CHEEKY BROS!
「みきー」
ドスって背中に寄っかかってくる。
「なんや」
「言い方冷た!なにしてんの?」
「スマホ見てるけど」
「それは見たら分かる。なあなあ、一緒にご飯食べようやー。屋上行くー?」
「いいよ」
背中から離れたから、お弁当が入ってるバッグを持って立ち上がった。
それから隣を見たら、にこにこにこーって笑顔のニコがいた。
…めっちゃダジャレになるから腹立つ。
隣のクラスの立花は、名前が「にこ」
虹が来る、って書いて、ニコ。立花虹来。
めちゃくちゃキラキラネーム。
でも、そのキラキラネームに負けんくらい、ニコはほんまに眩しいくらい、かわいい。
普通にそのへんの女子よりかわいい。
俺とニコは全然接点がない。
クラスも隣やし。
けど、なんか入学したときから俺はニコが目についたし(それは多分、まわりの人間みんなそうやと思う。それくらいニコはかわいい)、ニコは俺の方を見ていて、なんとなくお互い近くに行ったら、やっぱりなんとなく喋り出して、それからめっちゃ仲良くなった。
今日はニコが昼休み、勝手に教室に入ってきた。
ニコが来る日は、クラスの子がちょっとざわつく。
ニコは俺のシャツのひじらへんをぎゅっと握って、見上げて笑う。
(ニコは160ちょいくらいしかない。俺は175くらいまで伸びた。180はいきたい)
俺もニコを見た。
「行こ」
「うん!」
クラスの女子が何人かで、ニコの前に立って道を塞いだ。
「立花くん、教室で食べへんの?」
「わたしらも一緒に食べたい!あかん?」
「一緒に食べようや〜」
…ニコはこういうの、あかんと思う。
あ、スイッチ入った。
更にニコは笑顔になって、俺の腕にしがみつくみたいに、くっつく。
「ごめんなあ〜?僕、今日はみきとふたりだけで食べるって決めてんねん…せやから、そこのいてくれへん?通れへんし〜」
…俺、このときのニコがめっちゃ怖い。
女の子らは「そっかー、ほんならまた今度一緒に食べてな〜」って言って、普通に席に戻っていくけど、なんでそんな普通でいられるんやろ。
めちゃくちゃ怖いのに。
なんやかんや話しながら屋上まで行って、ふたりで並んで座って、くっついてお弁当を食べる。
ニコはうさぎさんのピックに刺さったミニトマトを食べた。
「お弁当、誰が作ってるん?」
「え?お母さんやで」
うさぎさんのピックを高1になっても違和感なく使えてるんやばい。
「みきのお弁当もいつも美味しそうやんなあ。よう朝から起きて作れるよなあ…」
俺は兄ちゃんとふたりで暮らしてる(兄ちゃんが家出る時について行った)から、自分で作る。
料理するの嫌いじゃないし、食堂とか売店並ぶんが嫌やから、適当に作って持参する方が楽。
「たまごやき、ちょうだい?」
「ええよ」
ありがとう、んー!おいしいー!ちょっとあまいねんなあー。あまくて、おいしいー
ニコのゆったりした声で、ちょっと眠くなる。
ぼんやりとニコの方を見ると、それはもうにこにこで、そのにこにこした唇が近づいて、くっつく。
ニコはそういう子や
俺はされるがままに、ニコにキスされて、嫌と思えへんし、かといって自分からするかっていうと、そうでもなくて、曖昧なまま、ただニコとくっつくだけ
「きもい?」
「なにが?」
「…へへへ」