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1日1話

_天晴妙味、善良人



ひやり、鼻先が刺すように冷える。
ああ、またこう、鼻先耳先の冷える日々が続きそうな予感がする。
手で隠すように、顔を擦った。

「あ、いた。かわいいね、」

人間だ。

めちゃくちゃ近くまできたから、すぐに足を床につけ、すぐ逃げられる態勢をとる。

「ねこさん、ねこちゃん」

人間は、指先を顔の前に持ってくる。
…あらがえない。
めちゃくちゃいいにおいする。なにこれ
すりすりしちゃう。

「ふふ、かわいいなあ。かつおぶし、たべる?」

すりすりすり

「あげようか?どうしよっかな、あげよっかな」

ひと鳴きしとくべきと思った。

「いいにおいなんで、ください」
「いいよ、あげるね」

人間の手のひらに、鰹節がふんわりと乗せられる。
鰹節の前では跪くしかなく、手のひらの鰹節に突撃した。

すっごい嫌だけど、背中を撫でられる。

「きみは、ほんとにかわいいね、…んー、いっしょにくらしたいんだけど、ついてきてくれるかな?」

「え、これくれるならいいすよ」

ふふ、って、鳴き声が聴こえた。

その人間の手から全ての鰹節を食べた。 
手のひらを舐め回した。
その人間は、おれを抱きかかえて笑った。

信じていいのかどうなのか。

からすがおれを見下ろして笑う。

人間は、優しくおれを撫でたから、素直にもう一鳴きした。

人間もまた、ふふっと鳴いた。


***

猫ってたまに人間にみえます

2019,12,28
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