第一章
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ついに、ついにやってきました。
私立雷門中学校!
お嬢様との淡い春の日々の一歩を踏み出せるのですね!
あのまだ雪が残る時期に不合格の三文字が届いた時は場寅一家、
いえ雷門家の方々も凍らせてしまったのはもう遠い記憶です。
サッカー部へのスポーツ推薦込みで編入ということらしいのですが、
私サッカーなんてやったことあったでしょうか。
とにかく、仕おじいさまがなんとかして旦那様にかけあってくれたのでしょう。
おじいさま、このご恩は夏未様へのご奉仕としてお返しいたします。
「場寅奉といいます。
今日からこの教室で皆さんと一緒に学ぶのが楽しみです。
どうぞよろしくお願いします。」
我ながら完璧な所作で初めの挨拶ができました。
普段は夏未様の影となることを良しとしている身ですが、
表に立てる最低限の礼節を身に着けているのです。
主人のいないところで恥をかかせるようなことがあってはいけませんからね。
おじいさまもそこまでは手が回らなかったみたいですし、
夏未様との学舎の時間は放課後のお楽しみとしておきましょう。
「ねえ、あなたでしょ夏未さんの言ってた人って」
ホームルームが終わって真っ先に声をかけてきたのは、
野に咲く一輪のように素朴で柔らかい空気を纏った可愛らしいお方でした。
夏未様の芯の通った佇まいとはまた種類が別の、
こちらを包み込むような眼差しに思わずほうとしてしまいます。
「わたし、木野秋ね。夏未さんと同じサッカー部のマネージャーをやってるの。
マネージャーの中なかだとわたしが一番古株だからなんでも聞いてね。」
なるほど、夏未様に炊事をさせるよう促したのはこの方なのでしょう。
ポピーの唇を揺らして紡がれる言葉には優しさと母のような説得力があります。
「ええ、こちらこそご指導のほどよろしくお願いします。」
「もう、そんなに畏まらなくってもいいのに。
大会が始まってから大忙しなの、
奉ちゃんにも遠慮なく働いてもらうからね!。」
「かしこまりまし…じゃなくって、はい。はい?……うん?
すみません、しばらくはこのままでもいいですか?」
「いいわよ、徐々にで。
それと、うちのクラスのサッカー部のみんなを紹介するね。」
少し焼けた肌がまぶしい手が描く弧の先を追いかけると、
これまた小麦色の端正な顔立ちが目に入りました。
「彼は豪炎寺修也くん。
元転校生だけど、雷門イレブンのエースストライカーなの。」
「………お前、サッカーやるのか。」
「?いえ、サッカー部には入りますけどマネージャーですよ。」
「ならいい。」
エース様は興味がなくなったといわんばかりに、
目線を窓の外へ戻してしまいました。
「ごめんね、豪炎寺くんボールには正直だから。
さ、気を取り直して!
あそこからこっちの様子をコソコソ見てきてるのが半田くんと松野くんね。」
「二人まとめてかよ!」
「そうそう、僕たち6番9番コンビを一緒にしないでほしいね。」
「ってお前がコンビって言っちゃうのかよ!」
「ふふっ、見ての通りなかよしなのよ。」
「よろしく、ニューフェース!
なんなら先輩って呼んでくれてもいいぜ。」
「じゃ、早速そう呼ばせてもらおうかな、半田セ・ン・パ・イ♡」
「うわ~!やめろやめろ!」
甲高い笑い声を上げて逃げる小さいほうを、
中くらいのほうが追いかけて行ってしまいました。
どうやらサッカー部にいる男子中学生を
お猿さんだと予想していたのは間違いではなかったようです。
「それと最後に、我らがサッカー部キャプテンの円堂くん!
なんだけど……」
木野さんが視線を向けた先は、
頭の明るい色のバンダナとは正反対の難しい表情をした方でした。
彼が眉をひそめている先はノートでしょうか。
お山の大将は一体どんな野蛮な顔をしているのだろう構えていましたが、
なにやら事情がある様子です。
「………」
「円堂くん!朝話してた新しいマネージャーの場寅奉ちゃん。」
「…ああ、わるいわるい!よろしくな!」
ゆっくりと差し出された手を握り返すと、
硬くなったいくつもの傷跡の感触に背中が冷たくなりました。
樹齢を重ねた大樹に触れた時のような、これが同い年の男子の手なのですか。
「……あの、円堂さん」
「お前ら~席付け~」
私の言葉を遮るように本鈴が鳴り、学生の本分に戻ることになりました。
授業中もずっとさっきのノートを見つめている円堂さん。
それを心配そうに見つめる木野さん。
どうやら私はとんでもないタイミングで、
雷門中学サッカー部にやってきてしまったようです。
私立雷門中学校!
お嬢様との淡い春の日々の一歩を踏み出せるのですね!
あのまだ雪が残る時期に不合格の三文字が届いた時は場寅一家、
いえ雷門家の方々も凍らせてしまったのはもう遠い記憶です。
サッカー部へのスポーツ推薦込みで編入ということらしいのですが、
私サッカーなんてやったことあったでしょうか。
とにかく、仕おじいさまがなんとかして旦那様にかけあってくれたのでしょう。
おじいさま、このご恩は夏未様へのご奉仕としてお返しいたします。
「場寅奉といいます。
今日からこの教室で皆さんと一緒に学ぶのが楽しみです。
どうぞよろしくお願いします。」
我ながら完璧な所作で初めの挨拶ができました。
普段は夏未様の影となることを良しとしている身ですが、
表に立てる最低限の礼節を身に着けているのです。
主人のいないところで恥をかかせるようなことがあってはいけませんからね。
おじいさまもそこまでは手が回らなかったみたいですし、
夏未様との学舎の時間は放課後のお楽しみとしておきましょう。
「ねえ、あなたでしょ夏未さんの言ってた人って」
ホームルームが終わって真っ先に声をかけてきたのは、
野に咲く一輪のように素朴で柔らかい空気を纏った可愛らしいお方でした。
夏未様の芯の通った佇まいとはまた種類が別の、
こちらを包み込むような眼差しに思わずほうとしてしまいます。
「わたし、木野秋ね。夏未さんと同じサッカー部のマネージャーをやってるの。
マネージャーの中なかだとわたしが一番古株だからなんでも聞いてね。」
なるほど、夏未様に炊事をさせるよう促したのはこの方なのでしょう。
ポピーの唇を揺らして紡がれる言葉には優しさと母のような説得力があります。
「ええ、こちらこそご指導のほどよろしくお願いします。」
「もう、そんなに畏まらなくってもいいのに。
大会が始まってから大忙しなの、
奉ちゃんにも遠慮なく働いてもらうからね!。」
「かしこまりまし…じゃなくって、はい。はい?……うん?
すみません、しばらくはこのままでもいいですか?」
「いいわよ、徐々にで。
それと、うちのクラスのサッカー部のみんなを紹介するね。」
少し焼けた肌がまぶしい手が描く弧の先を追いかけると、
これまた小麦色の端正な顔立ちが目に入りました。
「彼は豪炎寺修也くん。
元転校生だけど、雷門イレブンのエースストライカーなの。」
「………お前、サッカーやるのか。」
「?いえ、サッカー部には入りますけどマネージャーですよ。」
「ならいい。」
エース様は興味がなくなったといわんばかりに、
目線を窓の外へ戻してしまいました。
「ごめんね、豪炎寺くんボールには正直だから。
さ、気を取り直して!
あそこからこっちの様子をコソコソ見てきてるのが半田くんと松野くんね。」
「二人まとめてかよ!」
「そうそう、僕たち6番9番コンビを一緒にしないでほしいね。」
「ってお前がコンビって言っちゃうのかよ!」
「ふふっ、見ての通りなかよしなのよ。」
「よろしく、ニューフェース!
なんなら先輩って呼んでくれてもいいぜ。」
「じゃ、早速そう呼ばせてもらおうかな、半田セ・ン・パ・イ♡」
「うわ~!やめろやめろ!」
甲高い笑い声を上げて逃げる小さいほうを、
中くらいのほうが追いかけて行ってしまいました。
どうやらサッカー部にいる男子中学生を
お猿さんだと予想していたのは間違いではなかったようです。
「それと最後に、我らがサッカー部キャプテンの円堂くん!
なんだけど……」
木野さんが視線を向けた先は、
頭の明るい色のバンダナとは正反対の難しい表情をした方でした。
彼が眉をひそめている先はノートでしょうか。
お山の大将は一体どんな野蛮な顔をしているのだろう構えていましたが、
なにやら事情がある様子です。
「………」
「円堂くん!朝話してた新しいマネージャーの場寅奉ちゃん。」
「…ああ、わるいわるい!よろしくな!」
ゆっくりと差し出された手を握り返すと、
硬くなったいくつもの傷跡の感触に背中が冷たくなりました。
樹齢を重ねた大樹に触れた時のような、これが同い年の男子の手なのですか。
「……あの、円堂さん」
「お前ら~席付け~」
私の言葉を遮るように本鈴が鳴り、学生の本分に戻ることになりました。
授業中もずっとさっきのノートを見つめている円堂さん。
それを心配そうに見つめる木野さん。
どうやら私はとんでもないタイミングで、
雷門中学サッカー部にやってきてしまったようです。