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ブラックチョコレート



夏休みのある土曜日、志穂ちゃんと少し遠出した。
電車に乗って、海水浴場まで。
早く免許取りたいけど、とりあえず来年の春休みにするつもり。それまでにバイトでお金貯めないとだ。
免許取ったら志穂ちゃんと車で出かけられる。めっちゃ楽しみ!


砂浜に着いてみたら、当たり前だけど日差しは強くて、ポップアップテントをレンタルして砂浜に置いた。
志穂ちゃんは入念に日焼け止めを塗る。

「トモも塗っといたほうがいいよ!白いんだから、真っ赤になってひりひりしちゃうじゃん」
「まあね。でもそんな気にしてないよ。うわっ」

志穂ちゃんは手のひらに日焼け止めをつけて、俺の顔に押し付けた。
こうなったらもう素直に塗って貰っちゃおう。
目を閉じた。

「…なんかこうやってされるの気持ちいいな」
「触られると、きもちいいよね」
「うんうん」

俺も志穂ちゃんの背中に塗った。左の肩甲骨の下に、少し大きめのほくろがある。
やっぱり、志穂ちゃんのこの背中が好きだなって思った。

「よし、塗れた!あ、うきわ膨らまそう」

めっちゃ頑張ってうきわを膨らませたら(足で踏むポンプを使った…)
志穂ちゃんの手を引いて砂浜を歩いた。
波打ち際で手を浸すと微妙にぬるい。
ざぶざぶ入っていく。

「待って、手前でぱちゃぱちゃやるので十分だよ私!」
「えー!せっかく来たんだし入ろうよ!」
「こわいよ、泳げないもん、知ってるでしょ?」
「何のためにうきわ膨らませたと思ってんの!ほら、乗っけてあげる」

体を抱えて、うきわの上に乗せた。
志穂ちゃんはうわー!って声を上げたけど、ちゃんと安定感があって、乗ってることに慣れたみたい。

「動くよー!」

志穂ちゃんの背中側から、うきわに手をかけてゆっくり押した。
足先でぱちゃぱちゃやるのが見えたから、少しふざけても平気かなって思って、うきわを揺らした。
志穂ちゃんは少しムッとして、俺の髪をぐしゃぐしゃって触った。



帰りの電車の中で、今度はどこに行く?って話をした。
お互いにいろんな場所とか、やりたいことを言っていく。

「あ、俺さあ、最近読んだ歴史の本で出てくる島行きたい」
「へー、どんなとこ?」
「無人島でさ、遺跡があんの」

志穂ちゃんは、遺跡とか無人島はあんまり琴線に触れなかったらしい。
免許取ったら、また誘ってみよう。

電車の揺れが気持ちよかったからか、泳ぎ疲れたからか、志穂ちゃんは俺の肩にもたれて眠ってしまった。


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