ブラックチョコレート
最高だーーー
疑似恋愛みたいな。ごめん夏目、
でも、そんな気分になってしまった。
夏目は彼女いるらしいけど、そりゃそうだなって思った。
だって夏目はやさしい。
かっこいいし。
彼女羨ましいなー。
朝起きたら、夏目は髪が爆発してた。
めっちゃ笑った。
トーストに目玉焼き乗っけたのをふたりで食べた。
コーヒーはブラック派らしいことを知った。
そういう些細なことを知るのも、嬉しいと思った。
恋をするのは、楽しい。
それが叶わないとしても。
「夏目、急がなくていいの?」
「今日はもう午後から行きます…」
「さぼんの?」
「泉さん何時からですか?」
「俺は元から今日は午後だけしか取ってない」
「じゃあ昼メシ一緒に食べましょ」
「え」
「…はっ!俺やばい、ちょっとすげえ調子乗ってる…!!すみません泉さん、ほんと、勝手に距離詰めちゃって、」
夏目は少し顔を赤くして、焦ったみたいに手をひらひらした。
「いいよ、嬉しいよ。大学始まるまでどっか行く?か、うちでだらだらしててもいいけど」
「い、いいんですか?嫌だったら言ってくださいねまじで…俺そういうとこちょっとおかしいっていうか…」
「なにがおかしいの?」
「距離感」
真顔で言い切った夏目が愛おしかった。
いいよ、距離なくなっちゃえば、
髪を触るそのきれいな指に、触れられたらいいのに、
でもそれは、俺は理性があるからしません。
相談した結果、そのまま部屋でだらだら映画観ることにした。
ベッドの上で、並んで壁にもたれて座って、リモコンで観たいの探して、あとは肩によりかかるだけ、
…理性がすごいから絶対しないけど。
内容とかあんまり入ってこない。
隣を見たくてもなんとなく見られなくてもどかしい。
我慢できなくて一瞬見たら、きれいな鼻筋が見えた。
写真に収めたくなるくらいにはかっこいい。
このまま時間、止まっちゃえばいいのに
でも、そんなわけなくて、ちゃんと映画は終わったし、外に出て軽くご飯食べたら、俺たちは別れた。会うのはまた明後日。
久しぶりにネットで、相手を探した。
そういうことを、してくれる相手を
ひっくり返されて揺さぶられているあいだ目を閉じると、夏目の横顔が浮かんだ。
「きもちいい、」
譫言みたいに呟いたら、もっと乱暴に揺れた。