
「は、ハァッ!?失礼でしょ!ってか取ってよハンカチ。」
はるは視界を遮られ、押さえつけられたハンカチに手を当てると流川の手に触れてしまった。すると何かが近づいてくるような空気を感じた。
「ちょっと黙って。」
マスクが外され、冷たい空気が頬を刺す。その直後、はるの唇に温かいものが触れた。その温かいものが離れると、押さえつけられていたハンカチを流川はそっと離した。
「止まったか?」
至近距離に流川の顔があり、今されたことを理解したはるは頬を染め、驚きのあまり、涙は引っ込んでしまった。
「止まったけど、意味分かんない。」
そう言うと、また流川の顔が近付いてきてはるは咄嗟に目を瞑る。もう一度、流川の唇がはるの唇に触れ、すぐに離れた。
「ん?えっ?だから!?意味分かんないんだけど!」
「ビックリしないと泣き止まないって言った。」
「いや、言ったけど!言いましたけども!!今のって、好き同士がする行為でしょ!?」
一瞬間があって、流川は溜息混じりに言う。
「アンタのこと好きだけど?」
流川はやっと泣き止んだはるの手を引き立ち上がらせると、そのまま公園を出て駅へと向かう。いきなりの告白についていけてないはるは、少し歩いてようやく流川の言葉を理解した。
「え?えええぇぇぇぇ!?いつから!?」
「県予選始まる前から。」
それって結構前だよね?え?分からん。分かんないよ流川!!とはるは心の中で叫びながら流川の後を着いていく。
「ついでに言うと…」
「え!?何!?」
まだ何かあるのかとはるは期待するも、その期待とは別の言葉が返ってくる。
「映画。面白かった。」
今日一番に聞きたかった言葉だったが、はるはそれ以上に流川が自分を好きだったということの方が頭を占める。だけど、やっぱり、自分の好きなものを面白かったと言われ、嬉しくなったはるはまた饒舌になる。
「でしょ?私漫画全巻持ってるから貸してあげる。」
「おー。」
「あっ、でも最終巻はまだ出てないからそれはお楽しみだよ?」
「ほぅ。」
「Huluも登録してるからアニメ一緒に見よ?」
「…寝るかもしれん。」
ちっとも相手にしてくれない流川にはるは不敵な笑みを浮かべ、流川に伝える。
「ついでに言うと。」
駅に着いた二人は電車を待ちながら話をする。話をしてるのははるの方なのだが、マスクの下で笑みをこぼしながら、必死に話すはるの言葉に相槌を打つ流川。
「私、流川目当てで入部したんだよ?」
知ってた!?と満面の笑みで言うはるに驚かされたのは流川の方だった。お互いに表面に出さないように相手に好意を持っていた。興味もない映画になんていくら部員であろうが付き合わない。一人で観れる映画をわざわざ流川を誘わない。部員を誘ったのも流川と一緒に行く口実に過ぎなかった。
お互いにお互いを思いながら帰りの電車に揺られる。
「流川、私たち付き合うってことでいいんだよね?」
言葉足らずな流川だからこそ、はるは野暮なことを聞いてしまう。
「あたりめーだ。」
興味のなかったものが二人を近付けさせてくれた。話題のものっていうのも悪くないなと流川は思いながら、隣で嬉しそうにニコニコと座るはるを見ながら、今日観た映画はずっと忘れないだろうと思うのであった。
1000万人突破おめでとう。
鬼滅の刃に敬意を込めて。
1/1ページ