第三章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『フットボールフロンティア全国大会決勝ッ!後半戦開始ィ!』
セカンドハーフのホイッスルとともに、
我らがエース様は彼の代名詞である炎をうつしたようなソックスの右足で、
モノクロの球をセンターサークルの中心から蹴り出しました。
合宿の空き時間に春奈さんに見せていただいた過去の試合映像からはとても考えられない光景です。
雷門のサッカーは臨機応変型のバランス・スタイルで、
FWの豪炎寺さんがディフェンスをカバーするためにゴールエリアまで下がってくることはあっても、
ハーフタイム後で雷門ボールからのスタートの場合は鬼道様をはじめMF陣がキックオフを行い、
炎のストライカーはその二つ名のとおり右サイドからゴールへ向かって速攻を狙うというのが
定石であったと記憶しておりましたのに、
それほど雷門イレブンは疲弊し、前線が下がってきているということなのでしょう。
鬼気迫る足さばきをみせる豪炎寺さんに対して、
世宇子のセンターバックがサークル前まで上がってきましたので、
直接足と足での唾競り合いが始まりました。
センターバックのとても中学生とは思えない恰幅から捻りだされるパワーとプレッシャーが
ベンチにまで伝わってきます。
そして、先の戦況分析が当たっていると言わんばかりに、
同じくFWに入ったはずの一ノ瀬さんとセンターハーフの鬼道さんとが攻防に加わり、
三人がかりで世宇子のDFの要とハーフウェイラインからわずか10mほどで相対しています。
「ここから巻き返せるか……」
「っ監督!」
スタジアムに入ってから今までずっと気を張っていた大人の口から滑り出た逃げ腰の言葉に、
夏未様が換言の声を上げられました。
監督という立場上、白線の外側から合戦の行く末を俯瞰しているためか
気勢の刃では太刀打ちできない実力という名の壁が見えてしまっているのでしょう。
確かに素人目にも生傷だらけの雷門と息も乱していない世宇子とでは技量の差があることは明白です。
それでも、試合終了の笛が鳴るまでどちらが勝利の女神を微笑ませるのかはわかりません。
監督の大きな手が震えているのを認められたのか、
夏未様は御身を下げられて巨体に阻まれている白黒球を見やりました。
「メェガクェイクゥ!」
両の口角をいやらしく上げて宙に浮いたセンターバックがその巨躯を地に叩きつけたかと思うと、
フィールド全体に突き上げるような音が響き、着地点の割れ目から芝が隆起して、
雷門前衛の3人は風の前の塵のように宙へと投げ出されてしまったではありませんか。
人間と同時に空に放られてフリーとなったボールは世宇子のセンターバックの足元に吸い寄せられ、
そのままハーフウェイラインを越えてしまいましたので、
雷門の守備MF陣がこれまた3人がかりでその速攻を止めようと駆け寄りました。
「ダッシュストームッ!」
瞬く間に世宇子から雷門側へ吹きこんだ強烈な風に乗ってセンターバックは雷門MFを吹き飛ばし、
そのままボールはあのブロンドの悪鬼へと渡って行ってしまいました。
ほとんど歩くように悠々とボールをペナルティエリアに進める偽神に対して、
こちらのDFは左サイドバックが足りない状態で決死の防衛戦を仕掛けます。
「キラースライド!」
「コイルターン!」
しかし、壁山さんの必殺技が出る前に月桂樹の章をつけた腕が天に掲げられました。
「ヘブンズ……タイム!」
途端フィールドの時が止まり、悪鬼はまるで何事も起こらなかったかのように歩を進め、
再び手を高く振り上げたかと思うと時空を埋めるようにして背後に吹き込んだ風が
DF陣を文字通り巻き上げて最後の防衛線はあっさりと崩されてしまいました。
「またあの必殺技だ!」
「クソッ世宇子お決まりのパターンってわけだな。」
「完全に流れを持っていかれちゃってますね……。」
前半戦もどうやらこの連携で何度も主導権を奪われていたようで、
彼らの力に直接触れて傷を負ったベンチの選手たちの士気が下がってきてしまい、
目も当てられません。
「みなさん!弱気でどうするんですか!」
試合に出ておらず、ベンチにもいなかった身分で失礼は承知の上でも、彼らの前で声を張り上げました。
「でもよお…」
「そうよ、どんな強敵にやられたって何度でも立ち上がるのがうちのサッカー部でしょ!」
「だから、最後まで目を逸らしちゃだめよ。」
秋さんが芯の通った声で続けました。
「私たちにはまだ、円堂くんがいるわ。
円堂くんがいれば、私たちは……。」
雷門の勝利の女神は胸の前で硬く握った左手の震えを右手で覆うようにして、
ゴールエリアを見つめる瞳に力を籠められました。
広いコートで世宇子イレブンに立ち向かっているのは円堂さん、ただ一人です。
相手側のストライカーとこちらのキーパーが相対している状況に
思わず前半戦最後の危機的状況が脳裏に浮かんでしまいます。
しかし、ブロンドは再び背から仰々しい羽を見せることはなく、
代わりに足を必要以上に後ろに振り上げて思い切りボールをキックしました。
きつめの下回転がかかった球は勢いそのままにキーパーの顔面に着弾し、
予想外の軌道に反応できなかった円堂さんの腰を地に着かせたようでした。
エネルギーを失ったボールは数回芝をバウンドして軌跡をたどり、
ブロンドは帰ってきた球の上面にスパイクをかけると
その造詣の整った顔を歪めて再び足を振り上げました。
今度はみぞおち、胸、脇腹の右に左、また顔と体に蹴り込まれるシュートのたびに
円堂さんは膝をつき、ダメージに体を震わせながら立ち上がっておられます。
「ひどい…」
「いっそゴッドノウズで一思いに……ってダメダメ!」
「彼にとってはもはや点を取るまでもない、ということでしょうか。」
「あの男の驕りね。流れを変えるなら、ここよ。」
夏未様が唇を噛み締めながらスコアボートの0の文字を見上げられました。
その視線を追った秋さん、春菜さんが声を揃えられました。
「まだ25分もありますよ!」
「最後まで諦めないのが!」
「雷門の必殺技よ。」
顔を見合わせたその時、一際大きな合皮が小さな体にぶつかる音が響き、
再びベンチは静まりかえってしまいます。
「君は僕をイライラさせる!」
白線を越えて届いてくる激昂とともに蹴り出された球に顔を強打された円堂さんは、
ついに芝へ倒れ伏してしまいました。
風が人工の緑をなでる音が嫌に響き、
フィールドに立っている「人間」がいなくなったことを告げてきます。
「円堂くん!」
「そんな、キャプテン!」
「……何よ、らしくないわ」
隣にいた私がやっと聞き取れるような声でそう呟かれた夏未様は、
ピッチとの境界線へと駆け出されました。
「立って!立ちなさい!キャプテンでしょ!
点差が何よ!神のアクアが何よ!
サッカーを、あなたの大好きなサッカーを取り戻すんでしょ!!
ここで立ち上がらないでどうするの!
世宇子のサッカーに雷門の、私たちのサッカーが負けるなんて許さないわ!
試合に勝てなかった場合、サッカー部は廃部!決定事項よ!
だから、絶対に勝ちなさい!!!」
なんということでしょう、お嬢様がこれほどまでに感情的顕わに喉を振り絞られるなんて。
夏未様は叫んだ勢いで揺らした瞳から雫を落とすまいと天を仰がれ、
同時に広がった肺で息を整えられてから、
上空の澄んだ空気をふんだんに使って再び声を張り上げられました。
「〜っ!雷門!雷門!雷門!」
スタジアムにマネージャーのコールが響きます。
「雷門!」
「雷門!雷門!」
続いてベンチが。
「雷門!雷門!雷門!」 「雷門!雷門!雷門!雷門!」
スタンドまでもが唱和に応え、
アウェーのスタジアムが一瞬にして雷門色に染まってゆきます。
コールの雨が代理石を侵食していくなか、
偽りの神たちには顔に動揺の色が浮かべたり、所在なく辺りを見回したり、
金色の人造神に縋るような目線を向けたりするものが現れてきました。
そう、フィールドは今、完全に雷門が支配しています。
そして、
「うがああああアッっ!!」
私たちの守護神が、立ち上がりました。
「俺たちのサッカーは!勝つッ!!」
割れんばかりの歓声に迎えられた我らがキャプテンの咆哮に応えるように、
雷門イレブンは次々と立ち上がり、世宇子の頭領に背後からにプレッシャーをかけています。
「そんなことがあるものか!!!」
全身の筋肉を禍々しく痙攣させた金色悪鬼は、そのブロンドを逆立つようにゆれさせ、
顕になった背からはあの三対の羽根が伸び出してきました。
悪鬼の体が雷門の空気圧に逆らうように肩を丸めながら宙へ上昇してゆきます。
対峙する我らの守護神は、その大きな背を偽神に向ける姿勢をとりながら、
小さな体一身に浴びている観衆の、仲間の、夏未様のコールを受けとめるようにして、
精神を集中させているようです。
「ゴッドォ………ノゥズゥッ!!!」
「マジン・ザッ・ハンドォ!!!!」
円堂さんの背後に彼の精神を表したかのような逞しさをした守護神そのものの権化が現れたかと思うと、
金色悪鬼から蹴り放たれた球は、稲穂のように暖かな黄金色をした大きな、とても大きな右手に受け止められ、ゴールネットに辿り着くことはありませんでした。
一瞬の静寂の後、モニターが円堂さんの右手におさまった白黒球を捉えると、
スタジアムが歓声に包まれました。
果たして、守護魔神は偽りの小神を撃ち落とし、その人造の羽根に芝を付けたのです。
セカンドハーフのホイッスルとともに、
我らがエース様は彼の代名詞である炎をうつしたようなソックスの右足で、
モノクロの球をセンターサークルの中心から蹴り出しました。
合宿の空き時間に春奈さんに見せていただいた過去の試合映像からはとても考えられない光景です。
雷門のサッカーは臨機応変型のバランス・スタイルで、
FWの豪炎寺さんがディフェンスをカバーするためにゴールエリアまで下がってくることはあっても、
ハーフタイム後で雷門ボールからのスタートの場合は鬼道様をはじめMF陣がキックオフを行い、
炎のストライカーはその二つ名のとおり右サイドからゴールへ向かって速攻を狙うというのが
定石であったと記憶しておりましたのに、
それほど雷門イレブンは疲弊し、前線が下がってきているということなのでしょう。
鬼気迫る足さばきをみせる豪炎寺さんに対して、
世宇子のセンターバックがサークル前まで上がってきましたので、
直接足と足での唾競り合いが始まりました。
センターバックのとても中学生とは思えない恰幅から捻りだされるパワーとプレッシャーが
ベンチにまで伝わってきます。
そして、先の戦況分析が当たっていると言わんばかりに、
同じくFWに入ったはずの一ノ瀬さんとセンターハーフの鬼道さんとが攻防に加わり、
三人がかりで世宇子のDFの要とハーフウェイラインからわずか10mほどで相対しています。
「ここから巻き返せるか……」
「っ監督!」
スタジアムに入ってから今までずっと気を張っていた大人の口から滑り出た逃げ腰の言葉に、
夏未様が換言の声を上げられました。
監督という立場上、白線の外側から合戦の行く末を俯瞰しているためか
気勢の刃では太刀打ちできない実力という名の壁が見えてしまっているのでしょう。
確かに素人目にも生傷だらけの雷門と息も乱していない世宇子とでは技量の差があることは明白です。
それでも、試合終了の笛が鳴るまでどちらが勝利の女神を微笑ませるのかはわかりません。
監督の大きな手が震えているのを認められたのか、
夏未様は御身を下げられて巨体に阻まれている白黒球を見やりました。
「メェガクェイクゥ!」
両の口角をいやらしく上げて宙に浮いたセンターバックがその巨躯を地に叩きつけたかと思うと、
フィールド全体に突き上げるような音が響き、着地点の割れ目から芝が隆起して、
雷門前衛の3人は風の前の塵のように宙へと投げ出されてしまったではありませんか。
人間と同時に空に放られてフリーとなったボールは世宇子のセンターバックの足元に吸い寄せられ、
そのままハーフウェイラインを越えてしまいましたので、
雷門の守備MF陣がこれまた3人がかりでその速攻を止めようと駆け寄りました。
「ダッシュストームッ!」
瞬く間に世宇子から雷門側へ吹きこんだ強烈な風に乗ってセンターバックは雷門MFを吹き飛ばし、
そのままボールはあのブロンドの悪鬼へと渡って行ってしまいました。
ほとんど歩くように悠々とボールをペナルティエリアに進める偽神に対して、
こちらのDFは左サイドバックが足りない状態で決死の防衛戦を仕掛けます。
「キラースライド!」
「コイルターン!」
しかし、壁山さんの必殺技が出る前に月桂樹の章をつけた腕が天に掲げられました。
「ヘブンズ……タイム!」
途端フィールドの時が止まり、悪鬼はまるで何事も起こらなかったかのように歩を進め、
再び手を高く振り上げたかと思うと時空を埋めるようにして背後に吹き込んだ風が
DF陣を文字通り巻き上げて最後の防衛線はあっさりと崩されてしまいました。
「またあの必殺技だ!」
「クソッ世宇子お決まりのパターンってわけだな。」
「完全に流れを持っていかれちゃってますね……。」
前半戦もどうやらこの連携で何度も主導権を奪われていたようで、
彼らの力に直接触れて傷を負ったベンチの選手たちの士気が下がってきてしまい、
目も当てられません。
「みなさん!弱気でどうするんですか!」
試合に出ておらず、ベンチにもいなかった身分で失礼は承知の上でも、彼らの前で声を張り上げました。
「でもよお…」
「そうよ、どんな強敵にやられたって何度でも立ち上がるのがうちのサッカー部でしょ!」
「だから、最後まで目を逸らしちゃだめよ。」
秋さんが芯の通った声で続けました。
「私たちにはまだ、円堂くんがいるわ。
円堂くんがいれば、私たちは……。」
雷門の勝利の女神は胸の前で硬く握った左手の震えを右手で覆うようにして、
ゴールエリアを見つめる瞳に力を籠められました。
広いコートで世宇子イレブンに立ち向かっているのは円堂さん、ただ一人です。
相手側のストライカーとこちらのキーパーが相対している状況に
思わず前半戦最後の危機的状況が脳裏に浮かんでしまいます。
しかし、ブロンドは再び背から仰々しい羽を見せることはなく、
代わりに足を必要以上に後ろに振り上げて思い切りボールをキックしました。
きつめの下回転がかかった球は勢いそのままにキーパーの顔面に着弾し、
予想外の軌道に反応できなかった円堂さんの腰を地に着かせたようでした。
エネルギーを失ったボールは数回芝をバウンドして軌跡をたどり、
ブロンドは帰ってきた球の上面にスパイクをかけると
その造詣の整った顔を歪めて再び足を振り上げました。
今度はみぞおち、胸、脇腹の右に左、また顔と体に蹴り込まれるシュートのたびに
円堂さんは膝をつき、ダメージに体を震わせながら立ち上がっておられます。
「ひどい…」
「いっそゴッドノウズで一思いに……ってダメダメ!」
「彼にとってはもはや点を取るまでもない、ということでしょうか。」
「あの男の驕りね。流れを変えるなら、ここよ。」
夏未様が唇を噛み締めながらスコアボートの0の文字を見上げられました。
その視線を追った秋さん、春菜さんが声を揃えられました。
「まだ25分もありますよ!」
「最後まで諦めないのが!」
「雷門の必殺技よ。」
顔を見合わせたその時、一際大きな合皮が小さな体にぶつかる音が響き、
再びベンチは静まりかえってしまいます。
「君は僕をイライラさせる!」
白線を越えて届いてくる激昂とともに蹴り出された球に顔を強打された円堂さんは、
ついに芝へ倒れ伏してしまいました。
風が人工の緑をなでる音が嫌に響き、
フィールドに立っている「人間」がいなくなったことを告げてきます。
「円堂くん!」
「そんな、キャプテン!」
「……何よ、らしくないわ」
隣にいた私がやっと聞き取れるような声でそう呟かれた夏未様は、
ピッチとの境界線へと駆け出されました。
「立って!立ちなさい!キャプテンでしょ!
点差が何よ!神のアクアが何よ!
サッカーを、あなたの大好きなサッカーを取り戻すんでしょ!!
ここで立ち上がらないでどうするの!
世宇子のサッカーに雷門の、私たちのサッカーが負けるなんて許さないわ!
試合に勝てなかった場合、サッカー部は廃部!決定事項よ!
だから、絶対に勝ちなさい!!!」
なんということでしょう、お嬢様がこれほどまでに感情的顕わに喉を振り絞られるなんて。
夏未様は叫んだ勢いで揺らした瞳から雫を落とすまいと天を仰がれ、
同時に広がった肺で息を整えられてから、
上空の澄んだ空気をふんだんに使って再び声を張り上げられました。
「〜っ!雷門!雷門!雷門!」
スタジアムにマネージャーのコールが響きます。
「雷門!」
「雷門!雷門!」
続いてベンチが。
「雷門!雷門!雷門!」 「雷門!雷門!雷門!雷門!」
スタンドまでもが唱和に応え、
アウェーのスタジアムが一瞬にして雷門色に染まってゆきます。
コールの雨が代理石を侵食していくなか、
偽りの神たちには顔に動揺の色が浮かべたり、所在なく辺りを見回したり、
金色の人造神に縋るような目線を向けたりするものが現れてきました。
そう、フィールドは今、完全に雷門が支配しています。
そして、
「うがああああアッっ!!」
私たちの守護神が、立ち上がりました。
「俺たちのサッカーは!勝つッ!!」
割れんばかりの歓声に迎えられた我らがキャプテンの咆哮に応えるように、
雷門イレブンは次々と立ち上がり、世宇子の頭領に背後からにプレッシャーをかけています。
「そんなことがあるものか!!!」
全身の筋肉を禍々しく痙攣させた金色悪鬼は、そのブロンドを逆立つようにゆれさせ、
顕になった背からはあの三対の羽根が伸び出してきました。
悪鬼の体が雷門の空気圧に逆らうように肩を丸めながら宙へ上昇してゆきます。
対峙する我らの守護神は、その大きな背を偽神に向ける姿勢をとりながら、
小さな体一身に浴びている観衆の、仲間の、夏未様のコールを受けとめるようにして、
精神を集中させているようです。
「ゴッドォ………ノゥズゥッ!!!」
「マジン・ザッ・ハンドォ!!!!」
円堂さんの背後に彼の精神を表したかのような逞しさをした守護神そのものの権化が現れたかと思うと、
金色悪鬼から蹴り放たれた球は、稲穂のように暖かな黄金色をした大きな、とても大きな右手に受け止められ、ゴールネットに辿り着くことはありませんでした。
一瞬の静寂の後、モニターが円堂さんの右手におさまった白黒球を捉えると、
スタジアムが歓声に包まれました。
果たして、守護魔神は偽りの小神を撃ち落とし、その人造の羽根に芝を付けたのです。