3番街通りに陳列（ちんれつ）している移動販売車や屋台では、色んな食べ物やデザート類の販売、ハロウィン特有のミニゲームなどが設けられていた。2人はそれぞれ好きな移動販売車の元へ並んだ後、グレージュは可愛いコウモリのビスケットがトッピングされてある黒胡麻風味のアイスが2個入ったカップを買いスカージの元へ行く。

「かっっっっら」

チリドッグの移動販売車のメニュー表もハロウィン仕様のチリドッグになっており、通常のチリドッグからバンズの色が紫、赤色、橙色や黒などカラフルに彩られ辛さの風味も最大で8辛までのがあった。スカージは8辛のハロウィンブラックスパイシードッグを買った直後、何の躊躇（ためら）いもなく口一杯頬張り、敢えなく辛さに悶えていた。

「マジで辛いな」

「そんなに辛いんですか？一口ください」

興味本位でグレージュが小さい口を大きく開け、スカージに食べさせるように促すとスカージは突然、グレージュの顎を掴み自分の顔を近付ける。

「///////！？」（す、スカージさん！？まさか公共の場で口移しをッ！？やだぁ～もうッ！）

グレージュは満更でも無さそうに目を瞑り受け入れ体制の口を開けたままのキス待ち顔をしていたが、柔らかいバンズの食感が想像していたよりも重量掛けて口の中に詰め込まれ後から辛さがグレージュの舌を刺激する。思わずグレージュは目を見開き酷く咳き込んだ。

「ゲホッゲホッ！かっらい…！！」

余りの辛さに耐え切れず、先程買ったカップアイスを即座に食べようとするもグレージュの手元から何故かカップアイスが消えていた。

「あ、あれ？アイスが無い？もしかして…！スカージさん！」

「HA!ったくお前は脇が甘（あめ）ぇな！このアイスよりも甘々だぜ？」

「スカージさんが思わせぶりだからでしょうッ！」

我が物顔でアイスを口にしているスカージに掴みかかるものの、そつなく躱（かわ）されてしまい、体勢を崩すグレージュ。彼女が跪（ひざまず）きそうな寸前の所で身を翻し受け止めるスカージ。

傍から見ると意中の人に抱き着くバカップルに見えてしまっている。