第一章
夢小説設定
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傾きかけた陽の光をカーテンで遮ってから、首元のリボンを外し、
ジャージに袖を通して髪を結い上げれば誰がどう見てもデキる運動部マネージャーへ変身です。
お屋敷で鍛えた早着替えですが、男子のそれには勝てなかったようで、
グラウンドにはすでにサッカー部の面々が揃っているようでした。
「奉ちゃん、早いのね。」
落ち着いた山吹色のジャージに身を包んだ木野さんと、
その後ろから額に眼鏡を据えたウェーブショートの快活そうな方がひょいと顔を出されました。
「はじめまして、わたし1年の音無です!
木野先輩から聞いたんですけど、先輩って雷門先輩のメイドさんなんですね。
懐かしいなあ、秋葉名戸中との試合の時は…」
「はいはい、音無さんそこまでね。ほら、ミーティングが始まるわよ。」
少し慌てた様子で夏未様が割って入ってこられました。
夏未様はジャージにはお着替えにならないようでしたので、おそろいとはいかず残念です。
「皆様、お初にお目にかかります場寅奉です。
お嬢様がこちらでマネージャーをなさっているとお聞きし、
雷門家よりやってまいりました。
お嬢様が皆様をお支えするのなら、当然私も倣うのが務めです。
あくまでお嬢様のマネージャーですが、どうぞ何なりとお申し付けください。」
深々と下げた頭を元に戻すと、
キャプテンの円堂さんから改めて握手の挨拶をいただき、
他の部員の方続くようにそれぞれも声をかけてくださいました。
ただ一人、口をぱくぱくさせながらこちらへ視線を光らせてくる眼鏡を除いてですが。
礼儀のなっていないお子様はどの集団にも必ずいるものですね。
それにしても夏未様が信頼を置くチームだと聞いていた割には
頭数が思っていたものの半数以下しかないようです。
サッカーは確か1チーム11人のはずですから、少数精鋭チームなのでしょうか。
彼らはウォーミングアップを済ませると、広くグラウンドを使って散り散りに練習を始め出したようです。
夏未様の分も手伝ってほしいとおっしゃる木野さんから雑務の手ほどきをしてもらおうというところで、
これまた怪しげな丸サングラスの中年男性が脂の香水を振りまきながらこちらへ歩み寄ってきました。
「すまん、遅くなった。」
「監督、エプロンもつけたままでどうしたんですか?」
「何、やっかいな客が来てな。それよりこの娘さんはどうした。」
先ほどよりは簡単に挨拶を済ませると、
でっぷりとした下腹が見事な監督は名乗りもせず蓄えた白髭を遊ばせました。
「ふむ、場寅の孫娘か。ポジションはどこだ?」
「奉ちゃんはマネージャーで入部してますよ。それに女子ですし。」
「公式大会には出れないが、腕を見る分にはいいだろう。どうだ、少し蹴ってみないか。」
「ええっ、サッカーはやったことがありません。」
「場寅も始めはそう言っていた。」
おじいさまが?サッカーは嗜む程度にはと言っていた気がしますが。
「とりあえずシュートから見てみるか。円堂を……っと今のあいつはダメだな、俺がゴールに入ろう。」
なんということでしょう、大の大人(それもかなり恰幅のいい!)を前に
足元の直径20cmほどしかない合皮の球を蹴ってみせる羽目になりました。
サングラスの下からもこちらを値踏みしている視線が届いています。
ともかく、このボールをあの枠の中に入れれば良いと頭ではわかっていますが、
なかなか体が言うことを聞いてくれません。
「また監督が無理言うから場寅先輩固まってしまってますよ。わたし止めてきましょうか?」
「いいえ、やらせなさい。これは奉が越えなければいけない壁よ。」
夏未様の前でこのまま恥を晒し続けるわけにはいきません。
お昼に見たモニタの中の選手を思い出しながら、右足に意識を集中させて、パンと軽く蹴り出しました。
砂の上をボールが駆け出したのでそれを左足で追って、また右足で蹴るのを何度か繰り返して、
勢いがついたところで渾身の力を足先に集めて振り切りました。
これで、ボールは綺麗な弧を描いてネットへと飛び込むはずと思っていたのですが、
実際のところは狙いを大きく逸れて青空へ吸い込まれていってしまいました。
「はは、こりゃ場寅より酷いな。」
き〜っ!失敗してしまったのは認めますが、おじいさまよりと比べられるのは堪えます!
何より夏未様にこんな情けない姿を見せてしまったなんて、自分が許せません。
「監督、うちの奉は揉まれれば伸びるタイプですのよ。」
「そうかい、ならああいった蹴りができるようになるかな。」
監督が目線を向けた先には、強面の染岡さんと窓際の君こと豪炎寺さん、
少し離れて凸凹の小さいほうの一ノ瀬さん、それにあの鬼道家のご子息様が見えました。
名門の帝国中を退学されたとは耳にしていましたが、
このような形でお目にかかれるとは思いもよりませんでした。
そんな呑気なことを考えていると、
駆け出した染岡さんの背後に龍が出現して右足からボールが発射されたかと思うと、
息吹の如く噴き出した炎を纏った豪炎寺さんの両足がそれをゴールへと加速させました。
その横では鬼道様が踊るように背後へ蹴り上げた球を、
高く舞い上がった一ノ瀬さんの頭が頂点ではじき返して、
鬼道様はそれを一瞥もなしに受けて勢いを増幅させるように蹴り込みました。
二つの剛速球が向かう先にはやや神妙な面持ちをした円堂さんが待ち構えていましたので、
そのまま受け止めるかと思いきや、
一閃、天より降り立った人影がボールを両手に収めていました。
あの絹のように濡れたブロンド、どこかで見たことがあるような気がします。
ジャージに袖を通して髪を結い上げれば誰がどう見てもデキる運動部マネージャーへ変身です。
お屋敷で鍛えた早着替えですが、男子のそれには勝てなかったようで、
グラウンドにはすでにサッカー部の面々が揃っているようでした。
「奉ちゃん、早いのね。」
落ち着いた山吹色のジャージに身を包んだ木野さんと、
その後ろから額に眼鏡を据えたウェーブショートの快活そうな方がひょいと顔を出されました。
「はじめまして、わたし1年の音無です!
木野先輩から聞いたんですけど、先輩って雷門先輩のメイドさんなんですね。
懐かしいなあ、秋葉名戸中との試合の時は…」
「はいはい、音無さんそこまでね。ほら、ミーティングが始まるわよ。」
少し慌てた様子で夏未様が割って入ってこられました。
夏未様はジャージにはお着替えにならないようでしたので、おそろいとはいかず残念です。
「皆様、お初にお目にかかります場寅奉です。
お嬢様がこちらでマネージャーをなさっているとお聞きし、
雷門家よりやってまいりました。
お嬢様が皆様をお支えするのなら、当然私も倣うのが務めです。
あくまでお嬢様のマネージャーですが、どうぞ何なりとお申し付けください。」
深々と下げた頭を元に戻すと、
キャプテンの円堂さんから改めて握手の挨拶をいただき、
他の部員の方続くようにそれぞれも声をかけてくださいました。
ただ一人、口をぱくぱくさせながらこちらへ視線を光らせてくる眼鏡を除いてですが。
礼儀のなっていないお子様はどの集団にも必ずいるものですね。
それにしても夏未様が信頼を置くチームだと聞いていた割には
頭数が思っていたものの半数以下しかないようです。
サッカーは確か1チーム11人のはずですから、少数精鋭チームなのでしょうか。
彼らはウォーミングアップを済ませると、広くグラウンドを使って散り散りに練習を始め出したようです。
夏未様の分も手伝ってほしいとおっしゃる木野さんから雑務の手ほどきをしてもらおうというところで、
これまた怪しげな丸サングラスの中年男性が脂の香水を振りまきながらこちらへ歩み寄ってきました。
「すまん、遅くなった。」
「監督、エプロンもつけたままでどうしたんですか?」
「何、やっかいな客が来てな。それよりこの娘さんはどうした。」
先ほどよりは簡単に挨拶を済ませると、
でっぷりとした下腹が見事な監督は名乗りもせず蓄えた白髭を遊ばせました。
「ふむ、場寅の孫娘か。ポジションはどこだ?」
「奉ちゃんはマネージャーで入部してますよ。それに女子ですし。」
「公式大会には出れないが、腕を見る分にはいいだろう。どうだ、少し蹴ってみないか。」
「ええっ、サッカーはやったことがありません。」
「場寅も始めはそう言っていた。」
おじいさまが?サッカーは嗜む程度にはと言っていた気がしますが。
「とりあえずシュートから見てみるか。円堂を……っと今のあいつはダメだな、俺がゴールに入ろう。」
なんということでしょう、大の大人(それもかなり恰幅のいい!)を前に
足元の直径20cmほどしかない合皮の球を蹴ってみせる羽目になりました。
サングラスの下からもこちらを値踏みしている視線が届いています。
ともかく、このボールをあの枠の中に入れれば良いと頭ではわかっていますが、
なかなか体が言うことを聞いてくれません。
「また監督が無理言うから場寅先輩固まってしまってますよ。わたし止めてきましょうか?」
「いいえ、やらせなさい。これは奉が越えなければいけない壁よ。」
夏未様の前でこのまま恥を晒し続けるわけにはいきません。
お昼に見たモニタの中の選手を思い出しながら、右足に意識を集中させて、パンと軽く蹴り出しました。
砂の上をボールが駆け出したのでそれを左足で追って、また右足で蹴るのを何度か繰り返して、
勢いがついたところで渾身の力を足先に集めて振り切りました。
これで、ボールは綺麗な弧を描いてネットへと飛び込むはずと思っていたのですが、
実際のところは狙いを大きく逸れて青空へ吸い込まれていってしまいました。
「はは、こりゃ場寅より酷いな。」
き〜っ!失敗してしまったのは認めますが、おじいさまよりと比べられるのは堪えます!
何より夏未様にこんな情けない姿を見せてしまったなんて、自分が許せません。
「監督、うちの奉は揉まれれば伸びるタイプですのよ。」
「そうかい、ならああいった蹴りができるようになるかな。」
監督が目線を向けた先には、強面の染岡さんと窓際の君こと豪炎寺さん、
少し離れて凸凹の小さいほうの一ノ瀬さん、それにあの鬼道家のご子息様が見えました。
名門の帝国中を退学されたとは耳にしていましたが、
このような形でお目にかかれるとは思いもよりませんでした。
そんな呑気なことを考えていると、
駆け出した染岡さんの背後に龍が出現して右足からボールが発射されたかと思うと、
息吹の如く噴き出した炎を纏った豪炎寺さんの両足がそれをゴールへと加速させました。
その横では鬼道様が踊るように背後へ蹴り上げた球を、
高く舞い上がった一ノ瀬さんの頭が頂点ではじき返して、
鬼道様はそれを一瞥もなしに受けて勢いを増幅させるように蹴り込みました。
二つの剛速球が向かう先にはやや神妙な面持ちをした円堂さんが待ち構えていましたので、
そのまま受け止めるかと思いきや、
一閃、天より降り立った人影がボールを両手に収めていました。
あの絹のように濡れたブロンド、どこかで見たことがあるような気がします。