第一章
夢小説設定
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波乱の一日が終わり、おじいさまの運転で帰路につきました。
結局あのまま部活は解散になってしまいましたし、不安が募ります。
後方座席の夏未様をミラー越しに確認すると、流れる外の街並みに彼の影を探しているようでした。
教室の円堂さん、ゴールキーパーの円堂さん、キャプテンの円堂さん、
貴女の胸を焦がしてやまないのはどの円堂さんなのでしょう。
いえ、その全てが瞼に焼きついていつ何時でも貴女を悩ませているのでしょうね。
ただ、今日の彼は別のようでした。(私はまだ彼を深く知らないのですけれど。)
悪神のからから回る舌を止めてみせた時は、
肉食動物を必死の形相で追い返そうとする群長のようだと畏れさえも覚えましたけれど、
一度あの火球に倒れてからは眼前で光を背負う金毛の荒物を焼きつけるギロついた目が酷く恐ろしく揺れて、
彼の獣性を呼び覚ましていたかのようでした。
離れていた私でさえ彼の凄まじさに指一本動かせず、本能的な恐怖を抱いたのですから、
彼の正面で荒い息に触れ、差し出した手を乱暴に振り払われた夏未様の心中は計り知れません。
主人のメンタルケアだって私の使命です、とにかく今日は思いっきり甘やかしましょう。
屋敷に着くと約束していた世宇子中調査なんてなかったようにお部屋に一人で篭られてしまわれたので、
これはお食事作戦も厳しそうです。
それなら、と急ぎ足で雷門家自慢の大浴場に備え付けられたプライベートバスのボイラーを点火させました。
「お嬢様、お湯の支度が整いました。」
「…早いのね。」
バスカーテンの前までいつも通りお供し、お召し物に手をかけていきます。
制服はいつもご自分でお着替えになってしまうので、
襟元から裾まで乳白色の小さなボタンを解いていくのはかなりこたえました。
しかしですね、私だってプロのメイドですから、
露わになっていく肌から弾ける芳香になんて負けません。負けません!
「お嬢様、どうぞ中へ。」
生返事する夏未様をカーテンの内側へ招き入れました。
「!これ……」
「バブルバスをご用意いたしました。」
薄桃色の雲海を乗せたバスタブを脇に、胸の前で横文字が浮き彫りされた白い容器を掲げて見せると、
夏未様は微笑みを返してくださいました。
「良い選択ね、好みの香りよ。」
メイド冥利につきます!
微かな水音がするたびに小さな泡がその身を弾かせて、
白磁の浴槽の縁から黄金の猫足を伝って床に滑り落ちていくのがカーテンの隙間から確認できました。
いつもは鼻歌なんてご相伴に預かれることもあるのですが、
今日はそうとはいかないようで、浴室は静まり返ってしまいました。
「失礼いたします。」
頃合いをみて女神の花園に足を踏み入れます。
夏未様の薄桃色に濡れた肌は泡に覆われ朧月のようで、
バブルバスにしておいた自分の選択は間違いではありませんでした。
夏未様お気に入りの香油を手に取り、絹の御髪一筋一筋に塗り込んでいきます。
オイルを浸した櫛が赤く揺れた髪を掻き分けていく音だけが嫌に響くので言葉を探しました。
「香油のかおりはお気に召しましたか。」
「ええ、問題ないわ。」
「お湯加減は如何ですか。」
「ええ、問題ないわ。」
「怒涛の一日でしたね。」
「ええ、問題ないわ。」
「円堂さんのことを考えていらっしゃいますね。」
「ええ、問題ないわ……って何を言っているのよ!?」
泡が上下に激しく揺れ、夏未様が真っ赤な顔をして振り返った。ほら、そうでしょう?
「あのバカのことなんて考えてないわよ。
だいたい今日だって練習のはじめから上の空であのバカらしくなくって、
世宇子中の手先がきたときだって何にも知らずに褒めちゃって、
もっと警戒心ってものをもってほしいわ。
それになによ、練習はおにぎりだなんて言い出しちゃって、
当り前じゃない、なんたってこの私も作ったんだから。
それに…それに…。
振り払われた彼の手がひどく冷たくて、とても怖かったの。
彼の目に私なんて映ってもいないのが、ことさら悔しかったの。
彼の心に執着する私が嫌になったのよ。」
夏未様は驚きで開いていた瞳を伏せがちに水面に向け、
肩をつぼめるように首の先まで泡の中へ沈んで行ってしまわれました。
「お嬢様は彼の支えになっていますよ。」
「ただの傲慢よ。」
「わがままで良いではないですか、恋する乙女ですもの。」
「っ!奉!」
「間違っておりましたか?」
「違います!
誰があのサッカーのことしか考えてないバカのことなんて…す、好きに…好きに…好き…」
「お嬢様、お耳でお返事していただいていますよ。」
桃色が差していた耳たぶがさらに朱く染まっていきました。
「もう!奉ったら、いつからそんな私をからかうようになったの!?
いいわよ、私は円堂くんのことが好きよ!
サッカーに真剣で、みんなにまっすぐで、私に夢を見せてくれるからよ!
何かわるいことがあって!?」
泡の海がまた大きく波打ちました。
「そうよ、私が好きになったのは、サッカーのことしか考えていない彼なのよ。
それなのに何なの、今日のありさまは!サッカーを決闘の道具か何かだと思っているのかしら?
新しい必殺技だって一人で抱え込んで、何のために仲間や私たちがいると思っているの。
ああ、なんだか腹が立ってきたわね。」
夏未様の瞳に泡から乱反射した光が集まり、星が浮かびだします。
「奉!やるわよ、あの腑抜けの目を覚ますの!」
その言葉を合図に浴槽の栓を抜き、絹の御髪を丸く上げてヘアターバンを巻いてから、
夏未様の肢体に滑る泡を優しく奈落へ吸い込ませていきました。
ヴィーナスは生まれ変わった海を去り、柔らかな足を地につけられてから、
その光り輝く体が空気にだって見られないようにバスローブを颯爽と羽織って自室へと歩を進められました。
他の人間を想ってのことなのが憎くはありますが、
今の夏未様は最高に凛々しく、極上に美しいです!どこまでもお供いたします!
結局あのまま部活は解散になってしまいましたし、不安が募ります。
後方座席の夏未様をミラー越しに確認すると、流れる外の街並みに彼の影を探しているようでした。
教室の円堂さん、ゴールキーパーの円堂さん、キャプテンの円堂さん、
貴女の胸を焦がしてやまないのはどの円堂さんなのでしょう。
いえ、その全てが瞼に焼きついていつ何時でも貴女を悩ませているのでしょうね。
ただ、今日の彼は別のようでした。(私はまだ彼を深く知らないのですけれど。)
悪神のからから回る舌を止めてみせた時は、
肉食動物を必死の形相で追い返そうとする群長のようだと畏れさえも覚えましたけれど、
一度あの火球に倒れてからは眼前で光を背負う金毛の荒物を焼きつけるギロついた目が酷く恐ろしく揺れて、
彼の獣性を呼び覚ましていたかのようでした。
離れていた私でさえ彼の凄まじさに指一本動かせず、本能的な恐怖を抱いたのですから、
彼の正面で荒い息に触れ、差し出した手を乱暴に振り払われた夏未様の心中は計り知れません。
主人のメンタルケアだって私の使命です、とにかく今日は思いっきり甘やかしましょう。
屋敷に着くと約束していた世宇子中調査なんてなかったようにお部屋に一人で篭られてしまわれたので、
これはお食事作戦も厳しそうです。
それなら、と急ぎ足で雷門家自慢の大浴場に備え付けられたプライベートバスのボイラーを点火させました。
「お嬢様、お湯の支度が整いました。」
「…早いのね。」
バスカーテンの前までいつも通りお供し、お召し物に手をかけていきます。
制服はいつもご自分でお着替えになってしまうので、
襟元から裾まで乳白色の小さなボタンを解いていくのはかなりこたえました。
しかしですね、私だってプロのメイドですから、
露わになっていく肌から弾ける芳香になんて負けません。負けません!
「お嬢様、どうぞ中へ。」
生返事する夏未様をカーテンの内側へ招き入れました。
「!これ……」
「バブルバスをご用意いたしました。」
薄桃色の雲海を乗せたバスタブを脇に、胸の前で横文字が浮き彫りされた白い容器を掲げて見せると、
夏未様は微笑みを返してくださいました。
「良い選択ね、好みの香りよ。」
メイド冥利につきます!
微かな水音がするたびに小さな泡がその身を弾かせて、
白磁の浴槽の縁から黄金の猫足を伝って床に滑り落ちていくのがカーテンの隙間から確認できました。
いつもは鼻歌なんてご相伴に預かれることもあるのですが、
今日はそうとはいかないようで、浴室は静まり返ってしまいました。
「失礼いたします。」
頃合いをみて女神の花園に足を踏み入れます。
夏未様の薄桃色に濡れた肌は泡に覆われ朧月のようで、
バブルバスにしておいた自分の選択は間違いではありませんでした。
夏未様お気に入りの香油を手に取り、絹の御髪一筋一筋に塗り込んでいきます。
オイルを浸した櫛が赤く揺れた髪を掻き分けていく音だけが嫌に響くので言葉を探しました。
「香油のかおりはお気に召しましたか。」
「ええ、問題ないわ。」
「お湯加減は如何ですか。」
「ええ、問題ないわ。」
「怒涛の一日でしたね。」
「ええ、問題ないわ。」
「円堂さんのことを考えていらっしゃいますね。」
「ええ、問題ないわ……って何を言っているのよ!?」
泡が上下に激しく揺れ、夏未様が真っ赤な顔をして振り返った。ほら、そうでしょう?
「あのバカのことなんて考えてないわよ。
だいたい今日だって練習のはじめから上の空であのバカらしくなくって、
世宇子中の手先がきたときだって何にも知らずに褒めちゃって、
もっと警戒心ってものをもってほしいわ。
それになによ、練習はおにぎりだなんて言い出しちゃって、
当り前じゃない、なんたってこの私も作ったんだから。
それに…それに…。
振り払われた彼の手がひどく冷たくて、とても怖かったの。
彼の目に私なんて映ってもいないのが、ことさら悔しかったの。
彼の心に執着する私が嫌になったのよ。」
夏未様は驚きで開いていた瞳を伏せがちに水面に向け、
肩をつぼめるように首の先まで泡の中へ沈んで行ってしまわれました。
「お嬢様は彼の支えになっていますよ。」
「ただの傲慢よ。」
「わがままで良いではないですか、恋する乙女ですもの。」
「っ!奉!」
「間違っておりましたか?」
「違います!
誰があのサッカーのことしか考えてないバカのことなんて…す、好きに…好きに…好き…」
「お嬢様、お耳でお返事していただいていますよ。」
桃色が差していた耳たぶがさらに朱く染まっていきました。
「もう!奉ったら、いつからそんな私をからかうようになったの!?
いいわよ、私は円堂くんのことが好きよ!
サッカーに真剣で、みんなにまっすぐで、私に夢を見せてくれるからよ!
何かわるいことがあって!?」
泡の海がまた大きく波打ちました。
「そうよ、私が好きになったのは、サッカーのことしか考えていない彼なのよ。
それなのに何なの、今日のありさまは!サッカーを決闘の道具か何かだと思っているのかしら?
新しい必殺技だって一人で抱え込んで、何のために仲間や私たちがいると思っているの。
ああ、なんだか腹が立ってきたわね。」
夏未様の瞳に泡から乱反射した光が集まり、星が浮かびだします。
「奉!やるわよ、あの腑抜けの目を覚ますの!」
その言葉を合図に浴槽の栓を抜き、絹の御髪を丸く上げてヘアターバンを巻いてから、
夏未様の肢体に滑る泡を優しく奈落へ吸い込ませていきました。
ヴィーナスは生まれ変わった海を去り、柔らかな足を地につけられてから、
その光り輝く体が空気にだって見られないようにバスローブを颯爽と羽織って自室へと歩を進められました。
他の人間を想ってのことなのが憎くはありますが、
今の夏未様は最高に凛々しく、極上に美しいです!どこまでもお供いたします!