1日1話

_『三日月夜』



金色の細い月が、靄の中で光っていた。
指先でなぞったら、ちくっと刺さって赤い血がぷっくり、滲んでしまいそうだとKは思った。

そうやって空をぼんやり見上げるKを、Mは見ていた。それからしみじみと、やっぱりKのことが好きだな、とMは思った。

なにもない、ただの日だ。
夜、ふたりで散歩しているだけ。
1月だというのに、なんだか少しぬるい空気だった。

「手、繋いでもいいですか?」
「んー、」

Kが手を繋ごう、と言ってくれてMは心底嬉しかったのだけど、少し悩んだふりをした。
それはMなりのそういう表現で、そのことをKは知っている。だからKは嬉しかった。不安げな表情をしたいと思うのに、唇は喜びで変なふうに歪んだ。
Mはそれを見て赤くなって、Kの大きな手をひったくるように繋いだ。

「ふふ、」

Mは笑った。
Kもつられるように、まるで三日月みたいに笑った。





***

三人称小説の習作その2。

2020,1,29

25/25ページ