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1日1話

_なみなみ入って、ゆめのなか



飛行機が墜落する夢を見た。

朝、目が覚めて、汗がびっしょりになっていた。
ひとり暮らし、2日目の朝だった。

いくらでも女の子連れ込めるやんけ!

そう言って、同期に冷やかされたことを思い出した。

俺、そんなつもりないって!
なんで?お前めっちゃモテんのに
知らんしそんなん、

本当に望むものなんか、手に入らんやん
本当に望むものは、いつも遠くにある。




夜、ふとんに潜り込んだときにだけ、想像の世界で俺は、本当に望むものと恋に落ちる。

きれいな半月を形作るくちびるや、水が滴ってきそうな涙袋、目尻の笑いじわを、俺は指でなぞる。
好きです、大好き、せやから一緒にもっと、話してみたいです、
そういうふうに、彼に必死で伝える。
彼は、なんて返事してくれてるかは分からなくて、ただ、腕が伸びてきて、俺のからだに触れる。

そんな想像に溺れながら、俺は眠りに落ちる。




飛行機が墜落する夢を見た。


「おはよう。初めてやなあ、隣の席なるの!俺、前から話してみたかってん。仲良くなりたいなあって、ずっと思ってた。けど、自分めっちゃモテるやん?いつも周りに人いっぱいで、喋りかけられへんかったんよ。あー、やっとふたりで話せる!」

彼の手が伸びてくる。

想像よりずっと白く、きれいな手を握った。
想像よりずっと美しいその顔を見つめた。

「俺も、ずっと夢見てたよ」
「へえ?どういうことー?」

彼は気持ちのいい声で笑った。

俺はまだ起きていなかったりして、と、すこし不安になった。

「変なの!」

彼は俺の顔に触って、また笑った。

夢じゃないんや、俺、起きてるんやなあって、そう思って、彼の目尻にそっと触れた。

彼は目を細めて、夢みたいにやわらかく笑った。



***

飛行機が墜落する夢、たまにみませんか?

2020,1,14

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