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CHEEKY BROS!




「麻希!起きて!終わったで講義」
「えー…うそやん…寝てた」
「そうだな、爆睡だったなお前」

ハッ!!!

起き上がったら目の前に、先生がいた。

「いやいやいやいやちゃうちゃうちゃう」
「なにがだよ!単位落とすぞー」
「きゃー!やめて!助けてくださいよ先生ー」
「じゃあ起きとけよせめて!なあ?まのけい」

圭ちゃんは隣で笑ってる。

ゲーム理論っていう教養の授業を担当してる高野先生は、めちゃくちゃ気さくなジェントルメン。今年度、関東の大学からこっちに移ってきたらしい。
だからバリバリの標準語。
それがまた見た目と相まってシュッとしてみえるんよなー。
高野先生はなんか知らんけど俺と圭ちゃんの相手をしてくれる。
ほんで、圭ちゃんのことをフルネームで[まのけい]って呼ぶ。真野圭。

「まのけい、一生懸命麻希のこと起こそうとしてんのに、全然起きないんだもんなあ?」
「ほんまそうなんすよ…!高野先生ー、こいつの単位落としといて下さい」
「そうするわ。まのけいがそう言うなら」

高野先生はそう言って、圭ちゃんの頭を撫でた。

「親しっ!高野先生と圭ちゃん、親しすぎひん?」
「そう?そんなつもりないけどね。なに、麻希も撫でてやろうか?」
「そういうことやないねん。先生勘違いしすぎやろ」
「あはは、麻希、嫉妬してるんやろー。俺ばっかり高野先生に構われちゃって」
「いやいやいやいやなんでそうなるん!?ちゃうし、俺別に高野先生好きちゃうし」
「えーーー、ショックなんだけどー。まじで単位あげないよー、とか言って」

先生はそう言いながら立ち上がった。

「ちゃうから!!間違えた、嘘やし!先生のことは好きやけど、嫉妬とかとはちゃうやんか!!」
「分かってる分かってる!麻希からの愛は伝わってるから」
「えーーーー…それもなんかちゃうんやけどな…」
「じゃあ、理数科に戻るわ。ふたりも自分の庭に戻りなさいよ。何学部だっけ?」
「教育学部です」
「ふたりとも?」
「はい」

高野先生は笑って、そっか、って言った。

「まのけいも麻希も、いい先生になりそうだな」
「えー、気ぃ早すぎひん?」
「ふふ、いい先生は優しい顔してるけど、ふたりともそういう顔してる」

圭ちゃんはぽかーんって口を開けて先生を見てる。

「先生、なんか変やで」
「ちょっと変な日があってもいいだろ?」

先生は優しく笑いながら、圭ちゃんの丸い頭をぽんぽんした。

「じゃあまた来週」

先生の後ろ姿を見送ってから圭ちゃんを見たら、頬杖をつきながら先生が出てったドアの方を見てた。

「先生ってさあ、なんであんなシュッとしてんねやろなあ」
「さあ…かっこいいし、標準語やから余計ちゃう?」
「そうか…んー、なんか気になるねんよなー。でも理数科の教室とか、怖ぁて行かれへん」
「分かるわ…なんか敷居が高いよな」
「なんか普通に、ご飯とか行って喋ってみたいなあ。今度誘ってみよかな」
「え!その時は俺も一緒に行っていい?」
「え、別にええけど」

圭ちゃんの方を見たら、目が合った。
なんかほっとして、ちょっと笑いかけた。

「…!きっしょいで今の」

がーん…


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